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研究職の中年が研究もせずに魔法でああだこうだでキリキリ舞い  作者: ディ・オル
第二章~学校編 vol.2~
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朝会

前回のあらすじ。

赴任して早々遅刻した。

 体育館内で朝会が始まった。千人近く居る全校生徒が一面を覆い尽くす様は圧巻である。最初に校歌斉唱が始まり、次に代表生徒による朝礼が始まった。演説台に上がったその生徒は朗々と話し始める。委員会からの連絡があるようで、今週は校内美化を強化する、という旨を伝えると、壇上から降りた。

 次に教員が壇上に上がると、コンクールで活躍した生徒の表彰が始まった。

 それらが終わると、今度は美崎達の紹介である。先ほどとはまた別の生徒が壇上へ上がり、大きな声で発表する。


「みぁさん! おあようございぁす。今日は、うぃんなに紹介したい人が二人いぁす。そぇでは、どうぞ、上がってきてくだあい」


 滑舌が異様に悪い男子学生が司会を始めた。なんでアイツなんだッ……もっと喋れるやつ居るだろ!! と美崎は内心でツッコミを入れつつ、音無と共に段を登った。その様子を見て、ざわめき立つ聴衆。朝会はそのまま進み……と思いきや、滑舌の悪い生徒が退場させられた。別の男子学生が代わったのだ。恐らく、自主性を尊重してスピーチを任せてみたが、やはり荷が重く、交代させられた……といった所だろうか? 滑舌の悪いその子は背中に哀愁を漂わせながら、悲しそうに群衆の中へと消えて行った。


「こちらが、今日から少しの間、魔法科学について教鞭をとっていただく、臨時講師の美崎先生です。美崎先生は、研究所の所長もされています。では……なにか、一言お願いします」


 代役の生徒は大きな声でハッキリと言った。先程と打って変わり、三面六臂の大活躍である。生徒は一礼すると、美崎にマイクを手渡した。


「えー、初めまして」



 こういう時、なに喋ればいいんだろう? 昨夜と今朝、暇な時に少し考えてみたけど、気の利いたアイデアは思い浮かばなかったんだよね。話が上手ければ、それなりの目で見て貰えるだろうし、キョドったりテンパったりしていたら、舐められる所か、授業をまともに聞いてくれないかもしれない……。

うーん、人間性が表れるよな。じっくり時間を掛けて名文を書いて来ても、メッキは剥がれるものだ。普段の会話や咄嗟の判断、センスには活かせない。だったら、飾らないで、今の感情を率直に伝えたい。


「えー……美崎と言います。授業以外でもどうか気軽に声をかけてください。至らない所は多々あると思いますが、その際は皆様の救いの手を差し伸べてくだされば、と思います。短い期間ですが、よろしくお願いします」



 美崎は内心の緊張を押し殺し、悠然とした様子でマイクを男子学生に返した。少し言い方が硬かったな、と臍を噛んだ。生徒と今後打ち解ける事を加味すると、もう少しフランクにすれば……今のは失敗だったかもしれない、と後悔する。

 パチパチ、と生徒達からの拍手が聞こえた。


「そして二人目は、音無さんです! 美崎先生と同じく少しの間だけ、みんなの仲間として授業を見学してもらいます。音無さん、何か一言ありますか?」


 司会の学生はにこやかに、音無の顔にマイクを近づける。


「いや、無い」


 即答だった。音無の返答である。司会の「え?」という声を、マイクが拾っていた。


「……あっ、ではこれにて、朝会を終了します。美崎さん、音無さん、よろしくお願いします」


 寸刻、硬直していた司会だったが、すぐに気を取り直して朝会を締めた。


 無い……って、ちょ、音無。あ、あれ? 大丈夫か、この空気? まぁ「緊張しているのかな?」とも取れなくはないけど

 会場が一瞬、静まりかえる。生徒の大多数は「えっ、終わり?」と呆気に取られていると思われた。しかし、次の瞬間には


「……カワイイ」


「音無さん、よろしく~」


「よろしくね―――っ!!」


 誰かの開口一番を皮切りに、聴衆が沸き上がった。次々と生徒の声が響きわたる。

 音無は想像以上に人気だった。良かった。この様子ならクラスにも馴染めるのではないだろうか。でもアレだな、俺の時はみんな仏頂面で拍手するだけだったのに……。顔面格差? この野郎。



 朝会が終わって、体育館に集まっていた生徒が全員居なくなった。数人の教員が居残っているだけで、穏やかな時間が流れていた。今朝の忙しさを思い返しながら、そんな静かな空間の中で、俺と音無は一息つく。

 どうやら、この後の予定だが、俺が受け持つ科目までは二時間ほど時間が空いているらしい。本来であれば教員室か休憩所で待機し、暫時休憩となる筈の予定だったのだが、俺が遅刻して来てしまったので急遽、予定変更である。校舎の見学と、校長室に置いてきた荷物を学生寮に移している間に、丁度良い時間になりそうだ。

 俺と音無は一旦、校長室へと戻る。道中、今度は道に迷わなかった。

丁度良い所で話が切れなかったので、今回は文量少なめです。

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