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友達の友達  作者: 長篠金泥
第6章

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57 膝に矢を受けてしまってな

 肩の痛みが強烈で、晃は冷汗だか脂汗あぶらあせだかがとまらない。

 手を動かせないのでぬぐえない汗が、目に入り放題で視界がかすむ。

 霜山の姿がボヤケるので、目を細めてどうにか居場所を捉えていた。

 拳銃をクルクルと手の中で回しながら、霜山が語り始める。

 

「しかし、アレだね……色々と予想外だよ」

「なっ、何が」

「アキラ君がこうしてココにいるのも、だけど……それよりあの二人の末路が。クロは仕方ないとして、あのリョウがアッサリくたばるとはね」


 ピントがボケてるし暗いしで、霜山の表情はボンヤリとしかうかがえない。

 だがその声音には、仲間の死をいたんでいる気配は感じられなかった。

 半笑いな調子から伝わってくるのは、呆れや失望に近い色合いの感情。

 あの二匹が死んだ結果、計画に狂いが生じたりしているのだろうか。

 計画が元から狂気の沙汰さただった、と予想されるのはさてき。


 汗を涙で中和しようと、晃はまばたきを繰り返す。

 しかし、汗は止まらないので作業にはかなりの徒労感が。

 あきらめて目を閉じて、回復を待ちながら霜山の心境を考える。

 今どんな感情でいるのか、これからどうしようというのか。

 想像してみるが、まるで思考がまとまらず正解に近づいた気がしない。

 そんなこんなで晃が黙っていると、霜山がハフッと大きく息を吐く。


「まぁ、いいか。それより、他の二人は」

「はぁ? 他って――」

「そういうのいいから……他の二人は」


 この場にいない二人とは、玲次とダイスケだろうか。

 正直に答えるって選択肢は、当然ながら晃の中にはない。

 途中ではぐれたってことにして、霜山を無駄に警戒させるのもアリだな。

 二人とも死んだ、と言い張って玲次をフリーにする手もある。

 もしくは「山を下りて通報しに行った」という嘘で、撹乱かくらんを試みるのも悪くなさそうだ。


 ポイントは、死んでいるダイスケをどう利用するか、だな。

 最も効果的であろう設定は何か、最大速度で考えを巡らせる。

 晃の脳が、今夜もう何度目かわからないフル稼働を開始していた。

 それを邪魔するように、霜山が平坦な早口で告げてくる。

「二人はどうしたのか、答えてくれるかな。三秒だけ待つから」


 冷笑の消えた口調から、酷く危険なニオイを察知する晃。

 目をらして霜山を見れば、銃口が明確に自分を狙っている。


「待て待て待て待てっ! ちょっとっ!」


 晃はとりあえず大声で話をさえぎり、状況を変えようと試みる。

 相手が一方的に物事を進める流れを、どうにか対話まで引き戻したい。

 しかし拳銃を構えている霜山は、無表情でジッと見据えてくるばかりだ。

 コイツも暴力には躊躇ちゅうちょがない――どうする、何と答えれば――


「三」

「どうって言われても」

「二」

「そう簡単になんて」

「一」

「説明のしようがな――」


 パンッ


 弁解の途中で、安物のロケット花火みたいなシケた音が鳴る。

 ほぼ同時に、目に映る景色の向きが変わったのに驚かされる晃。

 地面にぶつかる痛みや衝撃があったハズが、知覚できていない。


「おっ、えぁ――は?」


 やがて晃は、自分の体がアスファルトに横倒しなのを知る。

 左肩の痛みに加え、別の痛みもいくつか発生していた。

 転んでぶつけたのか、左膝に感覚がない――いや、熱い。

 違う、熱いんじゃなくて痛いんだ、これは。

 そう気付くや否や、神経が激痛を訴え始めた。


「がっ、かっ、はぁ!? そんっ――はぁあ!?」


 信じられないが、自分は膝を撃たれて、地面に転がっている。

 その状況は把握はあくできたが、だいぶ現実感が乏しくて受け入れられない。

 晃の抵抗を嘲笑あざわらうかのように、痛みが更に強まってはじける。


「ぉおっ――ぅあああっ! はあぅ、はぁう、ほぁんっ! あぁああああっ!? あああああああぁああぉっ! おうっ、おぅうっ、ひぃいいぃんっ!」


 自分の意志と関係なく、ジタバタと地面を転げ回る晃。

 その口からは、混乱気味なわめき声が吐き散らかされ続ける。

 撃たれた痛みそのものは、実際それほどでもなかった。

 普通なら気絶確実だが、今は満身創痍まんしんそういで痛覚が飽和ほうわ中。

 それより「銃で撃たれた」初体験が、晃をはなはだしく動揺させていた。


「あんまうるさいと、もう一発いくけど?」

「ふぅうっ! うくぅうううぅ――んぁうっ!」


 嫌悪感に満ちた霜山の宣告には、次も普通に撃つ意志が感じられた。

 なので晃は、シャツのすそまくり上げて噛み締め、意志と関係なく漏れ出てくる悲鳴を強引に抑える。

 銃を向けられた時から、撃たれることも当然ながら想像していた。

 なのに実際に銃弾を受ければ、こんなにも動揺させられる。


「ずぐっぷーっ、んぶーふっひっ、ぐっぶぅううっ」


 隙あらば飛びかける意識を、懸命に手繰たぐり寄せる晃。

 どうにか肺と心臓を落ち着けようと、シャツ越しに深呼吸を繰り返す。

 血涎ちよだれが汗がブレンドされた、生臭く塩辛い味が舌を染めた。

 何度も何度も繰り返すと、心身の浮遊感は少しずつ落ち着いていく。


 意識が定まるのに伴って、膝の銃創じゅうそうが爆裂な自己主張を再開。

 苦い唾が止まらなくなり、ビダビダになったシャツの裾を吐き出す。

 その直後、込み上げてきた胃液が噴出し、胸元に生温かい悪臭を広げた。

 激しくせきをする晃に、霜山は穏やかな表情を向けながら言い放つ。


「人と話してる最中に寝ゲロはよくないなぁ、アキラ君」

「ぅぐ、ぅおっ――ほぁ」


 晃は慌てて上体を起こし、左膝の傷を抱える姿勢で地面に座り込む。

 左の膝と肩に負荷がかかったせいで、鋭く重い痛みが走って声が漏れる。

 膝の状態を確認してみると、思ったよりも派手な出血はない。

 血で湿った細身のジーンズが肌に張り付き、止血帯代わりになっている。


「さて、瀉血しゃけつも終わったし、改めて訊こうか」

「うぅ……」

「他の二人は、どうしたの」

だいぶ終盤なんでペースアップして……いけるといいですね(他人事)

無反応が続いているので、「面白い」「イヤな展開すぎる(いい意味で)」「趣味が悪い(いい意味で)」などと感じたら、評価やブックマークをよろしくお願いします……

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