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乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ


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第十一話 体育祭編〜二人三脚は誰と!?

定期考査も終わり、次はいよいよお待ちかねのビッグイベント――体育祭だ。

(来た来た来た!!)

私は生徒会室で書類を整理しながら、脳内で盛大にガッツポーズを決めていた。

(体育祭イベント、大人気だったんだよね〜!)

二人三脚。借り物競走。そして、締めくくりを飾るフォークダンス。

『恋エグ』屈指の好感度変動イベントが目白押しの、まさに神回である。

(フォークダンスなんて好感度によって台詞変わるし!)

律ルートなら照れながら手を引いてくれ――

烈ルートはやたら距離近い――

豪ルートは王道爽やか――

冴先輩はさりげなく支えてくれ――

絢ルートは……うん、顔面の破壊力がおかしい――

思い出しただけで頬が緩む。

(自分で作ったイベントだけど、何回見ても好きなんだよなぁ)

そんなことを考えながら、私は企画書や部活動申請書と格闘していた。

体育祭準備期間に入ったことで、生徒会の仕事はいつも以上に慌ただしい。

中でも――。

「豪、お疲れさま」

大量の資料を抱えて通り過ぎようとした大柄な背中へ声をかける。

「最近ずっと走り回ってるけど、大丈夫? ちゃんとお昼ご飯食べてる?」

「……っ」

豪は足を止めた。振り返った顔は、なぜかほんのり赤い。

「え?」

私は首を傾げる。

「顔赤くない? 熱でもある?」

「違う!!」

即答だった。

「そう?」

「……ああ。ちゃんと食ってるから心配すんな」

「そっか」

私がほっと笑うと、豪はわずかに目を細めた。

「それより、如月……お前、二人三脚の相手はもう――」

そこまで言いかけた時――。


バァン! 勢いよく生徒会室の扉が開いた。

「ねぇ、玲! 本当!?」

「うわっ!?」

飛び込んできた律が、机を叩く勢いで身を乗り出してくる。

「絢とデートしたって聞いたんだけど!」

「え?」

「俺、ずっと玲とゲームするの待ってるのに!」

頬を膨らませ、不満を隠そうともしない。

「ずるい」

「ずるいって……」

「だから、今度の体育祭の二人三脚は俺と組んで!」

じっと見上げる琥珀色の瞳。

有無を言わせない声音だった。


「律では、身長が合わないでしょう?」

穏やかな声が割って入る。

いつの間にか絢が私の隣に立っていた。

「僕なら玲と歩幅も合わせやすいですし。」

にこりと微笑む。

「良い相手になれると思いますよ?」

笑顔だった。

けれど、全く譲る気は感じられない。


「おいおい」

今度は椅子の背に腕を乗せるように烈が寄りかかってきた。

「この前の勉強会は邪魔されたからな。今度こそ俺と組めよ」

不敵な笑み。金色の瞳が細められる。

「二人三脚なら、嫌でも体くっつくだろ? 息合わせて、汗流して――」

「烈!?」

「悪くねぇと思うけど?」

烈はくつくつと喉を鳴らした。


「お前は引いていろ」

ぱたり。と、冴が本を閉じた。

「玲」

「はい?」

「私を選べ」

ライトブルーの瞳が真っ直ぐこちらを射抜く。

「そうすれば優勝させてやる」

「……勝ちにいく気満々ですね?」

「当然だ」

淡々と告げる。

「私が組む以上、負けるつもりはない」


生徒会室に見えない火花が散った。

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

「…………」

誰一人、譲る気配がない。

そんな中――。

「あ、あの……」

控えめな声が響いた。

振り返ると、サクラが困ったように指先をもじもじさせていた。

「わ、私も二人三脚の相手を探していて……」

オロオロしている桃色のヒロイン。


その姿を見た瞬間、私は迷わなかった。

「サクラちゃん!」

「ひゃいっ!?」

極上スマイルを浮かべる。

「もし良かったら、一緒に組まない?」

「……え?」

「同じクラスだから練習もしやすいし。」

「せっかくだから、一緒に頑張ろう?」

「……っ!」

サクラの瞳が大きく見開かれる。

「わ、私でいいんですか……!?」

「もちろん!」

「……!」

みるみる頬が赤く染まっていく。

「よ、よろしくお願いしますっ!!」


一方――。

残された五人は一斉に沈黙した。

まるで「盲点だった……」と言わんばかりに苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。


(みんな、誘ってくれたのにごめんね……)

胸の奥が少し痛む。

でも――。私はサクラへ視線を向けた。

嬉しそうに笑う、本来の主人公。

(私、サクラちゃんにも幸せになってほしいんだ。)


「さぁ!」

私はぱんっと手を叩いた。

「体育祭も頑張っていこう!!」

「……はぁ」

「チッ」

「…………」

「はーい……」

「分かりました」

「はいっ!」

それぞれ違う返事が返ってくる。


ヒロインと攻略対象たちの距離が縮まるはずだった体育祭イベントは、いつもの如く限界オタク生徒会長の善意によって、盛大にバグり始めていた。

まもなく、波乱の体育祭が、幕を開ける――

【恋エグ攻略メモ】


▶千早絢:50/100(玲の隣に立つのは自分だと確信)

▶白砂律:48/100(玲の隣は自分の場所だと本気)

▶鬼塚烈:45/100(対抗心を燃やし諦めない)

▶神城豪:44/100(放っておけない想いに戸惑う)

▶黒崎冴:43/100(玲を奪われることに危機感)

▶サクラ:40/100(憧れが少しずつ恋心へ)

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