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乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ


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第十三話 体育祭編〜フォークダンスイベント、攻略対象たちの様子がおかしい!?

その後の競技も、体育祭は大きな盛り上がりを見せながら進んでいった。

借り物競走では『大切な人』というお題が飛び出し、校庭中がざわついた。

パン食い競走では、豪が圧倒的な身体能力を見せつけて一位を獲得し。

騎馬戦では、暴走しかけた烈を冴先輩が冷静に止める一幕もあった。

そして――。

気づけば、体育祭は終盤。

夕陽に染まり始めた校庭に、ゆったりとした音楽が流れ始める。

最後のプログラム、全校生徒によるフォークダンス。

私は心の中で拳を握った。

(来たっ!! フォークダンスイベント!! 好感度によってセリフが変わる神イベント!! 何周したと思ってるの!? 全員分、暗記してるもんね!!)


曲に合わせて、生徒たちが次々とパートナーを変えていく。

最初に現れたのは豪だった。

「体育委員長、お疲れさま!」

私が笑いかけると、豪は少し照れたように視線を逸らした。

「お前の方こそ、二人三脚すごかったな」

大きな手が、ぎこちなく私の手を包む。

「……あのさ」

「ん?」

「俺、お前とサクラが走ってるの見て思ったんだ」

真っ直ぐな瞳。

「……次は、俺がお前の隣で勝ちたい」

「……!」

返事をする暇もなく、次の相手へ移る時間が来てしまう。

名残惜しそうに離れていく豪の背中を見送りながら、私は胸を押さえた。

(王道豪ルートの破壊力、高っ!!)


次に現れたのは律だった。

「玲!」

ぱっと花が咲いたような笑顔、その頬はほんのり赤い。

「俺、あれからゲームの練習したんだ」

律は私の手をぎゅっと握る。

「……今度は絶対負けない。だから、また勝負しよ?」

琥珀色の瞳が真っ直ぐ私を見つめた。

一瞬だけ視線が揺れる。そして――

「俺が勝ったら、願いごとを一つ聞いてほしい」

「……えっ?」

(律ルートって、こんなに攻めてきたっけ!? これ隠しセリフ!?)

動揺している間に曲は流れ続ける。

「……約束だからね!」

離れ際、律は名残惜しそうに私の手を放した。


「相変わらず無防備だな」

次に現れた烈は、律との余韻に浸っていた私をぐっと引き寄せた。

「ち、近っ!?」

「そんな顔で手ぇ握られたら、期待するだろ」

「ふふっ、手を握るって……ダンスだよ?」

「はぁ……」

烈は呆れたように息を吐いた。

金色の瞳が細められる。

「だから困ってんだよ……。次は最初から俺を選べよ?」

(うぅっ……さすが烈!!)

至近距離から甘いセリフを浴びて、思わず赤面してしまう。


「玲」

次に私の手を取ったのは冴だった。

まるで王子が姫をエスコートするような自然な所作。

「ふふっ、冴先輩……王子様みたいですね?」

「……お前はまたそんなことを言う」

呆れたような声音。

けれど、その指先は優しかった。

「本当に私を困らせることが得意だな」

「え?」

「自覚がないなら、なおさらたちが悪い」

アイスブルーの瞳が真っ直ぐに私を射抜く。

「……今度、じっくり教えてやる」

繋いだ手に力がこもる。

「だから今だけは――私だけを見ていろ」

至近距離の冴に射抜かれる。やっぱり目が離せない……。


「はぁ……」

ため息交じりの声で来たのは絢だった。

「玲、フォークダンスって残酷ですね」

「え?」

「せっかく手を取れたのに、十秒もしないうちに離さなければならないなんて」

「ふふっ、確かに短いよね?」

無邪気に笑った私を見て、絢は繋いだ手を少しだけ強く握った。

「……玲、あまり僕を試さないでください」

「え?」

キャットアイの瞳が細められる。

「今はまだ、あなたの気持ちが育つまで待っています。最後に隣にいるのが僕なら、それで十分ですから」

(ふわぁっ!? これプロポーズイベント!? みんなの愛が重すぎるんですけどっ!?)

推したちからの熱量に脳が処理落ちを起こしかけた、その時――。

曲はクライマックスへ差しかかった。


最後のパートナーはサクラだった。

「サクラちゃん、お疲れさま」

「はいっ!」

サクラは嬉しそうに笑った。

「会長って、いつも誰かのために頑張ってますよね。だから……たまには、会長自身の幸せも考えてほしいんです」

推しの幸せのためにと、奮闘している自分を見てくれていたことが純粋に嬉しかった。

「もし会長が困った時は、今度は私が助けます」

サクラは勇気を振り絞るように続けた。

小さな手が私の手を握る。

「だから……ちゃんと頼ってくださいね?」

(サクラちゃん、なんて良い子なの……娘にしたい!!)

主人公として成長していくサクラ――

私は、我が子を見守るような温かな気持ちで見つめていた。


夕焼けに染まる校庭。

体育祭も無事に終わり、生徒たちは後夜祭の準備へと散っていく。

(二人三脚もフォークダンスも無事終了! サクラちゃんとも仲良くなれたし! 攻略対象たちとの仲も順調! 私って、もしかしてシナリオ修正の天才では!?)

満足げに頷いた、その時――。


「――玲」

振り返るとそこには、五人の攻略対象と一人のヒロインが立っていた。

まだフォークダンスの余韻を宿した瞳で、真っ直ぐに私を見つめている。

(……どうしたんだろう?)

首を傾げる玲。


サクラへ向かうはずだった恋心は、この体育祭でさらに加速を増して『如月玲というバグ』へ確実に向かっていた。

ただ一人、その中心にいる張本人だけがその事実に気づかないまま……。

(次は夏合宿、肝だめしイベントだっけ?よーし! 今度こそサクラちゃんの恋愛フラグを立てるぞー!!)

拳を握りしめるのだった。


――恋愛ゲーム『恋エグ』。

攻略対象全員の好感度は、今日も順調にバグっている。

【恋エグ攻略メモ】


▶白砂律:58/100(願いごとの約束を取り付ける)

▶千早絢:57/100(穏やかな独占欲が深まる)

▶鬼塚烈:55/100(「次は俺を選べ」が本音に)

▶黒崎冴:54/100(静かな独占欲を覗かせる)

▶神城豪:53/100(隣で勝ちたいと願いを口にする)

▶サクラ:46/100(尊敬と初恋の狭間で揺れる)

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