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月と海のリザレクション〜海神ポセイドンの幼女転生〜  作者: 幸田遥
第2章 大西洋航海編

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神々vs.空母


 空は徐々に暗くなってきた。


 アムルが全力で雷雲を準備しているのだ。



「全員死ぬよりはましだがなぁ……、一家揃って展望台に戦いにくる羽目になるとはなぁ。しかも相手は、空母と戦闘機。ははは……。」

 博士は、遠くの方に小さく見える戦闘機に目をやった。


 3機の戦闘機が研究船パーズに近づいて来ている。



「やるしかないよ。パパ。でも、こっちには神が2人もいるんだよ。大丈夫だって!」

 シンシアは、右手に持ったトライデントをギュッと握り締めた。




「アムル! あいつらがパーズに近づく前に、なんとかできるか? 私の攻撃は、まだ届かないのよね」


(頑張ってみるよ、兄者! でも、今の俺は、そんなに大きい雷は、連発できないよ。よし……。えいっ!)



 バリッ!


  ビリリ




 ドーン



 1機の戦闘機が、稲妻に撃ち抜かれた。そして、爆発した。




「やったぞ!」

 それを見て、博士が大きな声で叫んだ。


「すごい!」

 爆発を見たレイアも、思わず叫ぶ。


 レイアの腕の中では、アムルは汗をかき、苦しそうにしている。

 アムルはまだ赤ん坊である。稲妻を1回打っただけで大きく消耗するのだ。



「Oh, are you OK, Amurru? (あっ! アムル、大丈夫?)」

 レイアは、ハンドタオルで、アムルの汗を拭う。



「まだ、2機もいるよ、シンシア!」

 博士が叫ぶ。


「わかっているよ、パパ。えい!」


 シンシアは海上に大きな海水の柱を出現させた。


 高さ30メートルほどの巨大な柱が、研究船パーズを取り囲むように、10本出現した。



「すごい。トライデントを使うと、ここまでできるんだ。すごいね、シンシア」

 博士は、周りを見渡し、驚きの声を上げる。



「パパ、今は、ダメ。集中させて!」

 シンシアに近付こうとした博士を、シンシアが止めた。


 博士は、シンシアの頭を撫でようとしたのだ。




 2機の戦闘機は、研究船パーズめがけて直進してくる。


「それ!」

 シンシアは、トライデントを振りかぶる。



 バシュー


 1本の海水の柱が、1機の戦闘機に向かって、伸びてゆく。


 戦闘機は、くるりと回転し、水の柱を避けた。



「くぅ、避けられた?」

 シンシアは、目を丸くする。


 戦闘機は、柱の横を添いながら、パーズに向かってくる。



 ババババ


 飛行機から機関銃が打たれる。



「そうはさせないよ」



 バシャバシャ


 バシャバシャ



 機関銃の弾がパーズに届く前に、海水の壁が、パーズを守る。



 戦闘機は、海水の柱から離れ、パーズのすぐ横を旋回した。



「ありゃ〜、海に近づいちゃあ、ダメだよ!」

 シンシアは、口元に、ニヤリと笑みを浮かべた。


 そして、左手を大きく握った。




 バシャーン



 海中から現れた大きな波が、戦闘機を一瞬にして飲み込んだ。



「おぉぉっ! すごい。残るは、あと1機だ!」


 博士は、興奮を抑えきれない。


 シンシアと博士は、すぐに空の上へと視線を戻す。




 残り1機の戦闘機は、パーズから少し距離を取り、上空を旋回していた。



「あ〜ぁ、離れたら、攻撃できない……と、思っているよね。ね、アムル?」

 シンシアは、レイアに抱かれたアムルに、チラリと視線を送る。



(もぅ、兄者も、弟使いが荒いなぁ……。てい!)



 ピカッ


 空が一瞬光った。



 バリッ!


 ドーン




 その瞬間には、戦闘機が煙を上げていた。



「あぁ……。」

「Oh, my gosh. (あぁ……。)」


 一瞬の出来事に、博士とレイアの2人は、ポカンと口を開けた。

 視線の先には、遠くの空をゆっくりと墜落していく戦闘機が見える。



「さて、戦闘機は、終わり。さて、本番はこれからよね」


 シンシアはトライデントを構え直した。





 一方、研究船パーズの操舵室では。



「すごいなぁ、雷雲が集まってきているなぁ……。あっ……。稲妻が、戦闘機を撃ち抜いたようにも見えるが、偶然なのか?」

 沖田船長は、双眼鏡で墜落していく戦闘機を眺めていた。


 そして、潜水艦が稲妻に撃ち抜かれた時のことを思い出していた。目の前にひろがる光景も、偶然には思えない。


 そして、研究船パーズの周りを囲んでいる海水の柱も、偶然の産物ではないであろうことは、理解できる。



「あの、沖田船長! 戦闘機が3機ともいなくなりました。おそらく、雷に撃ち落とされたんだと……。」

 佐伯航海士が、レーダーを見ると、先ほどまで3機飛んでいた戦闘機の信号はなかった。



「そうだな。私も肉眼で確認したよ。雷に撃ち落とされた……。やっぱり、誰かが、我々の船を守るために、戦ってくれているのだ。私たちにできることは、その誰かを応援することだけだ」


「はい。そうですね」

 佐伯航海士が頷く。



「これが、船長の言っている、『女神』の力ですか? ちなみに、『神』かもしれませんよ?」

 操舵手の山本は、後ろを振り返った。



「はははっ。どうだろうな? 私は、『女神』だと、信じているんだがな」

 沖田船長は声をあげて、笑った。




「よし、パーズを前進させるぞ」

 沖田船長は、研究船パーズを発進させることにした。

 海上に停止しているよりも、動いた方が安全だと判断したからだ。



「はい。パーズ、発進します!」

 操舵手の山本が答える。


 海上に非常停止していた研究船パーズは発進した。






 博士たちは、展望台にいる。


「ん? パーズが動き出したぞ。シンシア、すぐに空母に遭遇するぞ、気をつけるんだぞ」

 船が動き出したのを、博士は体で感じた。



「わかっているよ、パパ。アムル! まだいけそうか?」

 シンシアは、真剣な顔で頷き、アムルの方に視線を動かす。



(もう1発はいけると思うよ。兄者)



「そうか、頼んだぞ、アムル。これが終わったら、パパにチョコパイをおねだりしてやるからなぁ、アムルのぶんも!」


(おぉっ、兄者! 俺、頑張るよ!)


 アムルはレイアの腕の中で、きゃっきゃっと嬉しそうに腕を動かしている。



 汗をかいているアムルの顔を、レイアはハンドタオルで拭う。


「Oh, what’up? You look so happy. (あら、なんか、嬉しそうね)」

 嬉しそうなアムルの顔を見て、レイアも笑みを浮かべた。




「シンシア、あれだぞ!」


 博士の肉眼でも見える距離に空母が近づいてきた。

 灰色の小さな点は、徐々に大きくなってゆく。



「わかっているよ、パパ!」


「どうする? 前の軍艦みたいに、ひっくり返すか?」

 博士はシンシアに目をやる。


 前の軍艦とは、太平洋で研究船パーズを追跡して来た軍艦のことである。シンシアが海神ポセイドンの力を使って、一撃のもとに、ひっくり返したのだ。



「それもいいかもね。でも、まだあんなに遠くにいるんだよ、あそこに海水の柱を出すのは、面倒だよ。でもさ、空には届かないけど、海の上にさえいれば、こういうこともできるんだよ」


 シンシアは、トライデントを構え、力を入れる。



 ゴゴゴゴゴ


 海水が大きな壁を作り出す。



「行ってこい!」


 シンシアは、大きな津波を作り出したのだ。パーズの展望台にいる博士たちが見上げるほどの大きな津波だ。



 ザァー



 津波は、遠くにいる空母に向かって進んでゆく。



 博士は、空母に向かっていく津波を見て、目を丸くしている。大きすぎる津波だ。


 津波が邪魔して、もはやあの空母は見えない。






 その津波の先にある空母の中では混乱が起きていた。



 出撃した戦闘機は3機とも撃沈したのだ。

 3機のうちの2機には稲妻が落ち、もう1機は波に飲まれた。



「Oh my god! What is that on earth? Tsunami is coming! (な、何だあれは、こっちに向かってくるぞ!)」


 そして、目の前には大きな津波である。

 目標の船が見えていた方角から、津波が押し寄せてくるのだ。


 その船は、もはや津波に隠れて見えなくなっていた。

 見えるのは、水の壁だけである……。


「Rush to tell the situation to Justin, that our jet fighters were hit by lightning and that our aircraft was gone down by a big tsunami. (至急、ジャスティン様に連絡しろ。戦闘機は雷にやられた、と。そして、我が空母は津波にやられた、と)」


「Yes, sir. (わかりました)」



「That is so big tsunami, there is no way for us to survive from that. Hurry up, if anybody could run away by helicopters. (あれほどの津波だ。この空母が沈むのも時間の問題だ。ヘリで逃げられるものは、急げ)」


 空母の船長は、迫り来る津波を眺め、ゴクリと唾を飲んだ。


 彼は、操縦室で立っていた。逃げ出すことなく、勇敢に。




 バリーン



 バシャー



 津波が空母に当たった。



「All is lost. (くっ、ここまでか……。)」


 船長は津波にのまれた。




「Oh my god. (ぐあアァァァ)」


「Ohhhh! (ギャアー)」


 いくつもの叫び声が起こり、波とともに流されていった。



 空母は、メシメシと音を立てて崩れ去る。

 甲板に残っていた数機の戦闘機も、津波にのまれた。


 ヘリコプターが1機、ギリギリのところで飛び立って行った。






「これで、終了っと」

 シンシアは、津波に飲み込まれた空母を遠くから眺めていた。



「あっ、アムル! あそこにヘリコプターが1機逃げて行く! もう1発、いけるか?」

 シンシアは、1機のヘリコプターに気がついた。


(あと1発くらならなんとか打てるが……。)

 アムルは、シンシアと博士に脳波を送る。



「いや、逃がしてやろう。あのヘリコプターは、我々を襲う訳ではないだろうからな。とりあえずは、我々の危険は去ったんだ。深追いする必要はない」

 博士は言う。


 博士たちは、あくまでも、自分たちを攻撃してくるものから身を守るために戦っているだけなのだ。


 空母から逃げ出したヘリコプターにとどめをさす理由もない。



「そう……、だね」

 シンシアは頷き、トライデントを下ろした。






 一方、研究船パーズの操舵室では。



「すごい津波でしたね」


「あの大きな空母が一撃ですね……。」


 佐伯航海士と山本操舵手は、遠くで沈んでいった空母を眺めている。



「我々の『女神』は、強すぎる。雷も津波も自由自在のようだな……」

 沖田船長も、双眼鏡で、空母の様子を見ていた。


 それは、津波にのまれ、沈んでいったのだ。



「敵に回したくはないですね」

 佐伯航海士は言う。



「そうだな……。」

 沖田船長は大きく頷いた。




 南極に近い、南太平洋でのことであった。


 研究船パーズは、南アメリカに南端に向けて、西にまっすぐ進んでいた。


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秋の桜子さまよりいただきました。
好評連載中です!

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砂臥 環さまからいただきました。
リンク先は、『『月』を照らす光〜月と海のリザレクション〜』です。
テーマソングです。
― 新着の感想 ―
[良い点] チョコパイで撃墜される戦闘機……w いやほんと、敵に回したくはないですね!
[一言] アムル:「この戦い終わったら、チョコパイ食うんだ」 果たして叶うんでしょうか
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