本棚が届かない
特注した本棚がキャンセルされた。
「大きすぎる」という理由で。
「だから特注したのに」
通知を見た俺は さっそく庁舎(=表の町にある 町長室のある建物)にある共用電話から苦情を入れた。
「しかしですね お客様がおっしゃる重量の本を収納し、なおかつ床から天井までの本棚となりますと、家に作り付け仕様となりまして、
とてもじゃありませんが、配達して送れるものではないのです!」
「配達なら 俺がするよ」
「そういう問題ではないんです」
要約すると、完成した本棚の据え付け方が悪くて、転倒した場合の責任を持てないということらしい。
だったら パーツを購入して こっちで取り付けると言ったら、
組み立て不良による不具合の責任がとれないとか、ごちゃごちゃ言われた。
「だったら、指示書を出してくれよ。
俺 配達人になる前は、10年間土木建築業で働いていたし、現場監督も経験済みだから、指示書どおりに 正確に組み立てて、据え付けることぐらいできるぜ」
「その場合は 書類一式の購入費を先払いでお願いします!」
ということで いったん、その話は保留となった。
◇
俺は レインにこの話をした。
レインは隣人の アラン・ラッド・パッドに意見を求めた。
「うさんくさいな」
「まずは その業者の評判などを調べないと」
「これまで取引したことは?」
「ない」彼らの質問に俺は答えた。
「宣伝用のカタログを見て 注文したんだ」
「そのカタログはどこで手に入れたの?」レイン
「旅先で 偶然目にしたんだ」
俺は 注文を決めたカタログを見せた。
「うーん、写真はきれいだね」レイン
「だけど 製品仕様が一切書いてないぞ」アラン
「この写真が 自社製品だとも書いてない」パッド
「ただ きれいな写真を並べて、注文先の住所と振込先しか書いてないのは怪しい」アラン
「そうなのか?」俺
「この写真は 当然 この会社が作ったものではないのか?」
俺の質問にレインが答えてくれた。
「自社製品なら そのように明記してあるはず。
それを書いてないというのは、単なる『イメージ図』ってやつだよ。
受注詐欺でよくある手だよ」
「そんな まさか」
「そこが 詐欺師の付け目さ。
善良な人なら、写真を見て 当然掲載者が作ったものと思うだろう、
こっちは 単に写真を載せただけで、自社製品だとは一言も言ってない
ってないから だました訳じゃない、と主張するのだよ」アラン
「すでに 支払いは一部でもしたの?」パッド
「いや まったく。
商品を受け取りに行くから、とりあえずは 販売価格を教えてくれ
としか言ってない。」
「念のために 注文書の控えを見せてみろ」アラン
そこで 複写式問い合わせ控えを方を見せた。
「あー これなら たんなる問い合わせで、契約が成立していないから
いつでも 契約不成立として 無償でキャンセルできるな」アラン
レインとラッドも安心したようにうなづいた。
「これなら レイス兄さんに発注先選びを相談したほうがいい」アラン
「レイス兄さん?」
「一応 この町で長老格と言えば ロビンとメイジとレイスだから。
メイジは爺さん、ロビンは ロビン呼び希望だから、
レイスは レイス兄さんと呼んでいる。
だって レイスもメイジも固有名を名乗らず、種族名をそのまま自分の名前にしちゃってるからさ」パッドが説明してくれた。
「なるほど。」少し怪訝に思いながらも相槌をうった。
するとレインが補足してくれた。
「ほら 種族名だけで呼ぶよりも、爺さんとか兄さんとか付け足した方が、親しい感じが増すからって理由で この村では みんなそう呼ぶことにしているらしい。
僕も 最初は戸惑ったけど 今はもう慣れたよ」
「なるほどねぇ」と俺
「問題は あの二人に用事があるときは ロビンを通す必要があるってことだな」パッド
「なぜ?」
「メイジは気むづかしいし、レイスをみつけることもむつかしいから」ラッド
「君たちふたりは 仕事柄、町に行けばとロビンと朝礼するだろ。
その時に 聞いてみればいい」アラン
街に出勤したときには、一応町長室に顔を出すことになっている。
そこで 新しい指示がないか確認したり、連絡事項を書いた書類を受け取ったりする。それを指して、アランたちは「朝礼」と呼んでいるんだ。
「いいのかな? そういう私的なことを話しても」
「この町の住人の外部とのかかわりについて把握しておくのも町長の仕事だ」アラン
「だから 誰も 町長をやりたがらないんだよ、面倒だから」
身も蓋もないことを言ったのは パッドだ。
「おいおい」アランがパッドをたしなめながら補足説明してくれた。
「メイジもレイスも評議員だから、町長からの連絡を受けて調査・確認に動くことが多い。
町長は 時々交代するけど、メイジとレイスは ずっと評議員を続けているから、最初の報告や相談は、窓口係の町長にもっていって、メイジやレイスを煩わせないのが良い」アラン
「お、さすが 町長代理経験者!」ラッドがちゃかした。
「町長代理経験者?」
「一時的にね、レインがこの町に引っ越してくる前の一時期、町長役をやっていた。」アラン
「そうか アランも うんと偉い人の一人だったんだな」俺
「この町や村では 役職は 能力に応じて回り持ちなんだ」ラッド
「だから 特別偉いというわけではない。
有能でなくては 勤まらない役職ではあるけれど。」パッド
◇
などと 脱線しまくったが、彼らの忠告にもとづき
俺は ロビンに相談することにした。
するとロビンは言った。
「なにも 外部に注文しなくても、オオカミ村の材木を使って オオカミ村のみんなに手伝ってもらって 本棚を据え付ければいいじゃないか。」
「えっ!?」
「基本的に この町に所属する村は 自給自足だよ。
完全にという訳ではないけど おおむね自給自足
まして オオカミ村の連中は 森の木々を育て 伐採し 材木に加工したり
この町全体の建築とか補修に力を貸してくれているんだから。
村長のアランに相談してご覧」
ロビンの言葉に驚いた。
(そんなこと 聞いてない)




