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ゲヒュール3  作者: スペクトラム


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11/20

涙

少女は息を切らしながら路地裏を走っていた。

まるで、化け物から逃げ惑うかのように。

走る途中、足元の石に躓いて転倒する。膝から血が流れ、少女の目には涙が浮かんでいた。

そして、かすれた声で呟く。

「パパ……」

その声を聞いた瞬間、少女を追っていた者の動きが止まった。

直後、銃声が路地裏に響く。

少女の額に穴が空き、その身体が地面に崩れ落ちた。

「……先輩、殺さなくてもよかったんじゃないですか?」

女性隊員が、銃を構えたままの男性隊員を振り返る。

しかし、男性隊員は少女の遺体から目を離さず、冷たく言い放った。

「捕獲すればよかったと?」

「だって……可哀想じゃないですか」

女性隊員の言葉に、男性隊員は呆れたようにため息をついた。

「お前さぁ、馬鹿だろ。なんで銃をさっき降ろした?」

「いや……だって」

「考えてみろ。あのゲヒュールは足を負傷していて、まともに動ける状態じゃなかった。だからこそ、同情を誘って油断した瞬間に殺そうとしたんだよ」

「でも、あの顔……」

「人間みたいだったろ? 同情したろ?」

男性隊員は、ようやく女性隊員へと視線を向けた。

「何故だと思う?」

「……感情があるから、ですか?」

「あー……上手いよな。だって、何回も見てるんだから」

男性隊員は少女の遺体へ視線を戻す。

「人間が泣き叫ぶ姿をな」

「嘘だって言うんですか?」

女性隊員は納得できない様子で問い返す。

男性隊員は少しだけ間を置いてから、淡々と答えた。

「去年、こいつに殺された奴はな。信じるんじゃなかったって、泣きながら死んだよ」

「…………。」

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