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【連載版】乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第三章 恋するエグゼクティブ2※続編として同内容を公開中!

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第五十五話 修学旅行・京都編〜恋みくじと、迫るタイムリミット!?

修学旅行二日目――。

旅館で朝食を済ませた一行は、荷物をまとめて京都へ向けて出発した。

玲は窓ガラスにそっと額を預け、小さく息をつく。

昨日はしゃぎ過ぎたのか、身体の疲れが思った以上に残っていた。

(今朝はなかなか起きれなくて集合時間ギリギリ……みんなに迷惑かけちゃったな。しっかりしないと……。)

そう思うものの、バスの心地よい揺れに玲の瞼は少しずつ重くなっていく。

一時間ほど走ると、窓の外の景色が石畳の道や風情ある街並みへと変わってきた。


「玲、起きて? 京都に着いたみたいだよ。」

「……ん。」

玲はゆっくりと目を開ける。

隣では、律が心配そうにこちらを覗いていた。

「玲、昨日からずっと寝てる……。大丈夫?」

そういうと、律の顔が近づいて――

ピタッ、おでことおでこが触れ合った。

「んぅっ!?」

気を抜いていた所に律の突然のどアップを食らい、玲の心拍数が跳ね上がった。

「だ、大丈夫だからっ!!」

玲は慌てて飛び起きて、自分の胸を押さえる。

(急な推しのどアップ! 心臓に悪いよーー!)

「さっ! 早くみんなと合流しよっ!」

玲は、律の顔を見ることができない。

顔を真っ赤に染めて、ギクシャクとバスを降りた。


「今日は班別自由行動です!」

先生の号令とともに、生徒たちは一斉に散らばっていく。

玲、律、豪、絢、サクラの五人は、清水寺を訪れていた。

清水の舞台を吹き抜ける風が心地よい。

遠くには京都の町並みが広がり、瓦屋根が陽光を受けてきらめいていた。

京都を一望できる舞台には、多くの観光客が集まっている。

「すごーい、絶景ですね!」

サクラが感嘆の声を漏らす。

「おぉー! 高ぇ!」

豪は身を乗り出しながら景色を眺める。

「如月、こっちに来てみろよ!」

「えー? なになに?」

豪に近づいたその時、玲が足元の小石を踏んだ。

「わぁっ!?」

ぐらり、と身体が傾く。

「危ない、如月っ!」

豪が反射的に玲の腕を掴む。

「あ、危なかったぁ……。」

玲と豪は、顔を見合わせ冷や汗をかく。

「ご、ごめん、豪。……ありがとう。」

「いや、俺こそ……危ない目に合わせちまって、ごめん。」

改めて、二人は清水の舞台から下を覗く。

あまりの高さにゾッとした。

(これは……落ちたらひとたまりもないな。)

玲は心底ほっとして息を吐いた。


一同は、清水坂をくだりながら土産物屋を巡る。

八つ橋、抹茶クッキー、西陣織の和雑貨、清水焼の陶器――。

見るものが沢山あり過ぎて目移りしてしまう。

土産物を選んでいる玲の横に、絢がやってきた。

「玲、何か良い物はありましたか?」

「沢山あり過ぎて迷っちゃうよ。ソノちゃんには、和柄のしおりとか可愛いよね? 凌くんは……木刀とか?」

「ふふっ。木刀は修学旅行あるあるですね。でも玲、持って帰るのが大変ですよ?」

「確かに! じゃあ……。」

楽しそうに土産物を選んでいる玲を見て、絢は安堵の表情を浮かべた。

昨夜『みんなのこと、お願い――』と、自分を見上げてきた玲は、今にも儚く消えてしまいそうに見えたのだ。

(玲……。僕は必ず、あなたを側で支えますから。)


それぞれ土産物を選んだ一行は、清水寺近くにある地主神社へ来た。

境内は、修学旅行生や観光客で賑わっている。

「ここは、恋愛成就で有名な神社なんです!」

サクラが、嬉しそうにパンフレットを広げる。

「わぁ、恋みくじがありますよ! せっかくだし、みんなで引きませんかっ?」

サクラが目を輝かせる。

それぞれが恋みくじを手に取った。


まず最初に開いたのは豪。

『想い人との相性は抜群。 共に笑い、歩める――笑顔で溢れる関係を築けるでしょう。』

「おぉー!」

豪が嬉しそうに笑う。

(俺と如月の相性は、最高ってことだよな……?)


続いて絢が、静かに紙を開き目を細める。

『互いを尊び合い、共に成長する運命。焦らず歩めば、永く美しい縁となるでしょう。』

「……ふふ。」

絢は紙を丁寧に畳んだ。

(玲……あなたとなら、どんな未来でも――。)


次は律。

少し緊張しながら紙を開く。

『静と動。 違う二人だからこそ、互いを補い支え合える運命。唯一無二の存在となるでしょう。』

律は目を丸くした。思わず頬が熱くなる。

(俺と玲……のことだよね?)


サクラもそっと恋みくじを開く。

『幸せを願い合える二人。優しさが縁を結び、穏やかな未来を築くでしょう。』

「わぁ……。」

サクラは胸に手を当てた。

(幸せを願い合える……。私も玲先輩との幸せを願って……いいのかな?)


最後は玲が恋みくじを開いた。

『周囲から深く想われています。その想いに気付き応えた時、新たな未来が始まるでしょう。』

「!!」

玲は目を見開き、ゴクリと喉を鳴らす。

(これは、今の私の状況? 私は……みんなの想いに応えられるのかな?)


それぞれの想いが交錯する中、一行は恋みくじを引き終え、授与所へ向かった。

恋愛成就や学業成就、健康祈願など、色とりどりのお守りが所狭しと並んでいる。

(みんなはそれぞれ買うだろうから、お守りはソノちゃんと凌くんへのお土産にしよう!)

ソノには藤色の縁結びのお守り、凌には深緑の学業お守りを選んだ。

みんなもそれぞれ買えたようだ。

その時、玲の視界が一瞬白くなった。

身体が少し揺れる。

「玲!?」

「大丈夫ですかっ!?」

駆け寄ってくる四人。

「うん、ごめん。なんか立ちくらみがしちゃって……。」

「貧血ですかね? ちょっと休憩しましょうか?」


絢の提案で、一行は清水寺近くの風情ある甘味処へと足を運んだ。

暖簾をくぐると、ふわりと香ばしいほうじ茶の香りが漂う。

「わぁ……落ち着くお店ですね。」

サクラが嬉しそうに店内を見回す。

席へ案内されると、それぞれメニューを手に取って注文する。

ほどなくして、色とりどりの甘味が運ばれてきた。

艶やかなみたらし団子に、鮮やかな抹茶ソフト。

黒蜜が艶めくわらび餅に、ほうじ茶。

宝石のように色鮮やかな、抹茶あんみつ。

モチモチの白玉がトッピングされた、白玉ぜんざい。

そして、高く盛り付けられたデラックス抹茶パフェ。


「わぁ……!」

玲も元気を取り戻し、思わず声を上げた。

「すごい……! どれも美味しそう!」

「「「「「いただきます!」」」」」

五人の声が重なる。

「んーっ! 団子、うめぇ!」

豪は豪快に頬張り、満面の笑みを浮かべる。

「白玉、もちもちです!」

サクラも幸せそうに頬を緩めた。

絢はゆっくりと抹茶あんみつを口へ運び、穏やかに微笑む。

「上品な甘さですね。玲も一口どうですか?」

「えっ? いいの? じゃあ、こっちのデラックス抹茶パフェも食べてみて?」

絢と玲はお互いのスイーツをシェアする。

「はい、玲。」

律が、湯気の立つ湯呑みをそっと差し出す。

「ほうじ茶。甘い物ばかりだと喉が渇くから。」

「ありがとう。律!」

玲は湯呑みを受け取り、一口含む。

香ばしく優しい香りが口いっぱいに広がり、張り詰めていた心までゆっくりとほどけていく。

「……美味しい。」

嬉しそうに笑う玲を見て、四人の表情も自然と和らぐ。


しかし、気が緩んだその時――

カシャン、と玲がテーブルの上の水を溢した。

「わわっ、ごめん! みんな大丈夫?」

咄嗟におしぼりで拭く。

大きな被害はなかったものの、玲は大きなため息をついた。

(はぁ……。今日はずっと眠いし、なんだか身体に力が入んない。ずっと失敗ばかりしてるし……。)

しゅんと下を向く玲を見兼ねて、豪が額にデコピンを打った。

「痛ぁ〜〜。豪、何すんの!?」

玲は額を押さえ、涙目で豪を見る。

「体育祭の時の仕返しなっ!」

ニカッと、豪がイタズラな笑顔を向ける。

そして、ふっと真剣な表情に戻ると、

「お前には、どんな時でも笑っててほしいんだよ。」

豪は優しい眼差しで玲を見つめた。

他の三人も深く頷いている。

「そうそう。俺たちは――」

「玲がどんな未来を選んでも――」

「玲会長の幸せを願ってますからっ――」

四人の温かい眼差しに、心が揺さぶられる。

(みんな、ありがとう……。)

京都で過ごす穏やかな午後。


しかし――。

夕暮れの空に染まる、誰もいない生徒会室では異常を知らせるアラームが鳴っていた。

『▶修正プログラム進行率 68%』

『▶存在修正まで 残り24時間』


その異常に、まだ誰一人として気付いてはいない。

修学旅行最後の夜。

世界そのものが、玲を消す準備を始めていた――。

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