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ゲヒュール3  作者: スペクトラム


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17/20

細切れ肉

「バァ!」

ベギーデは男の横から、ひょいと視界に入り込んだ。

男と目を合わせると、目を細め、両手を後ろに回したまま体を近づける。

まるで、抱きしめてもらうのを待っているかのように。

男がベギーデを抱きしめると、彼女はギュッと目を閉じた。

そして、見上げていた顔を男の胸元に下ろし、今度は自分からも抱きしめ返す。

体重を前に預ける。

男が少しでも体を引けば、そのまま倒れ込んでしまいそうなほどに。

ベギーデはそのまま20秒ほど抱きしめられ、やがて再び男を見上げた。

「お兄ちゃんは優しいなぁ。私に優しくしてくれるなんて」

「えー、優しいよー」

男のそんな事無いという返答に対してベギーデはムッとした表情を見せる。

「知ってるでしょ? 私がゲヒュールだって!」

ベギーデは嬉しそうに続けた。

「私ね、優しさを感じ取れるんだよ!」

「だから、お兄ちゃんが優しいのも分かるんだ」

「ぽかぽかする。あったかい」

そこまで言うと、ベギーデは少しだけ目を細めた。

まるで、目の前の男に見惚れているかのような表情だった。

この人なら安心できる。

ずっとそばにいたい。

そう思っているかの様な顔だ

「アハハ、今日はお家に泊めてくれるんだったっけ!」

「もうちょっとだけ、ギュッとして」

ベギーデは男の匂いを嗅ぎ、ゆっくりと目を閉じた。

細切れの肉片になる者の、最後の夜だった。

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