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ある街  作者: 木苺
第二章 ガオーの新生活
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レイン一家とガオー

前日 レインと打ち合わせた通り

朝10時に レイン宅へ迎えに行ったガオー。


玄関前には すでに 荷物が出してあり、

レインはベンチに座り、人間姿のダニーは 庭のブランコで遊んでいた。


「おはよう」

ガオーとレインが挨拶をかわしていると、ダニーもブランコから降りてやってきた。


「おはようございます。」

ダニーはきちんとお辞儀をした。


「おはよう。 

 しっかりとあいさつができて偉いね」ガオー。


レインは 玄関を開けて、ミオを呼んだ。

すぐにミオも 手荷物をもって出てきた。


「迎えに来て下さってありがとう。

 今日はお世話になります」ミオ


「こちらこそ」

ガオーは軽く会釈をしてから尋ねた。

「持っていく荷物はこれだけ?」


「はい」


「では 背負いかごに入れさせてもらうよ」

ガオーは手ばやく 荷物を背負った。


「パパ 肩車して」父親にねだるダニー


レオンがダニーを肩に載せると 

「じゃあ 行こうか」ミオを促し歩き出した。


◇


実は 昨日、レインとの打ち合わせで 一家にとって快適な歩く速度が分からないので レオンが率先して歩い欲しいと言ったガオー。

「そしたら 僕が 合わせるからさ」


「そこまで 気を使わなくてもいいよ」レオン


「マジわからないんだよ。

 俺 馬車より早く走り回る生活をしてきたからさ。

 それに 一般的に オーガの移動速度は 二本足で歩く種族の中で一番速いと習った。

 それにオーガの女の子も オーガ男子と同じだけ強いので、はっきり言って 異種族の女性の歩く速度なんて見当もつかない。

 君と一緒に出勤するときも 速く歩きすぎて君を困らせないように注意して、君の普段の歩く速度を覚えたばかりなんだから」ガオー


「なんだ 最初の頃 かなり僕に気を使っていたのは、人見知りしているのかと思ったら、ひ弱なオオカミ獣人に気を使っていただけなのか。」レオン


「ごめん。気を悪くさせたみたいで。

 ひ弱だなんて思ってない。

 でも 君たちの種族は 男性は女性を守るんだろ?

  つまり 女性は、それだけ気を遣わなければならない存在なんだろ。


 それに オーガは 異種族に対して気を使えって子供のころから叩き込まれているからそれを実践しただけだよ。」ガオー


「なんで そこまで気を遣うのかなぁ・・」レイン


「そりゃぁ、大荒廃時代に、人間達も獣人たちも オーガを見たとたんに 集団で武器を構えて襲い掛かってくる連中が多かったからだよ。


 その理由たるや『オーガは 人食いだ、集団で戦わなければ負けるほど強いから、先制攻撃あるのみ!』っていう思想だったから、ほんと困った!


 もともと個人か家族単位で住んでいたオーガが 固まってオーガ町を作って住むようになったのも、人間と獣人たちから身を守るためだ。


 一人で暮らしていると 百人 千人と徒党を組んで 集団で 山狩りまでして

僕らオーガを殺しに来たのは 君たち獣人と人間集団じゃないか。


 だからこそ 僕たちは、君たちが襲いに来る気をなくすように集団で住んで自衛を固める一方で、

『僕たちは平和的な一族なのだ』と、

『異世界からの噂に惑わされて 昔馴染みを襲ったりするのはまちがいだ』と、

君たちが納得いくまで 根気よく話し合いを重ねてきて 今があるんだから!


 当然 僕たちとしては 君たちが恐怖に駆られて襲ってこないように、

あるいは物を壊されたとか ケガをさせられたとかって恨みを買わないように、

異種族と暮らす時のマナーを 子供の頃から徹底的に学ばされて実践しているんだ。」


「ごめん。 異世界だけでなく 僕らの世界でも オーガ狩りがあったなんて知らなかった」レイン


「そうなのか?」ガオー


「うん。それは 転移孔の向こうの話だと思ってた。」レイン


「異世界人も 僕らの世界の住民も、外見だけはそっくりで、考え方や生き方はずいぶん違っていたみたいだね。


 大荒廃時代に 異世界人と僕らが入り混じったのか 向こうの噂話だけがこちらに浸透したのかは よくわからないけど、

とにかく 『価値観の崩壊・塗り替え・混乱』というのが かなり大がかりに起きていたみたいだ。


 それで 僕らオーガはひどい目にあった。

 その歴史を踏まえて今がある。

 そして 襲撃していた側が その歴史を忘れても、

 狩りまくられた側は その時のことを覚えていて、

 同じ被害にあわないように 自衛策を子々孫々伝えているんだよ」


「それでよく 獣人の僕と付き合う気になったね」レイン


「そんな 千年の前のことを引きづるやつは馬鹿だよ。

 そして そんなバカとは付き合わない

 そんなバカが住んでいる町にも 定着する気はないね!」ガオー


「で?」レイン


「で? なんだよ」ガオー


「僕は 一応 馬鹿ではないと 今も評価されてる?」レイン


「わかり切ったこと聞くなよ。


 この町の住民となる前に、出ていく自由はちゃんと確認しているし

 この町に関して消される記憶の範囲もきちんと取り決めてある。


 そして 差別問題があった時には 俺はさっさと出ていくし

 その時に町から受け取る慰謝料と賠償金の額も取り決めてあるから、

無理に 嫌いな奴と付き合う理由もなければ ここに残る必要もないんだから。」ガオー


「そうなんだ。 僕の時の契約とは違うね。」


「そこが 子供のために一家で転入する人と、独り者のマイホーム探しとの違いだろうね」ガオー


「確かに。」レイン


◇


そういうやり取りがあったことは、レインも 昨夜のうちにミオに伝えていたし

今朝も レインが率先して ミオと一緒に歩き出した。


レイン一家の隣を ガオーも歩いた。歩調を合わせて。


「ガオーおじさんは 背が高いね。

 パパの頭が ガオーおじさんの肩までしかない」ダニー


「君のご両親が許可してくれるなら、君を肩に載せて散歩することもできるよ」ガオー


「そう言ってくれるといいなと思っていたんだ。

 ねえ ママ パパ、ガオーおじさんの肩に載せてもらってもいい?」ダニー


「ガオーさんと もっと親しくなってからね」ミオ


「はい ママ」


「息子さんが 落ちないか心配なら、

 かごの中に息子さんが立って、俺の肩や頭の上に息子さん入りのかごを載せて

 俺が しっかりと そのかごを支えて歩いてもいいんだ。

 息子さんが 興奮して かごの中で飛び跳ねたり かごが揺れるほどからだを乗り出したり かごの中で体を動かさないなら。」ガオー


「ずいぶん魅力的な提案だ。

 僕が ダニーくらいの年齢なら 誘惑されるな」レイン


「君が僕の両肩に足を踏ん張って、支え無しでも立っていられるなら 運んでやってもいいぜ」にやっと笑ってガオーが言った。


「問題は 支え無しで立っていられる自信が、僕にないことだな。

 それができたら ちょっとしたサーカスみたいで 楽しいだろうなぁ」レイン


「考えてみたら サーカスの連中って 日頃どんな訓練をしているんだろう?

 ああいう技を身に着けるために」ガオー


「ほんとにそうね」ミオ


そうこうするうちに、ガオーの家に着いた。


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