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乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第一章 恋するエグゼクティブ(前編)

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第ニ十ニ話 テーマパーク編〜この想いは誰のもの!?

休日――。

「うわぁぁ……!」

……と、叫びたくなるほどの光景だった。

青く澄み渡った空の下。

巨大なゲートの向こうには、色とりどりの建物と賑やかな音楽、楽しそうな歓声が広がっている。

夢と魔法と非日常が詰まった大型テーマパーク――『ドリームランド』。

カラフルな風船を抱えた子ども達。

お揃いのカチューシャをつけて写真を撮るカップル。

甘いポップコーンの香り。

遠くから聞こえるジェットコースターの悲鳴。

休日ということもあって、園内は朝から大勢の人で賑わっていた。

……もっとも。

「はぁ……」

私は白い世界で、何度目かのため息をついた。

その光景は、画面の向こうの世界。

モニター越しに見えるのは、生徒会メンバーの面々だった。

「全員揃ったな」

冴が淡々と確認する。

「本日は生徒会の親睦を深めるための校外活動だ。各自、節度を持って行動しろ」

「はい……」

しかし返事とは裏腹に、みんなの表情はどこか硬い。

そして――無言。

ただ、もくもくと歩いている。

(……え、なにこれ? 全然楽しくないじゃん!?)

テーマパークとは思えないお通夜のような空気に、私は思わず画面にツッコミを入れた。


そんな空気に耐えられなくなったのか、豪が口を開く。

「えーっと……どこから見て回りますか?」

「あ、私ジェットコースターに乗りたいですっ!」

サクラが元気よく手を挙げた。

「おっ、いいね! ここのジェットコースター、日本一の高さで有名なんだよな!」

烈も笑顔になる。

「えー、俺はパス。絶叫系って苦手なんだよね〜」

「僕も……」

「私も遠慮しておく」

律、絢、冴は揃って辞退した。

「……じゃあ、俺も――」

玲が断ろうとした瞬間。

「却下!」

烈が肩を組んだ。

「せっかく来たんだぞ? お前まで逃げるな! ほら、行くぞ!」

「お、おい……!」

半ば強引に連れて行かれる玲。

残された三人は、その背中を見送りながら――

「玲、大丈夫……だよね?」

「ショック療法というのも、案外効くかもしれませんよ?」

「…………」

一抹の不安を覚えるのだった。


長蛇の列に並びながら、烈は隣の玲を見た。

明らかに不機嫌である。

「そんな怒んなって、会長」

「…………」

「怖いんだったら、俺の手握っててもいいからさ?」

軽い冗談のつもりだった。

以前の玲なら、冷たい一言で切り捨てて終わり。

そう思っていたのに。

「……っ」

玲が目を見開き、頬を赤く染めた。

「……え?」

本人も戸惑っているようだった。

「あー……悪ィ」

「……謝るくらいなら言うな」

二人は揃ってそっぽを向いた。

気まずい空気。

けれど、どこか心地よい沈黙だった。


同じ頃――。

白い世界の私は、目の前の玲と同じように顔を赤くしていた。

思い出すのは、文化祭の日。

『俺を……信じてくれるか?』

烈……。

私はそっとモニターへ手を伸ばす。

届くことはないと分かっていても。


ジェットコースターを終えた四人が戻ってきた。

「あれ? 玲、顔色悪いですけど……」

「大丈夫……じゃない……」

「乗り物酔いですね」

絢はすぐに玲の背中へ手を添えた。

「休みましょうか」

「すまない……」

近くのベンチで休ませていると、冴がやってくる。

「次はゴーカートらしいが、お前たちはどうする?」

「僕は玲とここで休んでいます」

「そうか。頼む」

「はい」

五人を見送ったあと、絢は微笑んだ。

「顔色、だいぶ良くなりましたね」

「ああ」

「よかったら、お土産屋さんでも見ませんか?」

「そうだな」

二人は近くのショップへ入った。

所狭しと並ぶ限定グッズ。

その中で玲の視線が、ある一点で止まる。

ドリームランド限定、ウサギのマスコット『ウサッピー』のマグカップだった。

『玲は、こういうのが好きなんですね』

『好き! 大好き!』

以前、一緒に出かけた雑貨店。

絢は、楽しそうに話していた玲の笑顔を思い出す。

そして今。

目の前の玲もまた、夢中になって見つめていた。

「玲は、こういうのが好きなんですね」

「あ……いや、その……違う」

我に返った玲が慌ててマグカップを戻す。

どうやら無意識に見入っていたようだ。

そんな反応に、絢は小さく笑った。


二人がショップを出ると、ゴーカートを乗り終えた五人がちょうど帰ってきたところだった。

「楽しかったですねっ!」

「ああ、レース白熱したな〜!」

「あ〜〜、ラストのコーナでスピンしなきゃ俺が一位だったのに〜」

「鬼塚、お前が無謀な運転するからだろ」

「見て見て、玲! 俺が一位だったんだよ!」

目の前に駆け寄ってきた律が、嬉しそうに金色の優勝カップを見せてくる。


モニターいっぱいに映る律の笑顔に、私は一人で興奮していた。

(さすが律! 天才! 玲、ちゃんと褒めてあげて!)

その声が届いたのかは分からない。けれど――

玲は、無邪気な律に一瞬戸惑いながらも

「すごいな、律」

柔らかな笑顔を向けた。

「えへへ!」

嬉しそうに笑う律。

その様子に、周囲の五人もほっと胸を撫で下ろしていた。


昼食を終え、七人はお化け屋敷へ向かった。

「お化け屋敷……私苦手なんですけど……」

「大丈夫、大丈夫! みんなで行くから! なっ、黒崎?」

「ああ、ただ食後に暗い道を歩くだけだ」

「そんな身も蓋もない……律、足元気をつけて下さいね?」

「うん、大丈夫! ありがと、絢」

「おい、如月。ちゃんと付いてきてるか?」

「ああ、問題ない」

暗く細い一本道を、一列になって進んでいく。

先頭からサクラの悲鳴が聞こえているが、後方は暗くてよく状況が分からない。

出口に着いた時――。

「如月!?」

最後尾の玲の姿がないことに気づき、豪はすぐに引き返した。

()ぎるのは夏合宿での肝試しの時のこと――

幸い道は一本道だったので、玲はすぐ見つかった。

豪はホッと胸をなで下ろし、玲に声をかける。

「如月、ここにいたのか……」

玲は何も答えず、しゃがんでうずくまっている。様子がおかしい――

「お、おい……如月?」

豪が玲の肩に手を置いた瞬間

「ぎゃーーーー!!」

玲が悲鳴を上げた。

「おれだよ、おれ! 如月……もう、大丈夫だから」

豪は、慌てて玲を抱きしめた。

荒かった呼吸が、少しずつ落ち着いていく。

「如月……大丈夫か?」

「あぁ……すまない。……暗くて、気づいたら誰もいなくて……そしたら動けなくなってた……」

「そうか……無事で良かった」

豪は安堵したように笑った。


夕暮れ。

最後にみんなで向かったのは、ドリームランドを一望できる観覧車だ。

三人乗りのため、豪・律・サクラ、烈・絢、そして冴・玲の組み合わせで乗ることにした。

二人きりの静かな空間。

「玲、今日は楽しかったか?」

「はい。目的通り、親睦は深まったと思います」

「……そうか」

冴は優しく目を細めた。

「私は、お前の完璧さを評価してきた」

「ありがとうございます」

「だが……それだけで本当にいいのか?」

「え……?」

アイスブルーの瞳が真っ直ぐ玲を見つめる。

「私情に流されず、隙を見せず、誰にでも公平であること。それがお前の長所だと思っていた」

冴は小さく笑った。

「だが最近、考えるようになった。雑談や脱線も悪くないと。予定調和も、時には退屈なのだと」

「…………」

「私にそう思わせたのは、お前だ」

玲の瞳が揺れる。

「玲。もっと心の声を聞いてみるといい」

「!!」

そう言うと冴は、外の景色に視線を向けた。

「……もう終わるな」

下では先に降りた面々が、笑顔で手を振っていた。


帰り道。

玲は今日の出来事を思い返していた。

烈に赤面したこと。

絢と一緒に見た雑貨。

律の笑顔を愛しく思ったこと。

お化け屋敷で動けなくなったこと。

そして――

『もっと心の声を聞いてみるといい』

いつも凪いでいる玲の心が、今日はひどくざわついている。

胸の奥から次々と湧き上がる感情。

この想いは、一体どこから生まれているのか――。

考えを巡らせていた玲は、一つの答えに辿り着いた。

「まさか――」

日が落ち、涼やかな風が頬を撫でる。

夕焼け空を見上げた玲は、ただ一点を見つめていた。

【恋エグ攻略メモ】

▶神城 豪:78/100 (無事でいてくれるだけでいい)

▶鬼塚 烈:77/100 (誰よりも隣にいたい)

▶白砂 律:75/100 (もっと自分を見てほしい)

▶千早 絢:73/100 (今度こそ守りたい)

▶黒崎 冴:73/100 (価値観を変える特別な存在)

▶サクラ:61/100 (支えたい気持ちは恋心へ)

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