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ある街  作者: 木苺
  (1) 遥かなる昔
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レイスとメイジ

私は レイス。

レイスは種族名であり、この町における私の名前でもある。


ずいぶん前からこの町に住んでいる。


この町に来る前は 別の所に住んでいた。


◇


そこは もともと廃墟だった。

というか そこだけでなく いたるところが廃墟だった。


あちこちで 火がくすぶっていた。

湯気がたって近づけない所や

有毒ガスやら 触れたものがすべて腐食する沼のようなものがあちこちにあった。


たぶん戦争かなにかで、多くの住人が死んだり変異したようだ。


もしかしたら 私も 昔は レイスではないなにか、もしかしたら人間だったのかもしれない。


しかし 気が付いた時には 私はレイスだった。

 いわゆる肉体をもたず、物体に働きかける力が弱い存在。


そして あちこちをフワフワと移動しているうちに、

メイジにあった。

いわゆる不死人の魔法使いメイジ。


◇


メイジは、持ち前の魔法攻撃力を活かして 自分の住処《すみか》を守っていたらしい。

しかし スタミナがあまりないので、どうしても専守防衛というか根城《ねじろ》に引きこもりがちになってしまい 外界の情報に疎くなる。


一方の私は 特に強い攻撃力をもつわけでもないし、暑さ寒さも好きではないないが、なにかあれば スッと姿を消したり、短距離であれば 自分が知っている場所に転移することもできるので、まあ 風任せに ふらふらとあっちこっちをさまよい、いえ旅をしていた。



そうこうするうちに、「一夜の宿を提供する代わりに、外界の様子を聞かせてほしい」と声をかけてきたメイジの住処の近くに居つくことになってしまった。


◇


そして 時は流れ、ゆっくりとだが、 私たちの近所に住みつくものが増え

かつての廃墟が 今では「街」となった。


いつのまにか 廃墟が続いていた世界が復興して、

新しい世界に生まれ変わっていたのだ。


◇


メイジが拠点としていた建物の周りも いつのまにか町になっていた。


その結果、私の姿や影をみて、「きゃー レ・レイス」と叫ぶ者たちが増えてきた。


 失礼な! 私の名前は「レ」では無いし、姓が「レイス」であるわけでもないのに。



一方、メイジは 不老不死だと周囲の者からやっかまれるのが嫌で、

人里離れたところに拠点を構えていたのに、

いつの間にか、自分の住居が町の中心地点になってしまっていた、とぼやくことしきり。


たぶん 人里離れた場所=撤去しなければならない「がれき」がない場所だから

新たな建築物を立てやすかった、のだろう。



メイジ曰く、

「周囲に短命族の者が住み着き始めると、うかうか散歩にも行けない。」

「成長しない 歳をとらないことがそんなに悪いのか!」


というわけで、メイジと私は 転居先を探すことにした。


◇


そして たどり着いたのが、バンパイアが町長を務める「この町」

である。


ここは、 静かで、 静けさを好む住人だけが住む 良い町だ。


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