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【合本版】乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
番外編②

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番外編 〇〇しないと出られない部屋!?

「…………ん?」

如月玲が目を開けると、そこは見知らぬ空間だった。

窓も扉もなく、部屋と呼ぶのも躊躇(ためら)われる場所だ。

真っ白な壁に取り付けられているのは、異彩を放つ一枚の大きなモニターのみ。

「……なに、ここ?」

玲が立ち上がった瞬間、不意にモニターが明かりを灯した。


『ようこそ! 〇〇しないと出られない部屋へ』

『如月玲は、すべてのお題をクリアしないと、この部屋から出られません。』


「…………。」

数秒の沈黙のあと、玲はハッと我に返った。

「〇〇しないと出られない部屋!? なにその、同人誌御用達のいかがわしい部屋はっ!?」

魂のツッコミも虚しく、モニターは静寂の中で淡々と次の文章を表示していく。


◇


『第一のお題』

『白砂律を十秒間、見つめること』


「ん? 律……?」

次の瞬間、壁の一部がスライドするように開いた。

「玲?」

「律!?」

制服の上に萌え袖のカーディガンという、いつもの装いの白砂律がひょっこり姿を現した。

「ここは……?」

「私にも全然分からなくて……。」

玲がモニターを指差し、困惑気みに説明する。

「とにかく、このお題をクリアしないとここから出られないみたい。」

律は画面をじっと見つめると、小首を傾(かし)げた。

「ふーん。そんなに難しくなさそうだし、早速やってみよっか?」


向き合う二人。

「じゃあ、いくよ? せーの!」

掛け声とともに視線を交わす。

目の前にある琥珀色の瞳が、自分をまっすぐ映し出している。

――ダメだ。

意識すればするほど、居心地の悪さが募っていく。

全身を駆け巡るぞわぞわとした感覚に耐えかね、玲は途中で思い切り目を逸らしてしまった。


ブーーーーーー!!

部屋中に無機質なアラーム音が響き渡り、モニターにデカデカと『失敗』の文字が浮かぶ。

「分かってる! もう一回!」


ブーーーーーー!! 『失敗』

やっぱり同じように、途中で目を逸らしてしまう。


「ごめん律! 私、うまくできない……。」

あまりの恥ずかしさと申し訳なさで、玲は両手で顔を覆った。

そんな玲に対し、律はふわりと優しい笑みを浮かべる。

その表情はどことなく嬉しそうだ。

(だって、玲が俺を意識してくれてるってことだもん。)


「玲、いいこと思いついた!」

「えっ?」

声に引かれて顔を上げた玲に、律はニッコリと微笑んだ。

「このお題、『見つめ合う』じゃなくて『見つめる』って書いてあるよ!」

「ほんとだっ!!」

「俺は目を閉じてるから、玲は思う存分見つめてね!」

そう言うと、律はゆっくりと目を閉じた。

その姿をじっと見つめ始める玲。

(律って、睫毛(まつげ)が長いなぁ〜。こうやって見るとやっぱり可愛い。……なんかキスを待ってる顔みたい……って、危ない危ない! また視線を反らすところだった!)

ぐるぐると余計な思考が巡っていた、その時――。


ピンポーーーーーン!! 『成功』

モニターの表示が変わると同時に、パチッと目を開けた律と視線が間近でぶつかった。

ドキン! 玲の心臓が大きく跳ね上がる。

「もう、玲ってば……これだけで恥ずかしくなっちゃった?」

律が小さく首を傾げて、ふわりと楽しそうに笑った。


直後、壁から「律専用」と書かれた扉が出現した。

「じゃあね、玲。この後も頑張って!」

そう言うと、律はひらひらと手を振って部屋を出ていった。


◇


余韻に浸る暇もなく、モニターに次のお題が出される。


『第二のお題』

『神城豪に「好きだ」と言わせること。(ただし、自分がその言葉を使ってはいけない)』


「えーっ! 私は『好きだ』って言葉は使えないってことか……。どうしよう……。」

そんな事を考えていると、また壁の一部が開き、豪が部屋に入ってきた。

「ん? 如月? こんなところで何やってんだ?」

「私も分かんないんだけど、このお題をクリアしないと出られないみたい。」

玲がモニターを指さすと、豪は首を傾(かし)げる。

「ん? お題? 俺には何も見えねーけど。」

(そっか! 豪にはキーワードが見えてないんだ!)

「豪にね、ここから脱出するために、ある言葉を言ってもらいたいんだ。」

「おう、分かった!」


「えーと……豪って何の食べ物をよく食べる?」

「食べ物? カレーとかハンバーグとかかな?」

「オムライスは?」

「オムライスも嫌いじゃないぜ!」

……失敗。


「じゃあ、じゃあ! よくするスポーツ! サッカーとか……どう思う?」

「サッカーは、俺にとっては夢だな! もちろん選手になりたいって思って練習してるけど、現実的なことを考えるとスポーツトレーナーの資格も取って、将来長く役立てたいなって思ってる。」

「へぇー。豪って意外としっかり考えてるんだね!」

「意外とってなんだよ!」

思わず二人で笑い合う。

(あっ、いけない。お題忘れて普通に会話しちゃってた。)


「あ〜、もう! どうしたらいいんだろ〜〜?」

頭をくしゃくしゃとかき回している玲に、豪は思わず、ぷっと吹き出した。

「もう何やってんだよ、お前……。いつも綺麗に整えてる髪をくしゃくしゃにして……。」

呆れたように言いながらも、豪の目元が柔らかく緩む。

「でも、澄ましたお前より、そんな感情剥(む)き出しのお前の方が……俺は《《好き》》だけどな。」

その瞬間――。


ピンポーーーーーン!! 『成功』

モニターに大きな文字が表示される。


「えっえっ!?」

突然のことに驚きを隠せない二人。

「色々言いたいことはあるけど……とりあえず、お題クリアだぁ!!」

「えっ? 何? 結局、何だったんだ?」

よく意味が分かっていない豪を、玲は半ば強引に壁に現れた「豪専用」扉へと押し込む。

「ありがとう、豪! 詳しくはまた後で話すから!」

平静を装って扉を閉めたものの、不意打ちの「好き」という言葉に、玲の心拍数は上がりっぱなしだった。


◇


次に現れたのは絢だった。

「玲?」

不思議そうに辺りを見渡している。


『第三のお題』

『千早絢に「可愛い」と言わせること。(ただし、自分がその言葉を使ってはいけない)』


(うっ。これも恥ずかしいけど……。さっきよりは簡単にいけるかも!)

「絢! ここから脱出するために、言ってほしい言葉があるんだ! 協力してくれない?」

「もちろん、玲のためならいくらでも協力します。」


「えーっと、絢って何の動物が好き?」

「動物……ですか? それは玲も入りますか?」

「いやー、そういうのは無しで……。」

「そうですか……。それなら犬ですかね?」

「えっ? 意外! 絢はなんとなく猫派だと思ってた!」

「前はそうだったんですけど。玲を見てると、犬もいいなぁ〜って。」

「私を見て犬って……それは、どういうこと?」

「ふふっ。玲も犬も愛らしいということです。」

しれっと言う絢に、カッと赤面してしまう玲。

「もう、そんなふうに揶揄(からか)わないでよね?」

玲の照れ顔に、きゅんっと絢の心が疼(うず)く。

「玲こそ、そんな《《可愛い》》顔をするなんて反則ですよ? もういっそこのまま二人で閉じ込められても……」

その瞬間――。


ピンポーーーーーン!! 『成功』

と、野暮なアラーム音が絢の言葉をバッサリ遮った。

同時に「絢専用」と書かれた扉が壁から出現する。


「……もう終わりですか。残念です」

「と、とにかく出られて良かった。絢、ありがとう! また後でね!」


これでお題は三つクリア。

立て続けに萌えを供給され、玲の心臓は鳴りっぱなしだ。

「なんだろう? これ……。相当疲れるんですけど……。私、心臓持つかな?」


◇


次に壁から現れたのは、凌だ。

「あれ? 会長?」

「凌くん!」

「……なんだ、ここ?」

「……それが、全く分かんないんだよね。」


『第四のお題』

『黒崎凌にキスをすること。』


「うわーーー! 直接的なお題来ちゃったよ〜。どうしよう……。」

「な、なんだ!?」

突然頭を抱えて叫び出した玲に、凌は肩をビクッとさせる。

「うーん、うーん……キスキスキス……。」

「か、会長……どうした? ちょっと怖いんだけど。」

凌にはこのお題は見えてないらしい。

しばらく考えた結果、玲はあることを閃いた!

(きっと、これでお題はクリアできるはず!)


「凌くん! 受け取って!」

そう言うと、玲は唇に右手をそっと添え、チュッと音を立てて投げキスを凌に飛ばした。

「なっ……!?」

凌は金縛りにでも遭ったかのようにピシャリと身体を固まらせた。

数秒遅れて、見る見るうちに白皙(はくせき)の肌が耳の先まで真っ赤に染まっていく。


ピンポーーーーーン!! 『成功』

部屋に響くアラーム音。


「やったぁーー! 上手くいった!! ……って凌くん!?」

キャパオーバーを起こした凌は、湯気が立ちそうなほど真っ赤な顔のままフリーズしていた。

玲はひらひら手を振ってみたが、びくともしない。

仕方ないので、固まったままの凌の身体を「凌専用」扉へ強引に押し込んだ。

「ごめんね……。ありがとう、凌くん!」


それにしても、これらのお題は何なのか――。

(さっきからかなり恥ずかしい思いをさせられてるんだけど……心臓を試されてるのかなぁ?)


◇


そうこうしていると壁がまた開き、冴と烈が入ってきた。

「えっ? 二人!?」


『最終のお題』

『黒崎冴と鬼塚烈に抱かれること。』


「ぎゃーーー!! ついに来ちゃったよ!! こんな……しかもいきなり三人でとか無理だって!!」

玲は絶望のあまり両手を床について突っ伏した。

すると、二人はそっと玲の側に近づいた。

「玲、大丈夫だ。私たちに全て任せろ。」

「そうそう! 会長は力抜いて、そのまま俺らに身を委(ゆだ)ねてくれればいいから!」

冴と烈がそれぞれ玲の腕を取る。

「えっ!? ちょっと、何? まだ心の準備が……!!」


玲が思わず目を閉じると、身体がふわりと宙に浮いた。

「えっ!?」

目を開けると、どこか満足気な冴の整った顔と目が合った。

玲の顔が一気に熱くなる。

(私……今、冴先輩にお姫様抱っこされてる!?)


そのままストンと降ろされると、今度は烈に脇の下を支えられて高く持ち上げられた。

「うわっ!?」

「ははっ! 会長、高い高い〜!」

「ぎゃーー、やめてーーー!!」


そっか……「抱く=抱っこする」ってことか!

自分の勝手な勘違いに顔から火が出そうになりながらも、玲はほっと安堵(あんど)の溜息をつく。

烈から身体を降ろされると――


ピンポーーーーーン!! 『お題クリア』

モニターからファンファーレが鳴り響き、壁から『脱出口』という扉が現れた。


「玲、お疲れさま。お題クリアだ。」

「会長、出口はこっちだぜ。」

冴と烈に手を引かれながら、玲は白く光る扉をくぐった――。


◇


目を開けると、そこはいつもの生徒会室だった。

どうやら机に突っ伏して寝てしまっていたようだ。

ガバっと顔を上げると、そこには律、絢、豪、凌、サクラ、ソノが玲を気遣うように覗き込んでいた。


「あっ、起きた!」

「玲、かなりぐっすり眠っていたようですね。」

「あぁ、呼んでも全然起きなかったもんな!」

「でも、なんかモゴモゴ寝言言ってたような……。」

「なにか夢でも見てたんですか?」

律、絢、豪、凌、サクラがそれぞれ声をかけてくる。


「夢……? そっかぁ、夢か〜!!」

(確かに、よく考えれば色々とおかしな設定だったもんね。)

玲は先程の胸キュンな出来事を思い出して、頬を染めながらふふっと笑った。

「……その顔は、なんか良い夢でも見ましたね?」

ソノがジト目で探るような笑みを向けてくる。

ピクッと玲は肩を震わせたが、すぐに人差し指をすっと唇に添えた。

「ふふっ、なーいしょ!」


玲にとって、嬉し恥ずかしい――でも、とても幸せな秘密の夢だった。

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