表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
友達の友達  作者: 長篠金泥
第6章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

61/63

61 勝率1%未満

「ああ、期待の新人ニューカマーがいたね」

「ぁうぐっ――」


 言いながら霜山は、転がされている玲次の襟首えりくびを掴む。

 ダクトテープでグルグル巻きの玲次は、抵抗のしようがない。

 うめき声しか出せずに、明かりの近くまで引きずられた。

 軽々と、みたいな感じはなく、ワリと大仕事な印象を受ける。

 態度のデカさで幻惑げんわくされるが、霜山は小ぢんまりとしたデブだ。

 身体能力には警戒すべき点はないな、と晃は再認識する。


「さーてさて、レイジ君。ここでひとつ、発表会を始めようか」

「ぼひゅ、べうっ! ――ぅあ、はっ、げぱっ――はっぴょ、お?」


 雑に運搬うんぱんされ首が絞まった玲次が、にごったせきをしつつ問う。

 目隠しのせいで、どっちを向けばいいのか迷っているようだ。

 見えもしないのに、無駄にキョロキョロと頭を動かしている。

 こんなシチュエーションでなければ、笑える珍妙ムーブだろう。

 しかしながら、晃は笑えないし他の二人も無反応だった。


「じゃあ、発表しちゃおうか。パーッとね」

「なにっ、を」


 霜山から三十度ほどズレた方に向かって、玲次が訊いた。

 問われた霜山は、オーバーアクションで玲次をビシッと指差す。

 まるで、自分が視界をふさいだのを忘れているかのように。

 その表情には、またいびつな薄笑いが復活している。


「レイジ君がどんな方法でお兄ちゃんをブッ殺したのか、皆にもキッチリと知ってもらおうよ、ね?」

「あ、兄貴、の……」

「うんうん、ケイタ君の話だよ。自分が助かりたいからって殺しちゃった、キミの大切なお兄ちゃんです」

「ふぁああぁあぅ……あぁあぁぁああぁ」


 小刻みに震えるレイジの唇から、声にならない何かが漏れる。

 数多あまたの感情が溶け合ったそれは、音量こそ小さいが悲鳴だった。

 正気を失いかけている幼馴染おさななじみの姿に、晃はたまらず目をらす。

 逸らした先で、歯を食いしばっている優希と目が合った。

 彼女もまた、晃と同様の心境に追い込まれているのだろう。


 佳織はまだ回復していないようで、うつろな目は焦点が合ってない。

 小声でブツブツと何かを言い、無意味に上体を揺らしたりしている。

 恋人だった慶太の死に対して、反応らしい反応もしなくなるとは。

 精神的に限界が近いどころか、既に破綻はたんしている可能性が高い。

 晃が佳織を眺めていると、霜山はネットリとした声で語り始める。


「ホラホラ、レイジ君。勿体もったいぶってないでさぁ、早く教えてよ。何を考えながら、どんな感じでケイタ君をなぶり殺したのか……ホントにね、ボクとしても何を考えてたんだか、そこんとこメッチャ知りたいから。自分の兄弟を殺しといて平然としてるとか、極上の畜生ちくしょうっていうか、重要文化財級のサイコ野郎じゃない。もう完璧に人としてアウトなんですけど? ねぇねぇ?」


 楽しげな霜山に応答せず、玲次は素早く左右にかぶりを振る。

 発言を拒絶しているのか、自分の現状を否定しているのか。

 どちらにしても、このまま霜山の問いをシカトさせるのはまずい。

 そう予感した晃は、玲次にリアクションさせるべく声を出す。


「なぁ! ちょっと待てよ、それは何か――いや、全部が全部っ、おかしいだろ! そもそも、そもそもが……玲次にやらせたのが、お前らだろっ!」

「そいつは言い掛かりがすぎるなぁ、アキラ君。ボクらは、彼に提案しただけだよ。このままだと、一人残らず皆殺しになる。でも、レイジ君がちょっとしたゲームでボクに勝てたら、全員が助かる。もし負けても、ケイタ君が犠牲になるだけで済むけど、どうする? ってね」

「やっぱり、お前が――」

「違うんだよなぁ……わかってない。ゲームがイヤなら、他にも方法はあった。説得してみるとか、暴力で切り抜けるとかね。だけどレイジ君は、一発逆転を狙って、無様に失敗して、おにいたまをブッ殺した。そうだろ? ん? どうなの?」


 どうせ選択肢など無かったのに、霜山はしたり顔で言い放つ。

 言われている玲次は、自由の効かない全身をクネらせていた。

 ココで出来ることは、何かないか――もう何もないのか。

 奇跡までは望まないから、わずかでも状況をマシに動かす何か。

 気を抜くと嘔吐おうとしそうな緊張と激痛に邪魔されながら、晃は思考能力をフル稼働させている。


「ゲーム、って、どんな」

「んー、シンプルなのだよ。サイコロを使う」


 霜山が自分らを甚振いたぶるのに飽きたら、この状況は破局する。

 そう確信している晃は、どうにか興味をつなぎ止めようと話しかけた。

 呼吸するだけで数ヶ所が痛むので、声を出すのも困難になりつつある。

 だが今は、自分の行動や発言で皆の運命が決まってしまう。

 なので晃は、無理の上に無理を重ねて質問を続けた。


「丁半、とか……そういう」

「もっとシンプルだよ。サイコロ振って、どっちの数が大きいかで勝負を決める。普通とちょっと違うのは、レイジ君が負けるとケイタ君にペナルティがあること。それと、こっちはサイコロ三つ使うけど、レイジ君は一つってハンデがあること」

「そんな、の――」


 勝てるワケがない。

 だからこそ、慶太が死ぬハメになったのだろうけど。

 絶句する晃に、霜山は楽しげに説明してくる。

 

「一回目のペナルティは『歯』だ。負けた目の数だけ、ケイタ君の歯をペンチで抜く。それで――ぷぷ、ぷはっ! なっ、何本だっけ?」

「ぅう……」

「ちゃんと答えないと、アキラ君のも同じ数いっちゃうよぉ?」

「じ、じゅう、よん」


 心の底から嬉しそうな霜山に、窒息ちっそく寸前の様子で玲次は応じる。

 十四本――永久歯って何本あるっけ、と思い出してみる晃。

 だが途中で、数えるまでもなく一大事だと切り替える。

 当然ながら麻酔もない状態で、それだけの歯を引き抜くとは。

 やられる方は当然のこと、やる方も頭がオカシくなりかねない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ