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【合本版】乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
番外編②

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律End アフターストーリーSS『君がくれたセカイ』

このセカイは、退屈だった。

人は、だいたい俺の予想通りに動く。

褒めれば喜ぶし、困らせれば慌てる。

少し観察すれば、次にどんな反応をするのかなんて、だいたい分かった。

だから、人間にはあまり興味がなかった。

唯一、俺の退屈を紛らわせてくれるもの……それがゲームだった。

ゲームにはルールがある。攻略法がある。

知識と技術があれば、結果を変えられる。

何より――自分の知らないことを見つけたときは、純粋に面白い。


そんな俺の日常が変わったのは――

あの日、君が生徒会室の扉を開けた瞬間(とき)だった。


◇


その日、俺はいつものようにソファーに寝転んでゲームをしていた。

だから、当然「いつまでゲームしている。だらしがないぞ!」と言われると思っていた。

それなのに玲は、「律、生徒会室に来て偉い!」と、俺を褒めた。

(ん? 今なんて言った?)

きっと俺はぽかんとしていたと思う。

それくらい、その一言は衝撃だったから。

普通なら怒るところなのに、褒めた。

しかも、本気で嬉しそうに――。

「……変なの。」


そのあと、ゲーム勝負をする話になり放課後に一人、玲を待った。

(本気かな? 玲が俺とゲーム勝負をしたいなんて……。)

勝ったら一つ言うことを聞くルール。

だからきっと玲は、『真面目に生徒会で仕事をするように』って言うつもりなんだろう。

(そんな思い通りにはいかないから。俺が勝って、堂々とサボる権利をもらっちゃうもんね。)

しかし、結果はあっさり負けた。

負けたのに、悔しいのに、楽しかった……。

ふつふつと心の底から湧いてくる、この感情は何だろう?

『今日みたいにこれからもお話したり、ゲームを一緒にしてくれる?』

それが、玲の願い事だった。

「あの時だな……完全に心を持っていかれたのは……。」


◇


それから――玲は俺の予想を、何度も裏切っていった。

「律、このゲーム知ってる? 勝負しよう?」

「えっ……玲、今の裏技……何?」

「えっ? えっとー、これは……」

「……。」

「……企業秘密?」

「なにか隠してる! ずるい!」

「隠してないって〜〜。」

玲は慌てて目を逸らす。

そんなやり取りが楽しかった。

「玲ってさ。本当に変だよね。」

「えっ、ひどい!」

「褒めてるんだよ。」

「どこが!?」

「だって、俺が知らないことを知ってるから。」

もっと玲のことを知りたくなった。

この人は何を考えているんだろう。

どうして、こんなに俺を振り回すんだろう。

気づけば、俺の中で玲は「一緒にいたい人」に変わっていた。


◇


「律〜、待った?」

待ち合わせの時計台。

予定時刻の五分前に、先程まで思いを巡らせていた人が目の前にやってきた。

恋人同士になってから、今日が初めてのデート。

デートと言っても、やることはいつもと同じゲーセン巡りなんだけど。


「じゃあ、今日はゲーセンのはしごしようよ!」

「いいよ。」

「私、新作のガチャとか気になるのがいっぱいあるんだ!」

嬉しそうな玲を見て、俺も笑った。

「じゃあ、駅前のゲーセン行こうか。」

「あそこ?」

「うん。このくらいの時間に新作が入荷するから。」

「えっ!?」

玲の目がきらきら輝く。

その反応が嬉しくて、律は少し得意げに胸を張った。

「敵を攻略するためには、敵を知ること。情報は武器だよ?」

「うっ……!」

玲が胸を押さえる。

「律、かっこいい!!」

「惚れ直した?」

冗談半分で聞いた。

「うん……惚れ直した!」


……そういうところ、本当にずるい。

玲は何でもない顔で、とんでもないことを言う。

だけど、ぱっと花を咲かせたようなその笑顔が、俺は大好きだ。

だから、俺はこの笑顔を守るための頭脳になりたい。

豪のように、力があるわけじゃない。

絢のように、人脈や交渉力があるわけでもない。

でも俺には、情報を集める力がある。

プログラムを組む力も、セキュリティを見抜く力もある。

それなら――俺にしかできない方法で、玲を守ればいい。

玲に会って初めて、自分の才能を、自分以外の誰かのために使いたいと思った。


「早く早く!」

玲が俺の手を引っ張る。

「新作がなくなっちゃう!」

「大丈夫だって。なくなったってネットで取り寄せれば――」

「それはダメ!」

玲は少しだけ頬を赤くして振り返った。

「だって、せっかくの初デートだよ? ……思い出に残したいじゃん。」

胸が、きゅっとなった。

玲も、今日を特別な日だと思ってくれていたんだ。

いつものお出かけくらいに思っているのだと思っていたのに。

「……玲。」

「な、なに?」

気づけば、俺は玲を抱きしめていた。

「えっ!? 律!?」

「玲、そんなこと言うのずるい。俺、我慢してたのに……。」

身長差で、どうしても俺の方が玲の胸に顔をうずめる形になるのがちょっとかっこ悪いけど……。

でも、俺知ってるんだ……玲がこの顔に弱いってこと。

俺は上目遣いに玲を見た。

案の定、玲の肩がピクリと震える。

「え? 我慢って……何をっ!?」

慌てる玲を見て、少し笑う。

本当に可愛い。

「……俺だって、今日を特別な日にしたいんだから。」

「律……。」

「だから、今はいっぱい遊んで、いっぱい笑って、いっぱい思い出作ろう?」

「うん。」

そう言うと、俺は玲の手を取って駅前へ駆け出した。


◇


ゲーセンを出た頃には、空が少しずつ夕暮れに染まり始めていた。

両手には袋いっぱいの景品。

「お目当てのガチャがあって良かったね。」

「ほんと! ちょうど補充してる所に出くわしてラッキーだった〜。」

「UFOキャッチャーの景品も大量!」

「ねっ! 大満足!!」


二人で歩く駅前の通りで、玲がふと周囲を見回した。

「この辺って、駅近くて便利だね。お店もいっぱいあるし。」

「そうだね。」

俺も周囲を見渡した。

(駅まで徒歩数分。コンビニもある。スーパーも近い。遊ぶところもある。)

……こういう場所なら。

(玲と一緒に住んだら、楽しいだろうな……。)

「律? どうしたの?」

「……ううん。ちょっと考え事。」

何でもないように笑う。

「玲〜、次はどこに行く?」

「うーん。じゃあ、ゲームミュージアム! 一度行ってみたかったんだよね〜。」

「歴代ゲームの展示とかしてるやつね? 行こうか?」

「やったぁー!!」


あの日まで、退屈だったセカイ――

でも、今は違う。

俺の隣には、世界で一番予測不能で、大切な人がいる。

次に何が起こるかなんて、分からない。

そんな未来が、今は楽しみで仕方ない。

俺のセカイは今、玲でいっぱいだ。


律End アフターストーリーSS『君がくれたセカイ』


Fin.

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