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乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第三章 恋するエグゼクティブ2※続編として同内容を公開中!

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第四十六話 体育祭開幕!! バッドエンドを吹き飛ばせ!!

体育祭当日――。

夏の青空が、どこまでも高く広がっていた。

校庭には色とりどりの旗が飾られ、各クラスのテントからは生徒たちの楽しそうな声が響いている。

一年に一度の大イベント。

学園中が、この日を待ちわびていた。


「いよいよ始まりましたね。」

本部テントで資料を確認しながら、絢が微笑む。

「三年生最後の体育祭か~……なんか、感慨深いね。」

律が校庭を眺めながら呟いた。

「まだ終わってないだろ?」

凌が淡々と返す。

そのまま、視線は無意識に隣の生徒会長に向けていた。

「……。」

凌は小さく目を細めた。

(……やっぱり、あの人は変だ。)

誰よりも楽しそうに、仲間を見て笑ってる。

(……兄さんが変わる理由も、少し分かる気がする。)

絢が横から意味ありげに微笑んだ。

「凌くんも……分かりやすくなりましたね。」

「!? ……何がだよ。」

「さあ?」

それを聞いていた律も楽しそうに笑った。


体育祭は、順調に進んでいった。

短距離走。騎馬戦。綱引き――

どの競技でも、観客席から歓声が上がり盛り上がりを見せていく。

次は、一年生の借り物競争。

スタート地点に立つ凌は、いつもの冷静な表情を保っていた。

合図と同時に走り出す。

凌は迷いなくカードを引いた。

そこに書かれていた文字は――

『一番気になる人』


「…………。」

凌は数秒間、完全に停止した。

顔が熱くなる。

自然と本部テントにいる玲を見る。

「……いや、違う!」

小さく首を振る。

(これは別に『好きな人』って意味じゃないから! 『気になる人』だから! あくまで『監視対象』だから……!)

凌は、自分の中で猛烈に言い訳をしながら走り出した。

視線の先――玲のいる場所へ。


「会長……一緒に走ってくれ。」

「凌くん?」

玲が首を傾げる。

凌は少しだけ視線を逸らした。

「だから……借り物競争……。」

だんだん声が小さくなっていく。

「うん。いいよ!」

玲は笑顔で頷いた。

(お題……『生徒会長』だったのかな?)

凌の心臓が跳ねる。

「……っ。」

固まっている凌の手を取り、玲は走り出した。

「さぁ、急ごう!」

二人はそのまま手を握り、ゴールテープを切った。


その様子を見ていたソノは、頭を抱えていた。

隣にいる攻略対象たちの顔が怖くて……まともに見れない。

(神……またもや『借り物競争で手つなぎラン』のスチルを発生させてます。)

ソノは深いため息を吐いた。

「……まあ、気づいてないんでしょうね。」


そして、次は応援団――。

そこに現れたのは、チア衣装に身を包んだサクラとソノだった。

玲が目を見開く。

(うわぁ~~、可愛い~~!! 目の保養だよぉ!!)

「みんなー! 頑張ってくださいっ!」

サクラはいつもの天使のような笑顔で、ポンポンを振る。

その瞬間、会場の空気が変わった。

「かわいい……。」

「天使……?」

ソノも隣で顔を真っ赤にしながら、ぎこちなく踊る。

「な、なんで私まで……。」

「ソノちゃーん、似合ってるよー!」

玲が声をかける。

(やめてーーー!! 神ぃぃーーー!!)

ソノの照れながらの演技も――

「このギャップが可愛い……。」

「弄りたくなる可愛さ……。」

と、好評を博し新たなファンを増やすのだった。


最終種目は、今回の体育祭の目玉――

姉妹校との学校選抜対抗リレー。

会場の熱気は、最高潮に達していた。

代表選手がスタートラインに並ぶ。

その中に、玲と豪の姿があった。

豪の表情(かお)は、緊張で強張っている。

それを察した玲が、ポンと豪の肩に手を置いた。

「……大丈夫。私たちならやれるよ。」

「ああ。」

豪は短く息を吐いた。


不良たちはあの日、生徒会によって学校側へ報告され、社会的な処分を受けることになった。

脅威は去ったはずだった――。

でも、豪だけはまだその不安を払拭できずにいた。

(もし、また如月が狙われるようなことがあったら……。)


「位置について! よーい!」

パンッ! 

ピストルの音で、選手たちが一斉にスタートする。

第一走者が走り出した。

「行けーー!!」

観客席から声援が飛ぶ。

バトンは次々と繋がっていく。

そして、第三走者の玲へ――二番手でバトンを渡された。

「玲!」

豪が叫ぶ。

「任せて!」

玲は笑って、風を切った。

黒髪が揺れ、汗が煌めきながら飛び散る。

観客席がざわめく。

「速っ!?」

「それに、なんか……美しい。」

みんなが玲の走る姿に見惚れた。

豪も、その姿に釘付けになっていた。

(やっぱり……あいつはすごいな。見る者すべての視線をこんなにも奪ってしまう。)


その時、玲がバトンゾーンへ入る。

「豪!」

差し出されるバトン。

「ごめん! 抜かせなかった……。あと、お願い!」

豪は手を伸ばし、バトンを受け取った。

玲の気持ちに全力で応えたい!! でも――

『大好きな生徒会長様が、どうなるか分からねえぞ』

頭の中に、あの言葉が蘇った。

「……っ。」

足がすくむ。

もし、自分が勝ったことでまた誰かが玲を傷つけようとしたら――。

豪の足から力が抜けた。

観客がざわめく。

いつもの豪なら、絶対にありえない光景。


「豪!?」

その瞬間、玲は本部テントへ走り出していた。

そして、実況用マイクを掴んだ。

「え!? 会長!?」

スタッフが驚くのを尻目に、玲はマイクのスイッチを入れた。

『豪ーーーーーー!!』

校庭中のスピーカーから玲の声が響き渡った。

『全力で走ってーーーーーー!!』

突然の出来事に、観客席も、選手たちも、教師たちも、一瞬だけ動きを止めた。

玲はマイクを握りしめ、胸いっぱいに息を吸い込んだ。

そして――


『私は……豪が本気で走って、誰よりもかっこいい姿が見たいんだーーーー!!』


校庭が静まり返った。

次の瞬間。

「え?」

「今……なんて?」

「公開告白……?」

あちらこちらから、小さなどよめきが広がっていく。

もちろん玲本人は、そんなことに全く気にも留めない。

ただ、目の前の大切な仲間を見ていた。


『豪! あなたは誰かを守るために、自分を犠牲にしなくていい! 豪は豪のままで、思いっきり走って!!』


その言葉が、豪の胸に届いた。

豪はゆっくり顔を上げた。

スタンドには、玲がいた。

必死な顔で、 まっすぐ自分だけを見ている。

その姿を見た瞬間――

曇っていた豪の瞳に、太陽のような光が戻った。

もう迷いはなかった。

バトンを強く握り直す。

「……おうっ!!!!」

地響きのような声が、競技場を震わせた。

豪が走り出す。

爆発的な加速。

一歩、二歩、三歩――

その速度は、さっきまでとは別人だった。

「速い……!」

「追いついた!?」

先行していた走者を、圧倒的な速度で抜いていく。

豪は、ただ前だけを見ていた。

もう怖くない。迷わない。

大切な仲間と、笑って未来へ進むために――走る。

最後のカーブを曲がる。そして――

豪は胸でゴールテープを切った。


『一位ーーーーっ!!』


アナウンスの声と同時に、歓声が爆発する。

「やった……!」

玲が思わず笑顔になる。

豪はゴールした勢いそのままに、本部テントへ向かって走り出した。

「え?」

玲が瞬きをする。

「如月ーーーー!!」

ガシッ!!

「勝ったぞーーーー!!」

豪の大きな腕が、玲を抱きしめた。

「わぁっ!? 豪!?」

突然のことに玲の顔が真っ赤になる。

「ちょ、ちょっと待って! ここ全校生徒の前!!」

「悪い! でも嬉しくて!!」

太陽みたいな笑顔。

それを見た瞬間――玲は小さく笑った。

「……うん。最高に、かっこよかったよ!」

その一言に、豪は今日一番の笑顔を見せた。


(もう、いい! 豪先輩の『俺のゴールへ』のスチルとか……もう、いい! ……神、最高のバッドエンド回避でした。)

その光景を見ていたソノは、感涙しながら親指を立てた。

「玲会長! 豪くん! すっごくかっこよかったですっ!」

涙を浮かべながら、純粋に感動しているサクラ。

「ねえ? 豪が凄かったのは認めるけど……玲を抱きしめるのはナシだよ!」

律が不満げに声を上げる。

すると、絢も口を開いた。

「ええ。本当に素晴らしい走りでした。ですが……最後の行動については、少々お話があります。」

二人の静かな怒りに、豪は震え上がる。

一方、凌は玲の方を向きながら額を抑えた。

「……会長。自分が何をしたのか……分かってるのか?」

「えっと……豪の……応援? あっ、マイクジャックのこと?」

凌は、深いため息をついた。


こうして、体育祭は玲たちの優勝で幕を閉じ――

神城豪のバッドエンドは完全に粉砕されたのであった。

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