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乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第二章 恋するエグゼクティブ(後編)

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第三十四話 卒業、そして約束

春風が、桜の蕾を優しく揺らしていた。

卒業式。

厳かな音楽が体育館へ流れる。

三年生がゆっくりと歩いてくる。

その中には、冴と烈の姿もあった。

(卒業かぁ……。)

玲は胸の奥が少しだけ締め付けられるのを感じた。

いつも隣にいた二人。

それが今日で当たり前じゃなくなる。

そう思うだけで、胸が少し痛かった。

やがて式は終盤を迎える。


「送辞」

玲は静かに壇上へ上がった。

深く一礼する。

玲は卒業生たちを真っ直ぐ見つめた。

「卒業生の皆さん。」

玲は卒業生一人ひとりを見渡し、静かに言葉を紡いだ。

「私が生徒会長になったのは、この学園のみなさんを幸せにするためでした。でもそれは、私の奢りでした。」

その視線は、自然と冴と烈へ向く。

「誰か一人(・・)が幸せにするのではない。みんな(・・・)で幸せになることが大切なのだと……先輩方はその背中を見せて教えてくれました。」

一呼吸。

「皆さんからいただいたものは、攻略本にも載っていない……大切な宝物です。」

玲は真っ直ぐ前を見る。

「本当に、ありがとうございました。」

深く一礼する。


「答辞」

冴は静かに壇上へ上がる。

マイクを握り、玲を見る。

「在校生代表、生徒会長・如月玲――」

ほんの少しだけ口元が緩んだ。

「……ありがとう。」

短いその一言だけで、体育館は静まり返る。

「先ほど、私たちは背中を見せてくれたと言われた。」

少しだけ苦笑する。

「そんなつもりはなかった。私は、ただ自分にできることをしていただけだ。」

視線を玲へ向ける。

「だが、もしその背中から何かを受け取ってくれたのなら……それ以上に嬉しいことはない。」

体育館全体を見渡す。

「卒業は終わりではない。次の道を、自分で選ぶ日だ。」

そして最後に、玲だけを真っ直ぐ見据える。

「玲。――お前なら大丈夫だ。」

その言葉に、玲は思わず唇を噛んだ。

泣かない。今日は、生徒会長だから。

体育館は大きな拍手で包まれた。


卒業式が終わる。

桜の木の下、冴が静かに空を見上げていた。

「冴先輩。」

「来たか。」

「卒業、おめでとうございます。」

「ありがとう。」

風が桜を揺らす。

「東京へ行くんですね。」

「ああ。」

「寂しくなります。」

冴は少しだけ目を細めた。

「玲。」

「はい。」

「私の側へ来い。」

短いけれど、はっきりとした言葉。

玲が息を呑む。

「私が先に道を作る。だから来年、お前はその後を追ってこい。」

玲は何も言えない。

冴は続ける。

「お前となら、未来を共に歩みたい。」

静かな声。

春風が吹く。

玲の胸が熱くなる。

「……先輩。」

「今は答えなくていい。」

冴は優しく笑う。

「来年。その時、お前の答えを聞かせてくれ。」

そう言うと、冴は静かに門をくぐっていった。


玲はもう一人の先輩の姿を探した。

「烈……?」

姿が見えない。

玲は少し考え、ある場所へ向かった。

屋上。

(やっぱりいた。)

フェンスにもたれ、空を眺めている。

「烈……卒業おめでとう。」

「ありがとう。」

烈は振り返り、にこやかに笑う。

「会長、これ……」

そう言うと、何かを放り投げる。

慌ててキャッチすると、そこには鍵が一つ。

「ここの屋上の鍵……お前に渡しとく。」

「……うん、分かった。」

二人の間を風が吹き抜ける。


「俺さ……アメリカに行くことにしたんだ。」

「えっ!?」

「あの日、会長が背中押してくれて……好きな時間って何だろうって考えてみた。色んなことをして、見て……自分の力を試してみたいって思った。」

苦笑いする烈。

「親にはそんな簡単なもんじゃないって怒られたけど。」

「すごいなぁ、烈は。夢を見つけて行動にして……」

玲は目を輝かせて言った。

「何があっても、絶対に応援するから!!」

「ああ……ありがとう。」

烈は笑う。


「それとさ……ちょっと渡したい物があるんだ。」

烈が手招きする。

「こっち来て……」

(ん? なんだろう……?)

玲は言われるがままに烈に近づく。

瞬間――。

ぐいっと腕を引かれた。

視界が塞がる。

気づくと烈の腕の中だった。

(……え?)

玲の思考が止まる。

耳元にそっと唇が触れた。

熱い吐息が耳元をくすぐる――。


「……好きだ。」

ドクン。心臓が止まりそうになる。

「俺……会長が好きだ。」

呟くような小さい声。

「お前じゃなきゃ……駄目なんだ。」

はっきりと聞こえた。

「ずっと渡せなかったプレゼント。今、渡したい……。」

抱き締める腕に、少しだけ力がこもる。

そして――

「俺の心……お前に受け取ってほしい。」

涙が出そうなくらい真っ直ぐだった。

息ができない。

心臓だけが、壊れそうなくらい鳴っていた。


「ごめん、びっくりさせて……」

ゆっくり身体が離れる。

「返事はすぐじゃなくていい。今は俺の気持ちだけ、もらってくれたらいいから……。」

烈が扉に向かって歩き出す。

「俺さ、もっといい男になって……絶対お前を惚れさせてみせるから。」

烈は照れくさそうに笑った。

「だから――。返事はその時にちょーだい?」

玲の胸が熱くなる。

去り際、烈は振り返り玲を見つめた。

視線が交差する。

優しい笑みを残して、烈は扉の向こうへ消えていった。


翌日。

少し広く感じる生徒会室。

「寂しいですね。」

サクラがぽつりと呟く。

玲は窓の外を見る。

桜が少しずつ咲き始めていた。

「春は、別れと出会いの季節だから。」

優しく笑う。

「さあ!」

手を叩く。

「先輩たちが安心して卒業できるように! 私たちも頑張ろう!」

「おお!」

「もちろん!」

「支えます。」

「任せてくださいっ!」

笑顔が戻る。

 

こうして――

乙女ゲーム『恋する生徒会エグゼクティブ』での一年が過ぎた。

ゲームではここでエンディングが流れていく――。

結局、私たちが辿ったのは、用意された既存のエンディングじゃなかったけれど……

みんなが幸せそうに笑ってくれるなら、それでいい。

このトゥルーエンドは――

誰かを選んだり、選ばれたりすることだけが幸せではないのだと、私に教えてくれた。


ゲームは終わっても、玲たちの人生はこれからも続く。

(私は、これからもみんなと生きたい!!)

その願いは、もう誰にも『バグ』なんて呼ばせない。


True End『みんなと共に、生きる未来』


――――


笑い声が響く校舎を、校門の外から一人の少女が見つめていた。

二つに結ばれた銀色の髪が、春風に揺れる。

「もうすぐ、会える――」

新しい季節の始まりを、静かに見つめていた。


第二部 完

恋エグメモ


▶【鬼塚 烈】=100/100(「好きだ」。もう想いは隠さない。必ずもっといい男になって迎えに行く。)


▶【黒崎 冴】=100/100(未来を共に歩みたい。その答えを、来年必ず聞かせてほしい。)


▶【白砂 律】=98/100(玲はもう、誰にも譲れない一番大切な存在。)


▶【千早 絢】=98/100(どんな未来でも、玲の隣を歩き続けたい。)


▶【神城 豪】=97/100(玲の笑顔を、これからも誰より近くで守りたい。)


▶【サクラ】=95/100(玲先輩のように、人を笑顔にできる人になりたい。一番尊敬する、大好きな先輩。)


第二部完結です!

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。

第三部では、新たな出会いと新たな物語が始まります。

引き続き『恋する生徒会エグゼクティブ』をよろしくお願いします!

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