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乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ


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第十二話 体育祭編〜二人三脚でヒロインとも恋愛フラグ!?

体育祭当日――。

校庭には色とりどりのクラス旗がはためき、歓声とマイクのアナウンスが入り混じっていた。

「次は二人三脚です!選手の皆さんは入場門へお集まりくださーい!」

砂埃の匂い。 熱気を含んだ風。

どこを見ても、活気と興奮に満ちあふれている。

(来た……!体育祭イベントの目玉、二人三脚!)

私は胸の前でそっと拳を握った。

本来なら、攻略対象とヒロインの距離が一気に縮まる重要イベント。

ここでの結果次第で、後の展開も変わってくる――。


「玲会長……」

隣から、不安そうな声が聞こえた。

「本当に、私で良かったんですか……?」

二人三脚用の紐を握りしめながら、サクラが何度目か分からない質問を口にする。

緊張でこわばる肩、表情。

そんな彼女へ、私はにっこりと笑いかけた。

ぽん、と軽く肩を叩く。

「もちろん! たくさん練習したし、大丈夫!」

「でも……」

「絶対に優勝しようね!」

「……!」

「……はいっ!」

サクラの瞳がぱっと輝いた。

その笑顔を見て、私も自然と頬が緩む。

(よーし! サクラちゃんにも楽しい思い出を作ってもらわないとね!)


「位置について!」

「よーい――」

パンッ!!

乾いたピストル音が、青空へ響き渡る。

一斉に選手たちが駆け出した。

私はサクラと視線を合わせた。

「せーのっ!」

一歩。二歩。三歩――。

息は合っていた。練習の成果もある。

このままなら――

「あっ……!」

ほんのわずかにサクラの足がもつれた。

「きゃっ……!?」

「わっ!」

ぐらり、とサクラの身体が傾いた。

反射的に私はサクラの肩を抱き寄せる。

視界が近づく。

揺れる長いまつ毛――

汗で少し張りついた前髪――

耳まで真っ赤に染まった横顔――。

「ご、ごめんなさいっ!」

涙目で見上げてくるサクラ。

(うわぁ……可愛い……!!)

思わず内心で悶える。

(この守ってあげたくなる愛らしさ! 透明感!やっぱりサクラちゃんは主人公なんだなぁ。作画担当のMさん、本当にありがとう!!)

――じゃなくて。

(今、競技中だった!!)

私はぶんぶんと頭を振った。

(ここで順位を落としたら大変! トゥルーエンド〈真実の愛ルート〉が見れなくなっちゃう!!)


気持ちを切り替え、私は紐を結び直した。

「サクラちゃん、行くよ!」

「は、はいっ!」

「しっかり捕まってて!」

「え?」

ぐっと身体に力を込める。

「見せてあげる! 如月玲のスペックを!!」

「えぇっ!?」

次の瞬間、私は地面を蹴った。

「わぁぁっ!?」

景色が、一気に後ろへ流れていく。

加速。加速。さらに加速――。

「速っ!?」

「な、何あのチーム!?」

「今、追い抜いたよな!?」

観客席からどよめきが起こる。

先行していたチームを次々と抜き去り。

まるで風を切るように、私は一直線に駆け抜けた。

「――っ!」

そして、誰よりも早くゴールテープを切った。


「い、一位ぃぃぃーーっ!!」

実況の絶叫が響く。

「やったぁぁぁ!!」

サクラが目を見開いた。

「会長っ! すごいですっ!!」

「ふふっ!」

私は胸を張る。

(見よ! このチート能力とシナリオ補正を!!)

本来、この競技は好感度によって結果が左右されるイベントだ。

パートナーとの絆が強いほど、息は合い、力を発揮できる。

つまり、私がサクラちゃんを想い(※親心)、サクラちゃんも私を想ってくれたから出せた力。


「でも……」

興奮していたサクラが、しゅんと俯いた。

「私、途中で転びそうになって……」

潤んだ瞳がこちらを見る。

「足を引っ張っちゃいました……」

「そんなことないよ」

私は優しく笑った。

そして、ぽん、ぽん――

子どもをあやすように、サクラの頭を撫でる。

「サクラちゃんがいたから頑張れたんだよ」

「……え?」

「想い合ってるからこそ、この力が発揮できたんだ」

私はシステムの仕様を思い浮かべながら続けた。

「だから、サクラちゃんがパートナーで本当に良かった」

「…………」

サクラが息を呑む。

ゲームシステムの話だなんて、彼女が知るはずもない。

「わ、私……」

サクラは頬を真っ赤に染めながら、きらきらと潤んだ瞳で私を見上げた。

「私も……会長と一緒で……良かったです」

嬉しそうに、少し照れくさそうに、サクラは小さく笑った。


(うんうん! 良かった良かった!これでサクラちゃんにも楽しい思い出ができた!)

満足げに頷く私――。

この言葉が、サクラの胸をどれほど大きく揺らしてしまったのか……

限界オタク生徒会長が、もちろん気づくことはなかった。

こうして――

本来の主人公との間に新たな恋愛フラグを立てながら、体育祭は進んでいくのだった。

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