地上と地底 ⑦
砂煙が覆う中、今も二人は身動き出来ないほど疲労して動けなかった。それは他の二人も同じで、地面に突っ伏している他にない。今、もしあの林松のような姿をした相手が突進して来たら・・・。そう思いながらリンはもう負けを意識していた。しかし、イシはまだ落ち着いて次の一手を模索していた。そこへ、あの林松のような姿をしたものが何事もなかったかのように、ふと上空から降りてきた。その姿はほぼ無傷だったのでさらに落胆した。それをあざ笑うかのようにそれが言った。
「なるほど、この程度か。残念だが、そろそろ時間だ」
その相手は静かに両目を閉じて何かを口づさんだ。次の瞬間、リンたちが生み出したものよりさらに大きなエネルギー弾がまばらに上空へと現れた。そのあまりの明るさからリンもたまらず見上げると、ちらりと見ただけでも十個以上があるのがわかった。全く歯が立たないとはこういうことなのか。
「さて、わざわざ来たのにごくろうさんだった。大地の守りさんとやらによろしく言っといてくれや。はっはっは」
その間、リンとイシは今も心の中で変わらず会話していた。
「いよいよだ。あいつ、本気でやってくるよ」
黙るしかないリンに、イシはさらに続けた。
「僕、三分あれば回復するんだ。そうだ、おじちゃんと葉流くんは大丈夫かな。おーい、おーい」
イシは何度もそう呼びかけた。しかし、二人はピクリともせずに地面へ倒れたままだった。数秒後、呼びかけが聞こえたのか、葉流の右耳がピクリとかすかに動いた。それを見逃さなかったイシは、すぐさまこう言った。
「よしっ、ハルくんは大丈夫かも。おじちゃんはどうかなあ。おーい、香純おじちゃん。これからお酒を飲むんでしょ」
すると、香純も同じように少しだけ耳を動かした。
「ほらあっ、みんな生きてるよ。三分。いや、二分半あれば後は僕がなんとかする。だからリンちゃん、手伝って」
リンはそう言われても、もはやその術がない。
「でも、どうして三分なの。わからないんだけど」
「それはねえ・・・、さっきハルくんも聞いてきたけど。でも、今はそれどこじゃないから後でね。じゃ、お願い」
「おーい、そんなこと言われたってさ。もう、体を全く動かせないよ。こんなんでどうしろって言うの」
すると、イシはこう答えた。
「えっ、リンちゃんはまだまだ出来ることがあるはずだよ。ほら、あの裏山でさあ・・・」
そう言われ、リンはすぐさま幼い頃を思い出していた。
「そうだった。私、寂しくなったら必ず動物たちを呼んでたっけ。やあい、すっかリ忘れてたわあ」
「じゃ、今すぐ試してみて。もう時間ないから・・・」
「わかった、やってみるね」
地面を見つめたまま、リンは両目を瞑り心で呼びかけた。
「おーい、おーい」
何度か心の中で呼びかけたが、当然ながら返答はなかった。その頃、林松の姿をした相手が両手を上にかざし始めた。周囲のエネルギー弾はさらに輝きを増してきた。
「おーい、誰かあー」
リンはそうして何度も何度も呼び続けた。無駄かもしれないと思いながら、体は動かせず声も出ない。それでもイシは出来ることがあると心の中でそう言う。果たして森の仲間たちはどうしているだろうか。幼い頃はいつも自宅の裏庭で遊んでいた。たいてい真純と一緒だったが一人で行くときも時々あった。あのキノコを食べたことを思い出しながら何度も何度も呼んだ。
すでに一分が過ぎ、相手の手元にはエネルギー弾が集まっている。すでに視界はぼやけており、先程まで見えた仲間の姿は今はもう見られない。視界がぼやけてきている中でリンは何度も呼び続けた。
「おーい、もう時間がないの。これが最後・・・ね」
そう念じてリンは両目を閉じた。そして自分が知るすべての術を最初から心の中で唱え始めた。
「warutusanerugann・・・」
・・・がさっ
「えっ」
もう少しで術を唱え終えようとしていたその時、確かに耳元で聞こえた。
「誰、聞こえたよ」
すると、森の中から鳥たちが上空へ一斉に羽ばたいた。太陽の照る光を遮るように、鳥たちはそのエネルギー弾へ一直線に進んでいった。




