↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある街  作者: 木苺
オオカミ獣人の一家
PR
21/39

先祖返りの子供

私、レインは オオカミ獣人や人間達が雑居している町で育った。


そして テレパシーを持つ オオカミ獣人の女の子と結婚した。


 彼女の名前はミオ。


 彼女のことを思うだけで 胸が高鳴る。


 偶然 図書館で「ミオよ 私のミオ」という本のタイトルを見ただけでぼぉっとなった。


男は ほんとに好きな子と結ばれたときは、無敵な気持ちになるもんだって先輩から聞いてたけど、ほんとだなって思った。婚約したときに、


◇


妻が妊娠した。


妻の体つきがどんどん変わっていく。


腹だけでなく 胸までどんどん大きくなっていくんだ!

 すごいなぁ、


◇


子供が生まれた。


真っ黒な毛の完全なオオカミ形態の赤ん坊だった!

 ウァオ!


ダニーと名付けた。


◇


学校では「飼育の時間」というのがあって、

オオカミ獣人の子は、「子犬を育てて番《つが》わせて、生まれた子犬も育てる」という体験学習をした。 


そのことを通して 獣人と、普通の動物との違いや あるいは共通点を知った。


さらに、今の時代の獣人はみんなモン族と人族のミックスだから、

もし 将来 自分や身内に 先祖返りで100%動物形態のモン族の血が強く出た赤ん坊が産まれても、あわてず落ち着いて育てる方法、

についても学んだ。


だけど まさか 我が子が、100%オオカミ形態で産まれてくるとは 夢にも思わなかった。


◇


だから まあ 落ち着いて 子育て開始をしたのだけど・・

 何分にも 初めてのことばっかりだったから 緊張したー。


  ていうか 知識はあっても、大切な我が子に嫌な思いをさせたくないと思うと

  「失敗はできない!」って気持ちが高まって ドキドキしたよ。


◇


かみさんの希望もあって、最初は 哺乳瓶を使って授乳することにした。


瓶の中身は かみさんの母乳だけど。

 (乳を搾っている姿を見て ドキドキしたのはないしょ。)


だけど 思った以上に赤ん坊は くっつき虫だった。

最初のうちは母親にべったりで、 かみさんが哺乳瓶の準備に離れようとすると嫌がるんだ。

(人工乳なら 母親以外の人間が準備できるんだけど、母乳を絞る時は 母親じゃなきゃだめだろ)


「パパだよ パパだよ」と声とテレパシーで呼びかけてだっこしても 母を求めて僕には冷たい><


しかし 1週間もすると だいぶ落ち着いてきて、かみさんのかわりに僕がだっこしたら ちゃんと僕に体をくっつけてくれるようになった。♬


でも ママがいたら やっぱり ママのほうがいいらしい。


◇


ダニーは 最初から テレパシーが使えた。

 空腹! とか しっこ! とか でた!とか


 もちろん 最初は生理的欲求として伝わってくるので、言葉ではなかったけど

 それに対して こっちが 「おなか減ったの?」とか「しっこだね」とかって 言葉で応じながら世話をしてやると 1週間もすると テレパシーに言葉を載せて伝えてくるようになった。 

   かしこい!


だから おむつを使ったのは初日だけ。

次の日からは ダニーの呼びかけに答えて抱き上げて 犬用のトイレシートの上にのせてやれば そこで用を足すように!

 すごい!


2週目くらいになると、自分でそこまで行って、用を足したら「出た」とテレパシーで知らせてくるようになった。

 かしこい! えらい!


10日もすれば 四つ足で踏ん張れるようになったので、

トイレシートの上にお丸を置いて、その上をまたぐように立たせてやっていたんだ。


◇


1か月ほどで 4本足で歩きだし、歯も生えてきたので離乳食開始。

離乳食は オオカミ獣人の幼児用の標準的なものを作った。


すごく賢い子で、テレパシーを使って 「おはよう」とか「お休み」とか きちんとしたあいさつことばで おしゃべりをするんだ! ほんとすごい!


だけど あいかわらず 両親のどちらかと 肌が触れ合うくらいの近さでいることを求めるんだ。


◇


この子が 産まれてから あわてて 僕も1年間の育休を申請して、夫婦で子育てに励んて来たけど、

さすがに 24時間べったり毎日 子供と一緒に暮らすのはそろそろ 精神的にきつくなってきた。


しかも この子のテレパシー感知範囲が意外と広くって

隣の部屋で溜息ついていても そういう心情に気付かれてしまう><


ことばにならなくても(だいじょうぶ?どうしたの?)みたいな、こちらを気遣うような ちょっぴり不安そうな感情が伝わってくるんだ。


◇


テレパシー持ちの一族では、生まれたての赤ん坊のデリケートな心情、親の気持ちとダイレクトにつながっているような状態への対策として、

親族が交代で 赤ん坊の世話をして、子供の関心対象を両親+お世話係に増やすことにより、

親が 特に産後の回復期の母親が 精神的に休養が取れる時間を毎日持つことができるように配慮することになっている。

 そして 家事応援隊も稼働させる。


だけど うちの子の場合、完全オオカミ形態で産まれてきたものだから、

ミオの姉(念話しかできない)の夫(念話のみ)の父親(念話もテレパシーも無し)が、

「犬は 雌犬に育てさせればいい」なんて暴言を吐いたこともあって

ミオの実家とは絶縁した。


一応 ミオの父は微弱なテレパシー持ち、母は普通のテレパスではあったのだけど、

ミオの姉もその配偶者一家もテレパシー無しの人達だったから

浅い付き合いしかなかったのだが、ミオの姉の義父の暴言がきっかけで付き合いを断つことになった。

 ちなみに テレパシーというのは 言葉を使わずとも概念・感情と言った気持ちが伝わる状態

 念話というのは あくまでも本人が伝えたいと考える言葉だけが無言で飛んでくる状態ね。


 だから テレパシー無しの念話のみの人って、相手の対する悪意を自分は言葉にしないから伝わらないだろうと思って 念話を飛ばしつつ、自分の相手に対する悪感情をバシバシぶつけてくる(平気で放射し続ける)から、テレパシー持ちにとっては 付き合いにくいというか しんどい存在なんだ。

 相手は あくまでも 「ことば」にしてないから 「自分は悪意を持ってません!=疑うあんたが悪い!」と主張するから><


大人なら 「しかたないなぁ テレパシー無しの念話持ちだから」で 必要な時にはやり過ごすけど

赤ん坊~成長期の子供を、大人の醜い感情や葛藤にさらすのも、

自分の悪意を隠そうともせず放射して相手を傷つけているのに、自分はそんなことしてないと大真面目で主張している存在に触れさせるのも

子供を混乱させ、こどもに、心をえぐるような傷を与えることだから、よくない。


 まして身内だと 特にダイレクトにそういう感情が流れ込んでくるリスク増大だから 厄介なんだ。


◇


病院で出産したので、ダニーが先祖返りだということは 公になっていた。

そのうえ、ミオの姉の義父の心無い言動の数々で、

僕たち一家について、ちょっと 微妙な雰囲気が 地域に広がってしまった。

 好奇心と 偏見と・・


そういう 家の外の雰囲気から 僕たち夫婦とダニーを守ってくれたのが、

僕の両親と ミオのおかあさん。


だから 子育てに関する直接的な援助を得ることはできなかったけど、

僕たち夫婦が 育児に専念できるように 側面的援助は しっかりとしてもらえたと思う。

 買い物代行とか・・洗濯物を持ち帰って選択済みのものを持ってきてくれるとか。

 無遠慮な訪問者を 門のところでおっぱらってくれるとか。


 僕の突然の育休申請が 職場ですんなり受理されたのも、両親が「内祝い」として上司に付け届けしておいてくれたおかげだし。


「出産祝い」と称して 失礼な連中が押しかけてこないように防波堤となったのが、ミオのお母さん。彼女が頑張って無神経な人達(つまりミオの姉の配偶者一族)を寄せ付けないようにしてくれた。

 このことには非常に感謝している。 表立っては 彼女とも連絡が取れないけど。


そういう意味では、僕たち一家は恵まれていたんだと思う。

 それでも 直接的なお世話の手が足りない><と 泣きたくなったことはあった。


◇


だけど 子供の成長は速い!


特にダニーの発育は 速かった!


生後1か月で4本足で歩き出したダニーは 毎日 家の中を探検して廻り

翌週には 家の外に出たがった。


庭を走り回っていると、道行く人から声がかかる。

「おや オタク 赤ん坊が生まれたのではなくて 犬の子を飼い始めたのね!」とか。


まったくろくでもない!

面識のない人が わざわざうちの様子を見に来て なんということを言うのだ!


妻は将来を悲観して泣きだした。


◇


それで、一族のつてをたぐって、引っ越すことにした。

 「ある町」へ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。