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ゲヒュール3  作者: スペクトラム


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13/20

死の予感

「桜、服ちょっと買いすぎじゃない?」

春は、雨宮桜が抱えている買い物袋を見ながら言った。自宅のクローゼットに服が増えていく光景を想像して、少し呆れたような表情を浮かべる。

「良いのー。女の子だからオシャレしないと」

「今日はご飯を買いに来たって言ったじゃん」

「いいじゃん……」

そんな他愛のない会話を交わしている二人の前に、銃を手にした男が歩いてくる。

犬飼透だ。

春は男の姿を認めると、特に驚く様子もなく口を開いた。

「ふーん、まぁ……僕たちは武器を隠したところで敵意が分かるから、ある意味正しいね!」

「だろ?」

犬飼が短く答えた。

直後、銃声が二度響く。

春の肩に傷が走った。

春は、なぜ犬飼が遠距離から狙撃しなかったのか、その理由に納得する。

マーキングの範囲内――つまり、このショッピングモール内であれば、春は殺気を感じ取ることができる。

そのため、20メートル以上離れた相手の攻撃であっても、ある程度は回避できる。

だが、犬飼は二丁の銃を使い、春が回避した先にもう一発を撃ち込んできた。

早撃ちを成立させるには、ある程度近づく必要があるのだろう。

春はすぐさま踵を返し、逃げ出した。

犬飼は出口へ向かう春の背中に銃口を向ける。

しかし、春が逃げ込んだのはトイレだった。

犬飼は足を止める。

トイレの構造上、逃げ場は限られている。入口を押さえれば、春が外へ出ることは難しいはずだ。

それなのに、なぜトイレに逃げ込んだ?

犬飼は奇襲の可能性を考慮し、すぐには踏み込まなかった。

しばらく入口の様子を窺い、最大限の警戒を保ったまま、ゆっくりとトイレの中へ足を踏み入れる。

奥には春が立っていた。

犬飼は銃を構えたまま、慎重に距離を詰める。

何しろ目の前にいる相手は、指鉄砲で人を殺せるような存在なのだ。警戒するに越したことはない。

そのとき、銃声が響いた。

しかし、春は動かなかった。

外した?

そう考えた直後、犬飼の身体がふらつく。

「……毒ガス?」

犬飼は思考を巡らせる。

こいつ、毒ガスまで作れたのか?

だが、すぐに別の可能性が浮かび、犬飼は背後を振り返った。

個室トイレの下から、液体が垂れている。

清掃用の洗剤を複数切り裂き、床にばら撒いたのだ。

だが、そこで犬飼は一つの疑問を抱く。

――何故、目の前のこいつは平然としている?

いや、違う。

そもそも、こいつは人間じゃない。

人間よりも長く息を止められたとしても、不思議ではない。

そこまで考えたところで、犬飼透の意識は途切れた。

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