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乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ


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第ニ十四話 物語の終わりとはじまり

「みんな、遅れてごめん! ……ただいま!!」

その言葉を聞いた瞬間、生徒会室の空気が弾けた。

「遅いぜ、会長」

烈が笑う。

「馬鹿玲」

律は少しだけ目を潤ませながらそっぽを向いた。

「おかえりなさい」

絢が優しく微笑む。

「……よかった」

豪が大きく息を吐く。

「おかえり。玲」

冴は静かに目を細めた。

「お、おかえりなさいっ、会長!」

サクラも満面の笑みを浮かべる。

胸の奥がじんわりと温かくなる。

帰ってきた、私の居場所へ。

みんなが待っていてくれる場所へ。


「さて!」

私は両手を叩いた。

「生徒会長不在の間に溜まった仕事を片付けるよ!」

「戻ってきた瞬間それかよ!」

烈のツッコミに、みんなが吹き出す。

聞き慣れた笑い声。賑やかな空気。

それだけで泣きそうになる。


――ああ。

やっぱり私は、この人達が大好きだ。


それから数日。

生徒会は、すっかり元の日常を取り戻していた。

律は相変わらずゲームに誘ってくるし。

豪は困っている生徒を放っておけないし。

絢は毎日のようにお茶に誘ってくるし。

烈は何かとちょっかいをかけてくるし。

冴はそんな様子を見ながら静かに微笑んでいる。

そしてサクラは今日も元気いっぱいだ。


放課後。

最後の書類をまとめ終えた私は、大きく伸びをした。

「ふぅ~、終わった~!」

窓の外では夕陽が校舎を赤く染めている。

みんなは先に帰宅し、生徒会室には私一人。

静かな時間がなんだか少し懐かしい。

「……幸せだな」

ぽつりと呟く。

ゲーム開発者だった頃、私はただ願っていた。

キャラクター達が幸せになってくれればいいと。

でも今は違う。

みんなが幸せで、私も幸せで――。

それでいい。そう思える。

その時だった。


カタン――。

小さな音がした。

「ん?」

音のした方を見ると、生徒会長机の引き出しがわずかに開いていた。閉め忘れだろうか。

首を傾げながら近付き、引き出しを開くと――

そこには見覚えのない端末が入っていた。

黒い携帯ゲーム機のような機械。

「……なにこれ?」

初めて見る端末。私は恐る恐る手に取った。

その瞬間。

ピッ――。勝手に電源が入った。

「え?」

画面が白く光る。

そして浮かび上がった文字を見た瞬間、私の呼吸が止まった。


『恋するエグゼクティブ』


「……っ!?」

見間違えるはずがない。

私が作ったゲームのロゴだった。

心臓が嫌な音を立てる。

どうして。なぜ今になって。


画面が切り替わり、そこに表示されたのは。


▶管理者権限を確認しました

▶開発者認証完了

▶最終ログを表示しますか?

YES / NO


「開発者……認証……?」

震える指。

迷う、だけど……。

私はゆっくりと『YES』を押した。

画面が暗転する。

そして、無機質な文字列が浮かび上がった。


『開発チーム最終記録』


「……!」

息を呑む。

画面には続きが表示される。


『もしこのログを閲覧しているなら』

『計画は次の段階へ移行した』

『世界の修正は完了していない』


背筋が凍った。

「……何?」

理解が追いつかない。

修正? まだ終わっていない?

ブツッ――。画面が消えた。

「え……?」

何度ボタンを押しても反応しない。

電源は入らない。

まるで最初から壊れていたかのように。

静寂。

夕陽だけが生徒会室を赤く染めている。

私は端末を握りしめたまま立ち尽くした。

さっきのログは何だったのか。

誰が残したのか。そして――


『世界の修正は完了していない』


その言葉だけが、頭の中で何度も反響する。

窓の外では、生徒達の笑い声が聞こえていた。

いつもと変わらない放課後。

けれど。

私達の物語は、本当に終わったのだろうか。

端末を胸に抱きしめながら、私は夕焼け空を見上げる。

その先にある未来を知らないまま――。


第一部 完

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