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乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第一章 恋するエグゼクティブ(前編)

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第二十三話 二人の玲と帰る場所!

『もっと心の声を聞いてみるといい』

観覧車の中で冴に言われた言葉が、玲の頭から離れなかった。

静まり返った自室。

机に頬杖をつきながら、玲は今日一日の出来事を思い返す。

烈の言葉に胸が高鳴ったこと。

律の笑顔を見て、嬉しいと感じたこと。

絢と雑貨を眺めていた時間が楽しかったこと。

豪の腕に抱きしめられた時、安心したこと。

どれも、自分の覚えのない感情だった。

「……俺は、一体――」


そこで玲の意識は、数か月前のある日の記憶へと遡る。

目を覚ました時、そこは真っ白な世界だった。

豪華なシャンデリアも、重厚な家具もない。

あるのは巨大なモニターと、一台のゲーム端末だけ。

「ここは……どこなんだ?」

恐る恐るゲームを起動すると、モニターには『恋するエグゼクティブ』の文字が浮かび上がった。

次々と映し出される見知った顔。

烈、律、絢、豪、冴――そして、自分。

訳も分からないまま見ていると、物語は始まった。

律とゲームで張り合い。

絢と買い物に出かけ。

豪と笑い合い。

烈と心を通わせていく。

画面の中の玲は、自分とは思えないほど表情豊かだった。

(っていうか、距離感近すぎだろ……!)

思わず顔を赤くする。

物語は進み体育祭が終わろうとした、その時――。

『▶システムエラー発生』

『▶修正プログラムを起動しますか?』

玲は迷わず「はい」を押した。

その瞬間――。

全身を焼くような電流が走り、視界が白く弾けた。

――そして。

気が付くと、真っ暗な山の中にいた。

目の前には祠――。その時だった。

「絢〜? いる〜?」

聞こえてきた声に振り返る。

そこにいたのは――。自分だった。

「……なんだ、あいつは」

すると再び――。

『▶システムエラー発生』

『▶バグの消去を行ってください』

無機質な声が頭に響く。

『▶世界を維持するため、異物を排除してください』

「バグ……?」

目の前の自分を見つめる。

あいつを消せばいい。

そう思った瞬間――

「……っ」

体が勝手に動いた。

気が付いた時には、『自分の姿をした誰か』を突き落としていた。

だが、『バグ』は消えなかった。

そして文化祭の日。

偶然ぶつかって落とした端末に、『自分の姿をした誰か』が触れた瞬間、閃光が走り――『バグ』は消えた。

――そう思っていた。

玲は確信していた。

烈、律、絢、豪、冴――彼らに向けるこの感情は、『自分の姿をした誰か』のものだ。

そしてきっと、まだその『バグ』は残っている――

玲はゲーム端末に手を伸ばす。

今度こそ、『バグ』を完全に消し去るために――。


私は、ドリームランドでの出来事を思い返していた。

烈に赤面していた玲。

律に優しく微笑む玲。

絢と一緒に雑貨に見惚れていた玲。

お化け屋敷で固まり、豪に抱きしめられて安心していた玲。

「もしかして……私の感情とシンクロしてる?」

そう思った瞬間。

白い世界に光が差し込んだ。

現れた人物に、私は息を呑む。

「え……? 玲……?」

目の前の玲は、鋭い目で私を睨みつけた。

「やはり……お前はまだ消えてなかったんだな!」

「ちょ、ちょっと待って!」

「今度こそ終わらせる――」

近づいてくる玲に、私は思わず叫んだ。

「嫌だ……! 私、まだ消えたくない……!」

涙が溢れる。

その姿を見て、玲の足が止まった。

「……なぜ泣く?」

静かな声だった。

「お前は……一体誰なんだ?」

私は全てを話した。

元開発者だったこと。

ここが自分の作ったゲームの世界であること。

玲は黙って聞いていた。

「開発者、ゲームの世界――。とても信じられないが……。そして、みんなを幸せにしたい、と……」

「うん。どうしてこういう状況になったか分からないけど……私はみんなに幸せになってほしい。」

そして。

「でも、私の存在が世界を壊すなら……消えた方がいいのかなって……」

そう言った私に、玲は深くため息をついた。

「お前は、一体何を見てたんだ?」

「え?」

「烈も、律も、絢も、豪も、冴先輩も……変わった」

呆れたように玲が笑う。

「あいつらを変えたのは……お前だろ?」

私は息を呑んだ。

「お前がいなくなって、あいつらは幸せになれるのか?」

涙が止まらなかった。

「それじゃあ……私、消えなくていいの……?」

玲は優しく頷く。

「お前が感じたものは、もう俺の中にもある」

「喜びも、悲しみも……全部」

「今さら切り離せると思うか?」

そして、玲はそっと私を抱きしめた。

「辛い思いをさせて悪かった……一緒に帰ろう。みんなのところへ――」

眩い光が二人を包む。

「玲……私、みんなを幸せにしてみせるよ。もちろん、あなたのことも」

玲は優しく微笑んだ。

「ああ、よろしく頼む……」

二つの光は、ゆっくりと一つになっていく。

そして――白い世界から消えていった。


翌朝、生徒会室――。

いつものように仕事をする面々。

そこへ、パタパタと軽快な足音が近づいてくる。

バンッ!

勢いよく扉が開かれた。

全員の視線が、一斉に集まる。

一呼吸。私は、大きく息を吸った。

「みんな、遅れてごめん! ……ただいま!!」

一瞬の静寂。そして――。

「遅いぜ……会長?」

「馬鹿玲」

「おかえりなさい」

「……よかった!」

「おかえり。玲」

「おかえりなさいっ、会長!」

「うん……ただいま」

やっと帰ってこられた。私の帰る場所へ――。

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