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ある街  作者: 木苺
オーガのガオー
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4 ホームタウンを求めて

ガツガツと長距離輸送の仕事を請け負って10年


家を1軒買って、つつましく読書にいそしめば4・5年は 働かなくてもよそうなくらいの貯金はできた。


問題は どの土地に家を買うか? だ。


◇


働き始めたころは なんとなく 家を買うなら 自分が生まれ育った町(ホームタウン)が良いと思ってた。

 なんといっても 家族や友達がいるからな。


だが 何年も長距離輸送の仕事をして、あちこち転々と動き回る仕事をしていたら いつの間にか 故郷の連中との縁も薄くなってしまった。


だって こっちから手紙を出すことはできても、いつも居場所が変わる住所不定の生活をしていたら、誰かからの手紙を受け取ることもできない。


なにしろ 転職後は、実家に帰省する暇もないほど、働いていたからな、俺。


◇


土木建築会社に務めていたときは、地元の社員寮で暮らしていた。

出張明けには 土産などを持って実家に帰ることもできた。


フリーの運送屋になる時、オーガステーション近くにある貸し倉庫部屋に私物(そのほとんどが本)と衣類などの雑貨をまとめて入れた。


 「貸し倉庫部屋」というのは、広さタイプはいくつかあり、その気になれば 中で寝転ぶことができる広さの部屋もあるが、煮炊き・飲食・湿った物の持ち込みは禁止。

 ほんとに物置に特化した部屋なんだ。

 だから 当然郵便物は受け取れない。

 が、アパートの1室を借りるよりは遙かに安い!

  賃貸料は同じ広さのワンルームアパートの10分の1以下!!

  たいていは ワンルームアパートの半分~3分の1の広さだから、料金は5%とか3%くらいまで下がる。  


オーガステーションの宿泊棟には ランドリールームも食堂も自炊室もある。

 1泊料金には寝具の使用料も含まれているから、当然寝具を洗う必要もないw

 仮眠室を使えば 宿代はタダ!


俺は シーズンオフの服や思い出の品などの私物は 最低ランクの貸し倉庫部屋に入れた。

宿泊費用も倹約したので、生活費は会社勤めの頃の半額以下になった!


 貸し倉庫と貸し倉庫部屋とはどこがちがうかって?

 貸し倉庫なら 箱詰めにして一箱いくらで預けるだろ。

 貸し倉庫部屋なら、本箱や衣装棚に入れた状態で 倉庫部屋に保管できるから、出し入れがしやすいんだ。


◇ 


昼夜を問わず、走りやすい時間に、依頼に合わせて走り回り、眠れるときに寝るという生活をしていたら、電話で誰かとおしゃべりなんてこともできない。それに通話料も高いしな。


というわけで、通帳見ながら俺はふと思ったんだ。


別に故郷に家を建てる必要もないんじゃないか?って。


ふつうは 自分が生まれ育った町をホームタウンと呼ぶらしいけど、

「|これからの人生を築く場所《ホームタウン》」を、自分で決めてもいいんじゃないか?と。


◇


それで つらつら考えた。

そういえば 俺 知り合いは多いけど 友達少ないよなって。


子どものころは「読書が好きだなんて オーガらしくない!」って散々からかわれたから、人とは一線引いて付き合うようになったし。


もちろん 体を動かすことは好きだよ。

だけど 座って本を読むことも好きだったんだ。


『軟弱だ』と言われないように シッカリと体を鍛えたから

長距離輸送では ちょっとは名前の知られた「働きものだ」「優秀運搬者」って評判を得たけどさ、それは 俺の趣味が読書だって公表してなかったことも影響していると思う。


それで、少しだけ 仕事を請け負うペースを減らして、国中のあちこちを見て回ることにした。


転移孔の向こうの世界でいうところのワーキングホリデーみたいなことをやってみたわけ。


A地点からB地点まで荷物を運んだら、しばらくB地点にとどまって

B地点周辺の短距離運送をしながら周辺観光したり探索をする。

その時 不動産物件の出回り具合とか 物価とか 人情とか 本の入手しやすさ・図書館の有無などもチェック。


そして 今度C地点への長距離輸送を請け負って・・

みたいな感じ。


そういうのを2・3か月やってると、「ワーホリ人脈」みたいなものができた。


つまり、俺と同じように定住先を探して各地を旅している人間同士の連絡網の一員として迎え入れられたわけ。


といっても ワーホリ向きの土地が 必ずしも定住者受け入れに好意的ってわけでもないんだけどさ、

貯金を減らさずに各地を旅してまわるには役立つ情報を得ることはできた。

 初めての土地で 短期仕事を請け負うノウハウとか。 地域に合わせた宿の取り方とか。 


気になる場所、良さげな場所には 季節を変えて 2度3度と訪れることが大切だということも実感した。

四季によって 住みやすさが ガラッとかわったり、町の人が入れ替わったりということは、実際この目で確かめないとわからないことが多いんだ。


そうやって この2・3年各地を回っているうちに、ある町のうわさを聞き、そこに行ってみた。

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