ロビンと名乗ったバンパイア
「人に問うなら まず名乗れ」 わしは音声に念話を載せて呼びかけた。
男は 驚いた表情と共に 体を起こした。
そして ベッドに横座りして 周囲を見回した。
その間に レイスはスッと姿を消した。
「私はロビン。
君は何者?
どこにいるの?」
わしはゆっくりと 物影から出た。
「ここにいる」
ロビンは 私の方に向き直った。
そして わしをしげしげと眺めて言った。
「ねえ 君はだれ?
どこから来たの?」
「わしはメイジ。
おまえこそ、ここで何をしている?」
男は じっとわしを見ながら言った。
「今から ポケットの中のものを取り出すけど、攻撃しないでほしい」
そして 上着の切れ目から、平たいものを取り出し、それを開いた。
そして 唇をつぼめ、首を振ってわしの顔を見た。
「僕は 驚いた時に 口笛を吹くことがあるんだ。
でも 口笛を使って仲間と連絡を取り合う部族があることを思い出して口笛を吹くのをやめた。
僕は 平和主義なんでね」とロビン。
「なるほど ずいぶんと慎重な性格をしているようだ。
では聞くが、なぜ私わしを他部族だと判断したのだ?」
「だって 僕の知っている世界では、君のような外見の人はいないもの。
それに 今まで聞いたことものない言葉を話している。
そして 音声言語と共に 頭の中に語り掛け、僕の言葉の意味も読み取っているということは 念話を使っているということだろ?」ロビン
「なるほど」メイジ
「一つ提案なんだけど、こっから先は 質問には誠実に答える、
質問は 互いにひとつづつ、相手の質問に答えてから自分の問も発するということにしないか?
それから さっきから上空で姿を消している君、
姿を現したまえ!」
ロビンは柔らかい口調ながらも、きっぱりと言った。
わしはレイスに向かって 姿を現すように念話を送った。
◇
レイスは 男の頭上で姿を現すと スッと移動して、わしが常時発動しまとっている個人結界の中に収まった。
ロビンは 目を見開き「レイス・・なのか?」とつぶやいた。
「だったら どうだというのだ?」レイスは男に念話を送る。
「質問に答えず 質問で返すのは良くないよ」ロビン
「警戒心バリバリのくせによく言うよ」レイス
とまあ こんな具合に互いに腹の探り合いを続けたのだが、
結局のところ腹を割って情報交換することにした。
「まずは お前の種族を教えろ」 レイス
ロビンは ためらいがちに口を開いた。
「僕は バンパイア。だが 吸血はしない」
「バンパイアという種族名は初めて聞いた。
血を吸うバンパイアもいるのか?」レイス
「えっ バンパイアが居ないのか? この世界には!」ロビン
「では お前はバンパイアの国から来たのか?」メイジ
「僕の祖先は バンパイアの世界から、人間の世界に移動したらしい。
人間の世界に着いた初代バンパイアは、人間の血を吸って仲間となるバンパイアの数を増やしたらしい。
人間の寿命は短い。
バンパイアになれば 寿命が尽きることはない。
ひどいケガで命をおとすことはあるが。
それゆえ バンパイアになりたがる人間が、ほかの人間を襲って血を飲むようになり、人間社会が混乱し、バンパイア狩りがはじまった。
その後 本物のバンパイアたちは 吸血により人間を仲間にすることをやめた。
そして 人間社会に溶け込み、人間達からパンパイアと気づかれぬように暮らすことにした。
僕は 人間からバンパイアに変化した最後の世代だと思う。」
「バンパイアたちが 自分達の世界に戻らず、人間の世界に残ったのはなぜだ?」メイジ
「わからない。
その辺のことを、僕は知らされていない。
僕がバンパイアにされたときには、すでにバンパイアたちは 人間社会の中でバラバラに暮らしていたから。
僕をバンパイアにした人以外のバンパイアに会ったことはないんだ。
それに 僕をバンパイアにした人は、ある日 別れを告げて出て行ってそれっきりだよ。」
「じゃあ 食事のために 血を飲むわけじゃないんだね?」レイス
「うん。僕は 普通に人間の食事をとるよ。
バンパイアになったおかげで 食事をとらずに休眠することもできるようになったけど。」




