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乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第三章 恋するエグゼクティブ2※続編として同内容を公開中!

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第四十七話 秋休み、冴の帰省と凌の暗雲!?

体育祭から数日後――。

学園は短い秋休みに入り、生徒たちはどこか解放感に満ちた空気をまとっていた。

生徒会室でも体育祭の後片付けがひと段落し、穏やかな時間が流れている。

「ふぅ……。」

玲は椅子にもたれ、大きく息を吐いた。

(よかったぁ……。)

豪のバッドエンドは、無事に回避できた。

誰一人欠けることなく、みんなで最高の体育祭の思い出を作ることができた。

(あぁ、やっと平和が戻ってきた〜〜。)

玲が幸せそうに微笑んだ、その時だった。


コンコン――。

生徒会室の扉がノックされる。

「失礼する。」

聞き覚えのある低音。

扉を開けて現れた人物を見た瞬間、玲は勢いよく立ち上がった。

「冴先輩っ!!」

ダークブルーの髪に銀縁眼鏡。

相変わらず隙のない端正な顔立ち。

卒業した前生徒会長・黒崎冴(くろさきさえ)だった。


「玲、みんな……久しぶりだな。変わりないか?」

(うわぁ、久しぶりの冴先輩っ!? こ、心の準備がっ!!)

突然のラスボス登場に、玲は慌てふためく。

「冴先輩!! いつ帰ってきたんですか!? 言ってくれてたら色々準備したのに……。」

その言葉を聞いた冴は、生徒会室の隅でひっそりと息を潜めている、弟の凌を見た。

「……今日の朝の飛行機でな。大学の秋休みを利用して帰ってきたんだ。凌には言っていたんだが……。」

凌の肩がビクリと跳ねる。

「……あー、そうだったっけ……?」

「…………。」

生徒会室に、気まずい空気が流れる。

その空気を断ち切るように、絢が冴の前にコーヒーを運んできた。

「お久しぶりです、黒崎先輩。」

「あぁ……千早、ありがとう。お前も変わりなさそうだな?」

「はい。玲はもちろんですけど、凌くんもとてもよく頑張ってくれてますよ?」

「そうか……。」

冴はちらりと視線を凌に向ける。

しかし、凌は俯いたまま目を合わせない。


「ところで、冴先輩! 東京の大学はどうですか!? ちゃんとご飯食べてます!? 困ってることはありませんか!?」

久しぶりに会えた興奮から、玲は身を乗り出して矢継ぎ早に質問した。

「ふっ。質問攻めだな……。まぁ、まずは落ち着け。」

冴は笑うと、大きな手で玲の頭をポンポンと撫でる。

大人しく頭を撫でられる玲。

心なしか、嬉しそうな表情だ。


それを横目で見ていた凌の胸に、まるで針で刺されたような痛みが走る。

(なんだよ、これ……。)

冴と話してる玲の顔は、凌にはどこか甘えたように見えた。

(会長……、俺にはあんな顔しないくせに。)

こんな嫉妬めいたことを考えてしまう自分にも腹が立った。

(……分かってる。会長は、ただ久しぶりに会えたからはしゃいでるだけだって。でも……)

その場にいるのが苦しくなって、凌は何も言わずそっと部屋を出た。

(やっぱり、兄さんには敵わない……。)


その様子を、ソノは目で追っていた。

(マズイ……。これは……。)

ソノは慌てて玲の方を見た。

しかし、玲はまだ冴たちと談笑していてこちらに気付く気配がない。

(このままじゃ、凌くんのバッドエンドが発生してしまう!!)


そんなことを露も知らない玲は、

「冴先輩、土日って予定空いてますか!? せっかくだし、一緒に出かけませんか?」

「ああ。日曜日は空いているな。ちょうど調達したい物もあるし、一緒に買い物に行くか。」

「やったぁ〜!!」

冴とショッピングの約束を取り付けていた。


玲のはしゃぎっぷりを見ていた生徒会メンバーの反応はそれぞれだった。

「玲……嬉しそうだね。」

「久しぶりだから仕方ないですよ。」

苦笑する律と絢。

「如月、すげー嬉しそうだな!」

「はい! 玲会長の笑顔を見てると、こちらまで嬉しくなっちゃいますね!」

微笑ましく見守る豪とサクラ。

(神!! このままじゃマズイです!! 気がついてーー!!)

必死の形相でテレパシーを送るソノ。

しかしながら、時間は無情にも過ぎていき、下校時刻となった。


それぞれが身支度を整えて家路に就く。

その途中、ソノは玲を呼び止めた。

「玲先輩。」

「ソノちゃん?」

ソノは深刻な表情で玲を見つめた。

「また……バッドエンドが始まろうとしています。」

玲の目が驚愕で見開かれる。

「体育祭でやっと豪を救えたと思ったのに……。で、今度は誰?」

「……黒崎凌です。」

玲は息を呑んだ。

「凌くん……!?」

(そういえば、途中生徒会室からいなくなってたような……。)

ソノはゆっくり頷く。

「原因は、冴先輩の帰省と玲先輩です。」

「えっ!? 私と冴先輩!?」

「はい……。」

「それって……どういう……?」


ソノは自分の攻略知識を、惜しげもなく玲に披露した。

それによると、冴は『恋エグ1』の攻略対象なので、通常『2』は登場しなのだが、『1』の攻略データで好感度がカンストしている場合、特典として登場する仕様らしい。

「おおー!! ご褒美特典っ!! 『2』もプレイヤーに優しいところあるじゃん!!」

「そうなのですが……その分、兄の冴が登場することによって『主人公は自分より兄を見ている……』と凌が落ち込んでしまって……失踪エンドになってしまうんです……。」

「……何、その鬼仕様!? ご褒美なの!? 罠なの!?」

玲は憤慨しながら、考えを巡らせる。

「う〜〜〜ん、一体どうしたら…………。」

しばらく考えていた玲だったが、何かを思い付いたように顔を上げた。

「そうだ、これなら……!! ソノちゃんも力を貸して?」


秋風が木々を揺らした。

新たなバッドエンド回避作戦が、静かに幕を開けようとしていた――。

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