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下らない理由
「大丈夫かな……あの人」
雨宮桜は、今日自分たちを襲ってきた男の身を案じていた。
「うーん、分かんない!」
春は笑顔で答える。
「分かんないかぁ……」
「トドメは刺さなかったけど、生きてるかどうかは分かんないや」
「そこは優しいんだ」
「足が付くような殺しはしたくないからね。一応、対策はしたけど……殺した方が良かったかなぁ」
「いや……」
桜は「殺さない方がいい」と言いかけて、口を閉ざした。
「ねぇ……隠れて、ひっそり暮らそうよ」
「え? やだ」
春は即答した。
「なんで?」
「気に食わないからやだ!」
「そんな下らない理由で……」
呆れたように呟く桜に、春は笑顔を崩さずに答える。
「彼……いや、人間と同じだよ。何故、僕達を狩ろうとするの? 僕達から逃げ隠れて暮らせばいいのに。餌として生きればいいのに。何故そうしないのかって? 理由なんて、僕と同じで下らないものだよ」
「そうかもしれないけど……」
桜は少し考え込んでから、ぽつりと呟いた。
「私は別に、隠れて生きてもいいんだけど……」
「僕がやなのー!」
春は子供のように声を上げた。




