2 ガオーの人生
俺は 読書が好きなんだ。
だから最初は、定住して、毎日現場に出かけて夜に戻ってくる地元の土木建築業で働くことを考えた。
だってさ、「長距離輸送で あっちこっちと走り回り、転々と宿泊先が変わる生活では、読書欲を満足させられねー。輸送中は本を持ち歩けないから」って思ったんだ。
ン?土木業と建築業は 素人目には似ているけど、実はかなりちがうんじゃないか?って。
確かにそうなんだけど、俺、オーガだから、観察眼もある 力もあるけど、細かい作業に向かないって言っただろ。
だから どうしても 力仕事専門になるわけよ。
で、地元定着型の生活にこだわれば、土木業でも建築業でも 重機がわりの仕事なら何でもやります!って言わないと 生計が成り立たないわけ。
まっ 複数の専門的業種をこなすだけの頭は オーガの俺にも十分あるからな!!
たりないのは 手先の巧緻性だけで。><
◇
だけどさ、いざ 働きだすと 土木建築業って 意外と夜間作業が多いんだな。
発注主の意向で いついつまでに仕上げてくれと言われれば、
昼夜突貫作業で・・とかになっちまう。
それに仕事がきついから 毎日毎日 家に帰れば バタンキュー
休みの日も・・思ったほど本が読めなかった。
おまけに 最近では、遠方での仕事が多くて、
2・3か月から半年くらいの出張が増えてきてさ、
出張中は 仮の宿を会社が手配してくれるんだけど、そんな たくさんの本を持ち歩くわけにはいかないから乱読志向の俺には向かない。
会社としたら、物覚えが良くてよく働く俺を有効活用するには
遠方から受注した重要案件に俺を回して、成果を各地で示して
会社への信頼度を全国で高めて 受注を増やしたいって意向らしいんだけど。
現場監督になって 給料は飛躍的に増えたし、肉体的疲労度もかなり減ったのでバタンキューってほどではなくなった。
だけど、もともとが定住したいからとこの業界を選んだ俺としては、当初の「職業選択の理由」からは 隔たる一方で・・。
結局のところ、都市インフラが一通り完成して、
人口増加も鈍化した安定した社会ってのは、
補修とかメンテとかって細かい作業が増えて
「0から何かを作ります!」っていう力仕事が減っていくんだよ。
まあ 20年とか30年たって、「完全に、配管とか土台から入れ替え」ってなると大口の仕事がその地域でどーんと発生するわけだけど。
で そこでは 俺のような力持ち・体力自慢・おまけに頭が良い奴が活躍できるわけなんだが
そういうのって、各地区順番に需給できるように 上の人が差配振ってるからさ。
コンスタントに仕事はあるけど、労働現場は 全国順番に巡ることになるわけよ。
(こういうことに気づいたのは、勤めてしばらくしてからだった。)
それでも 何年も真面目に仕事は続けたぜ。
転職するにも ただ勤務先を変えればいいってもんじゃないし
「金は稼げる間にかせながきゃダメ」
「長く稼ぎ続けたければ、石の上にも3年」
「どの仕事でも 職業経験ありと認められるだけの基本的な力=稼げる力、を身につけるには3年は辛抱しろ」
なんてことは、年上の連中の生き方を見たり聞いたりしていてわかってたからさ。
(転移坑の向こうの世界の中には、2・3年で人を使い潰して自己退職するように仕向ける雇用主もいるらしいけどさ。こっちの世界では そういう奴は長生きできないからな。
法律でも禁止されている不当労働行為として厳罰に処せられるか、気の短い奴に闇討ちされるかで。
もっとも 殺人や暴力は触法行為だから、犯人は
”『己が振るった暴力への罰』ー『雇用主に本来科されるはずであった罰(此は被害者の人数分だけかけ算される)』” の分だけの刑罰を科される。
尚 これは 労働基準監督局に訴え出たのに 取り合ってもらえなかった場合の罰であって、
もし 監督局に訴えずに、己の感情や考えのみで行動を起こした場合には、「私刑」罪の分の罪も加算される。
まっ ほかにも 刑罰の量刑に関しては 細かい計算式がいろいろあるんだけど、今は省略する。
なんで こんなこと、俺が知ってるかって?
そりゃ 学校で習ったからさ。
高学年になると「社会人の心得と職業教育」っていう科目があって、
そこでは 雇用者と被雇用者がそれぞれ守るべき労働契約とか
社会生活を営む上で必要ないろいろな契約に関する概念とか、
契約者双方が守られなければいけない条件と、それらが守られなかった場合のとるべき行動、
違反した場合の罰の量刑とか。
それを理解できない連中は、分相応の職にしか付けない。
搾取されないように守られるけど、職業選択の範囲は狭くなる。
自由な生き方を求める者ほど、背負うべき義務とリスクは高くなる。 それだけのこと)
それで、「転職の時期の適否」「転職結果の正否」ってのは、 自分の年齢と経験と社会状況のマッチングによって決まるってことも、義務教育卒業試験の中に含まれていたわけ。
◇
俺は改めて 自分は どういう生き方をしたいのかと考えてみた。
オーガの仕事で 一番 金をためやすいのは 長距離輸送の仕事だ。
しかし、長距離輸送の仕事をしているときに 読書は無理だ。
だけど、家から通えると思って勤め始めた土木建設業でも、せっかく毎日家に帰ってきても 実際には あんまり本は読めなかった。
しかも 最近は 出張仕事がますます増えてきた。
だったら、まずは金を溜めることを最優先する生き方を選んだらどうだろうか?
というわけで 俺は 長距離輸送の仕事に転職した。
(一応 出張先で出会ったオーガ達からも いろいろな情報は集めてたからな。
最初は 付き合いで話を聞かされるばっかりだったが、
やがては こっちから積極的に いろんなところで飯を食いつつ情報収集に励んだのさw)




