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ボクと隣人さん。  作者: あさくらまひろ


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12/15

。

 ワタシは、どうしてこのアパートで生活してるんだろう。

 そうはっきり疑問に思ったのは、十二月に入ってからだった。


 二階建ての、全部で四部屋あるアパート。

 なぜかこのアパートにはワタシしか住んでいない。

 大学に入学するため、最初は嫌な記憶のある地元を離れて心機一転と思って住み始めたアパート。

 家賃はそれほど安くない。

 両親には、家賃や生活費を出してもらっていて、かなり負担をかけていると思う。

 だからこそ、どうしてこのアパートに住んでいるのかわからない。


 頭にモヤがかかったように、思い出せない記憶がある。

 ワタシは今大学四年生。

 なぜだか、大学三年生の記憶がすっぽりと抜け落ちている。


 朝起きて、学校に行って、までは覚えている。

 その前後が、どうしても思い出せない。


 ワタシはどうしてしまったんだろう。


 学校から帰ってくるときに駅前のスーパーで買い物を済ませて、なぜだかいつも間違えて隣の部屋に入ろうとしてしまう。

 それに、ひとり分でいい食材もなぜか気が付くとふたり分も買ってしまっている。

 都会のキラキラしたファッションに憧れていたから、地元にいたころの地味で楽な服は買わないようにしていたのに、知らない間にジャージやツナギ、無地のシャツ、などが増えている。

 本当に買った覚えがない。


 それに、ひとり暮らししてから料理なんてほとんどしたことがなかったはずなのに、調理器具が増えている。

 高級な炊飯器や大きな鍋、包丁。

 なんと物置には、バーベキューセットまで仕舞われていた。

 こんなもの、どう考えてもワタシが買ったとは思えない。




 ワタシは、どうしてしまったんだろうか。



 それに十二月に入ってからすごく視線を感じるようになった。

 最近誰かにストーカーされている気がする。

 新しく始めたアルバイトが遅くなる時は、なるべく早足で帰るようにしている。

 けれど今日はとうとうストーカーが最接近してきた。


 逃げるワタシを追いかけまわし、とうとうアパートの近くまで帰ってきたのに撒けなかった。

 とても怖くて、恐怖で足がすくむ。

 そのせいで足がもつれて転んでしまった。


 振り返るとストーカーがもう目の前まで来ていて、チラリとポケットからナイフが見えた気がした。

 怖くてパニックになっていたから、もしかしたらナイフじゃなかったかもしれない。

 今となってはもう確認のしようもない。


 ストーカーからしてみたら、ターゲットが転んで無防備になっているんだから絶好のチャンスだったと思う。

 それなのに、なぜかストーカーは不気味そうに顔を歪ませた後、去って行ってしまった。


 何が起こったか、理解が追い付かなかった。


 周囲には誰もいない。


 だからこそわからなかった。


 このとき、ワタシはナニカを口走った気がするけど、モヤがかかって思い出せない。


 怖い。


 誰もいないアパートの自室に逃げ込み、怖くて布団をかぶる。

 化粧を落とすこともなく、夕飯さえ食べずに。



 次、襲われたら……


 もし、このアパートで襲われるようなことがあれば……



 こんなアパート、早く出てしまおう。






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