表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
月と海のリザレクション〜海神ポセイドンの幼女転生〜  作者: 幸田遥
第1章 太平洋航海編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/93

シンシアvs潜水艦


 シンシアは海中にいた。

 パーズの甲板から海に飛び込んだのだ。



 パーズの船底には爆発の跡があり、そこから破片がバラバラと沈んでいくのが見える。水の濁りが下の方へと広がっていく。



 シンシアは辺りを見回した。

 しかし、肉眼で見えるところには何も見当たらない。




(よし)


 シンシアは、超速で振動する波を作り出し、自身の体から放射状に放った。ソナーの要領である。


 そして、体で波を感じた。


 海の中には魚も何もいないので、動くものはいない。動くものがあるとすれば、それが潜水艦だろう。



(なるほど)


 シンシアは、60メートルほど下に、動く大きなものを見つけた。



 シンシアは、その方向に向けて、一直線に進む。足の裏に渦を作り、下に向かって、駆け下りる。




 すぐに、目の前に黒い影が見えた。


 日の光がよく当たらない海の中である。潜水艦であろうことは認識できるが、定かではない。



(見つけた! とりあえず、お顔を拝見させてもらうよ)



 シンシアは、潜水艦の下に渦を生じさせる。

 その潜水艦を、日の当たる明るい場所まで浮上させるのが狙いだ。


 潜水艦は渦に飲まれ、方向を変える。




 ズシュー



 その瞬間、潜水艦から、魚雷が放たれた。シンシアが潜水艦の目の前に来た時だ。




(えっ? わたしに向かって、撃ってくるの?)


 シンシアは一瞬ひるんだ。

 攻撃を受けることは、少し意外だった。


 魚雷はシンシア目がけて、一直線に進んでくる。



(別に。当たらなければ、なんともない)



 シンシアは、体を横に動かし、魚雷を華麗に避けた。

 その魚雷は、水疱を上げながらも、シンシアの横を通りすぎる。



(それ)


 シンシアは、後ろに過ぎ去った魚雷の周りに、水圧を生じさせる。



 キシッ、ミシッ


 魚雷が軋む。


 そして、そのまま魚雷を握り潰した。



 ズズン


 爆発が起こるが、それも水圧で押さえ込まれる。爆発した魚雷は、粉々のかけらになり、濁り水として、下に沈んでゆく。




(さて、と)


 シンシアは、潜水艦を睨みつけた。

 この潜水艦は、完全にシンシアの『敵』である。



 シンシアは、潜水艦の下の渦の数を増やす。

 全長100メートル越えの大きな潜水艦が、あらがうこともなく、海面へと押し上げられていく。




 瞬く間に、パーズの3分の1ほどの大きな黒い鉄の塊が、パーズから少し離れた海面に出現した。



 シンシアも、続けて、海上に顔を出した。


 空を見上げると、先ほどまで雲ひとつない青空だったのに、雲がポツポツと集まっていた。

 明るい青空に、複数の小さな黒い雲が浮かんでいる。




「これは、ゼウスか?」


 その時、小さな雲から細い稲妻が落ちた。



「ははは」


 シンシアは、すぐに潜水艦から離れる。




 バシッツ ドゴゴゴ



 細い稲妻は、潜水艦に直撃した。

 それは、数秒の間、バリバリと鈍い音を出す。


 そして、稲妻の音が消えると共に、潜水艦から発せられていた鈍い低音も消えた。





「雷かぁ。あれじゃ、中の人は、無事じゃ済まないだろうな」

「Oh, my gosh. (まぁ、なんてこと)」

 博士とレイアは、パーズの甲板からそれを眺めていた。


 黒い潜水艦が浮上して来たと思ったら、稲妻に撃ち抜かれたのだ。それを見て、2人は驚きの声をあげた。



「ん、そうかぁ、雷かぁ……。」

 博士は、もう一度、小さな声で呟いた。


 レイアの腕の中では、最高神ゼウスが転生したアムルが、眠ったかのように、目を閉じていた。






「これはまさに不幸中の幸いだな。まさか、雷が落ちてくるとはな」


 パーズの操舵室では、沖田船長が、双眼鏡で、潜水艦を眺めていた。


 パーズを襲ったであろう黒い潜水艦が、海面に浮上して来た時には、どうすべきかと色々な考えが頭をよぎった。しかし、稲妻が落ちて来て、潜水艦は、沈黙した。


 危険は去ったようだ。



「ん?」

 沖田船長は、双眼鏡のレンズの端に金髪の少女を見た気がした。



 ブー、ブー


 ちょうどその時、操舵室には、無線機の受信音が鳴った。

 船長は、一旦、双眼鏡から目を離した。


「ちょっと、待て」

 沖田船長は受信音を、無視し、もう一度双眼鏡で辺りを見回したが、少女の姿は見当たらなかった。


「気のせいか?」


 沖田船長は、小さく呟きながら無線機を取った。



 これはエンジン室からの連絡だ。


「船長、損害状況を説明します。今のところ、怪我人が3名います。しかし、彼らは命に別条はありません。船体の被害は、左側のエンジンとスクリューです。エンジンは大破しており、ここでの修理は困難かと思われます」


「そうか、わかった。ありがとう」

 沖田船長は、無線を切る。


 沖田船長は、目を閉じ、息を吐く。


 残った右側のエンジンとスクリューで、日本への進行は可能だが。日本への到着は予定よりも大幅に遅れる。同じような潜水艦にまた遭遇するかもしれない。安全のためにも、乗客は降ろした方が良い。




 パーズの船内に響き渡っていた警報音は解除された。


「本船は、一機のエンジンを大破しました。本船は速度を落としつつも、日本へ向かいます。乗客の皆様は、救援の到着を待ち、一旦、アメリカに向かってください。そして、航空機で日本へと帰国してください」


 静寂を取り戻した船内に、船内放送が響き渡った。




「そうか、パーズから出ないといけないのか」

 と博士とレイアは顔を見合わせる。

 2人はまだ船の甲板にいた。



「シンシア、お疲れ様。潜水艦を一撃で沈めるとはな、相変わらず、すごいな」

 博士は、海から戻ったシンシアを笑顔で迎える。



「いや、えへへ」

 シンシアは、そう言って苦笑いを浮かべながら、視線を下に向ける。

 博士は、シンシアの頭を撫でた。


 海水を吸った髪の毛がギシギシとなる。



「とりあえず、裸で歩くのもあれだから、これを着なさい」

 博士は、手にしていたワンピースをシンシアにかぶせた。


 海水で濡れている髪の毛ごと、頭を通す。濡れた手を引っ掛けながらも、袖に手を通す。そして、髪の毛を両手でパサパサと広げる。湿った髪の毛から海水がワンピースに滲んだ。



「よし、行こうか」


 博士は、シンシアを抱きかかえる。シンシアはまだ海水で湿っていた。じんわりと生暖かい海水が、博士の腕を伝う。


 レイアの腕に抱かれたアムルは、青い目を開け、空を見上げていた。アムルに視線を落としたシンシアとアムルの視線が交差した。


 2人揃って、口元に小さく笑みを浮かべた。




 博士たちの後ろの海上では、黒い潜水艦が、不気味に浮かんでいた。

 黒い雷雲は、いつの間にか無くなり、空は、また真っ青な晴天に戻っていた。



 7月27日のことである。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
i488219
秋の桜子さまよりいただきました。
好評連載中です!

i493381
砂臥 環さまからいただきました。
リンク先は、『『月』を照らす光〜月と海のリザレクション〜』です。
テーマソングです。
― 新着の感想 ―
[一言] シンシアちゃん強いですね☆彡 アジム達も素敵です♪ 小さな烏賊が100匹とか奇麗だろうな……って思いました (*´▽`*)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ