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【連載版】乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第一章 恋するエグゼクティブ(前編)

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第九話 勉強会イベント、開始早々バグりました!?

本来の主人公・サクラが生徒会へ加わり、『恋エグ』のメインシナリオはいよいよ本格始動――。

……の、はずだった。


放課後の生徒会室。

私は書類を整理しながら、開発者時代の記憶を総動員して今後の展開を思い返していた。

(次は、定期考査イベントだよね。)


恋愛シミュレーション『恋エグ』において、定期考査は重要なイベントの一つだ。

プレイヤーは攻略対象の中から二人を選び、一緒に勉強会を行う。

親密度を上げたり、個別ルートの伏線を回収したり。

選択肢次第で、その後の展開が大きく変わる。

(そしてここから、本格的にサクラちゃん無双が始まるんだよね!)

私は微笑ましい気持ちで視線を向けた。

すると――。


「律くん、絢さん! よかったら一緒に勉強しませんか?」

サクラが勇気を振り絞るように声をかけていた。

「お菓子も作ってきたんです! 休憩の時にでも――」


「……それよりさ。」

律はサクラではなく、なぜか私を指差した。

「玲って本当にすごいんだよ。あんたクラスメイトなんでしょ?」

「え?」

「授業中ってどんな感じ? 友達多い?」

「いや、その……。」

戸惑うサクラ。

「もっと教えてよ?」

律の瞳はきらきら輝いていた。

ただし、向いている先は玲である。

(違う違う違う!! そこはヒロインとの会話イベントだから!! なんでヒロインじゃなくて私の情報収集してるの!?)


その隣。

「絢さん、お菓子どうですか?」

「……今、勉強に集中したいので。」

ぱらり。

教科書のページがめくられる。

「静かにしていただけますか?」

「……は、はい。」

サクラの肩がぴくりと震えた。

手の中のクッキーの包みをぎゅっと握る。

しゅん、と小さく肩を落とした。

今日もまた、主人公の恋愛フラグは音を立てて折れていた。


一方――。

(……いや、人のこと考えてる場合じゃないな。)

如月玲は完璧超人。

文武両道。成績優秀。非の打ち所がない生徒会長。

――しかし。

中身はゲーム開発オタクである。

(万が一赤点なんて取ったら大惨事だよ!? 如月玲ブランドに傷がつく!!)

それだけは避けなければならない。

(せっかくだし、誰か誘って勉強会しよう!)

過去問を持っていそうな人物。

三年生。

面倒見も良さそう。

(……よし。)

私は勢いよく立ち上がった。

「ねぇ、烈!」

「ん?」


「俺と付き合ってほしいんだけど!」


――しん。

空気が止まった。


「……は?」

烈が目を丸くする。

豪の口は半開きになり。

律は瞬きを忘れ。

絢の笑顔が固まり。

冴がゆっくりと本から顔を上げた。

そして――。

「ふぇぇっ!?」

サクラが顔を真っ赤にして口元を押さえる。

一斉に騒ぎ出す生徒会室。


一人だけ、私はきょとんとしていた。

「三年生だし、過去問も持ってるでしょ? 烈の部屋で一緒に勉強会できたらいいなぁって。」

「……おい。」

ぴくり。

烈のこめかみが引きつった。

「それを先に言えよ!!」

顔を真っ赤にして叫ぶ。

「なんで最初に『付き合ってほしい』なんだよ!!」

「え、だって勉強会――」

「普通そうはならねぇだろ!!」

大きくため息を吐く。

そして、乱暴に金髪をかき上げた。

「……チッ。紛らわしいこと言いやがって。」

けれど、口元にはいつもの不敵な笑み。

「まあいい。付き合ってやるよ。」

にやり、と八重歯を覗かせる。

「俺の部屋で二人きり、みっちり教え込んでやるからな?」


「ダメ!」

 律が立ち上がった。

「玲は俺が教える!」


「おい! 二人きりは危険だろ!」

 豪も慌てて声を上げる。

「俺も行く!」


「ふふ。僕もお手伝いできますよ?」

「……私も参加する。参考書を持ってこよう。」

「わ、私も参加させてくださいっ!」

全員集合。

私はぱっと顔を輝かせた。

「おお! じゃあ生徒会室でみんなで勉強会しようか!」

「……チッ」

烈が露骨に舌打ちする。

「「「「…………」」」」

残る四人も無言。

どうすれば玲の隣を確保できるか。

二人きりになれる時間を作れるか。

静かな火花が散っていた。

しかし、当の本人はそんな攻防など露ほども知らない。

(推したちと勉強会!! 勉強してる推しが見放題!? なにこの神イベント!! 贅沢すぎるっ!!)

頬を緩める玲。


――その頃。

サクラは、机の隅でクッキーの包みを抱えたまま小さく首を傾げていた。

「……あれ?」

ぱちぱちと瞬きを繰り返す。

「やっぱり……みんな、玲会長ばっかり見てる。」

誰にも聞こえない小さな呟き。


こうして、本来なら主人公・サクラを中心に進むはずだった定期考査イベントは――

開始からわずか五分で、盛大にバグったのだった。

【恋エグ攻略メモ】


▶白砂律:45/100(玲の隣は自分の場所)

▶鬼塚烈:42/100(二人きりを逃して不機嫌)

▶黒崎冴:41/100(烈への危機感が強まる)

▶神城豪:41/100(守りたい気持ちが育つ)

▶千早絢:40/100(静かな独占欲が成長中)

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