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【合本版】乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第五章 恋するエグゼクティブ3『乙女ゲームに転生した冷静生徒会副会長のヒロイン観察日記』

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『恋エグ3』第二十四話(最終話) 卒業式〜旅立つ背中と、残された爆弾

三月半ば。

学園の敷地に舞う春の風が、卒業生たちの門出を祝っていた。


厳かな式典が終わり、生徒会室には今日で学園を去る三年の斗真とソノ、そして二人を送り出す二年の凌、環季、一年のヒマリ、良樹の姿があった。


「本当に、斗真先輩とソノ先輩が卒業なんて……すごく寂しくなります。」

胸に飾られたコサージュを見つめながら、ヒマリがキュッと唇を噛みしめる。


「ふふ、そんな寂しそうな顔しないで、ヒマリちゃん。」

斗真が、穏やかな笑顔でヒマリの前に立った。

「僕から、ホワイトデーのお返しだよ。」

渡されたのは、小さな鍵とシックな手帳。


「これは……?」

「僕が大学の近くで借りる部屋の予備キーと、僕の連絡先・お気に入りカフェのリストだよ。」


「「「「はあぁぁぁっ!?」」」」

凌、環季、良樹の叫び声が生徒会室に響き渡る。


「斗真!?  卒業間際に何渡してんねん!!」

「いきなり一人暮らしの鍵渡すとか、正気かよ!?」

環季と凌は勢い良く突っ込み、良樹は驚きのあまり声が出ず口をパクパクさせている。

しかし、斗真はそれを物ともしない。


「ヒマリちゃん。僕が卒業しても、君の『居場所』の選択肢から僕を消させたりしないからね。」

斗真はヒマリの髪を優しく撫で、耳元で低く囁いた。

「毎週末、絶対に連絡するから。……忘れさせてなんてあげないよ?」

「み、水川先輩……っ!」


一方、ソノも静かにヒマリの前に進み出た。

「ヒマリさん。私からもお礼です。」


ソノが手渡したのは、桜のブローチ。

「おやゆび姫が自分の居場所を選んだように……ヒマリさんも、焦らず自分の答えを見つけてくださいね。」

「ソノ先輩……! はい! ありがとうございます!」


ヒマリがブローチを胸に抱きしめると、ソノはフッと目元を緩めた。

「……ちなみに、会長たちへの置土産も用意しておきましたので。」

そう言ってソノが指さした先には、生徒会室の机に置かれた一冊のファイル。

表紙には『ヒマリさんの傾向と対策、及びこれまでの関係考察書』と書かれていた。


「ちょっと待てソノ、なんだこの謎の冊子は!?」


◇


卒業生二人を見送り、夕暮れ時の生徒会室に戻ってきた凌、環季、良樹、ヒマリ。


「……ハァ。あの腹黒先輩、最後まで嵐みたいに去っていきやがったな。」

凌が呆れ顔で吐き捨てつつも、どこか寂しそうに窓の外を眺める。


「でも凌、これで三年の二人が抜けて、来月からは俺らが最上級生やで?」

環季が腕を組み、ニヤリと口角を上げた。


「斗真がおらんくなったからって、油断したらあかんで。俺は来年、もっと本気でヒマリを狙いに行くからな?」


「僕だって負けません!」

良樹が身を乗り出す。

「ヒマちゃんとは同じ学年ですからね! 一番近くにいられるのは僕です!」


「……どいつもこいつも、うるせーよ。」

凌が静かに呟くと、ガシガシと自分の頭を掻きむしり、ヒマリの前へと歩み寄った。

「ヒマリ……。」

「凌会長……?」


凌はポケットから、小さな包みを取り出してヒマリの手のひらに押し付けた。

「……ホワイトデーのお返しだ。受け取れ。」

開けてみると、そこには淡い黄色の星屑を集めたようなガラスビーズが連なった、美しいブレスレットが入っていた。


「わぁ、綺麗。会長……これ……!」

「俺は来年、最高学年として生徒会を引っぱる。お前が安心して過ごせる場所も、俺が全部作ってやる。」

凌はアイスブルーの瞳で、ヒマリをまっすぐに見つめた。

その耳は真っ赤だったが、瞳には一切の迷いがない。

「斗真も、環季も、大嶌も関係ねぇ。……お前が最後に選ぶ場所は、俺の隣だ。」


「〜〜〜っ!?」

あまりに堂々とした宣言に、ヒマリの顔が一気に沸騰する。


「黒崎先輩! ドサクサに紛れて告白みたいなこと言わないでください!?」

「ほんまやぞ凌! 生徒会長の職権乱用や!」


生徒会室が再び大騒ぎになる中、ヒマリはブレスレットをぎゅっと握りしめた。

(心臓が……破裂しそう……!)


◇


その頃、校門へ向かう桜並木の下。

斗真とソノが二人で並んで歩いていた。

「……ふふ。生徒会は、これからも賑やかでしょうね。」

ソノが手帳を抱えて呟く。


「そうだね。凌くんも環季くんも、良樹くんも……これで引くようなタマじゃないしね。」

斗真は愛おしそうに空を見上げた。


「もちろん僕だって。遠く離れたって、僕の包囲網からは逃がすつもりはないよ。大学から毎週通うために、地元の大学に進学したんだから。」


「さすが水川くん。卒業しても容赦がありませんね。」

ソノが苦笑いを浮かべる。


「ソノちゃんは……あの人を追いかけて東京に行くの?」

斗真はふと真顔になって、ソノに尋ねた。


ソノは一瞬口ごもったものの、観念したように笑った。

「はい。『思い続けることで、奇跡は起こる』と神に言われたので……それを信じてみようと思います。」


ソノは青空を見上げた。

タイミングを見計らったように、サクラの花びらが舞い上がる。

(あ、これは……きっと『恋エグ3』のエンディングですね……。)


「さて、私は卒業しますが……。彼らの『白紙の物語』はまだまだ続きそうですね。」


『恋エグ3』の主人公ヒマリの物語――

残された生徒会室の騒がしい笑い声と、甘く切ない恋の予感を背に受けて――

少女と彼らが紡ぐ物語は、これから新たな季節へと踏み出していくのだった。


◇


番外編SS 『冷静副会長に映る世界〜ソノの恋エグ3考察日誌・完結編』

※この日誌は、生徒会を卒業するソノによる最終考察記録です。


本日、私と水川くんは無事に卒業式を迎えました。

生徒会室を去るのは寂しいですが、残された四人の関係性は、むしろこれからが本番と言えるでしょう。


【卒業時点の最終ポジション&今後の展望】


水川 斗真(三年・卒業):【卒業生枠 / 遠距離攻撃型】

卒業のドサクサに紛れて部屋の予備キーを渡し、強烈な爪痕を残して去る。

「遠く離れても逃がさない」という執着心は健在。

大学進学後も最大の脅威。


黒崎 凌(二年・次期最高学年):【会長 / 自覚完了の本命候補】

斗真の卒業に伴い、名実ともに生徒会の絶対的リーダーへ。

ヒマリさんへの「俺の隣だ」宣言により、ツンデレの皮を完全に脱ぎ捨てた。


滝沢 環季(二年・次期最高学年):【会計 / 遠慮ゼロの策士】

最上級生となることで、さらに自由かつ大胆なアプローチが予想される。

凌会長との二年生コンビによるバチバチの牽制合戦は必至。


大嶌 良樹(一年・次期二年生):【同学年枠 / 最強の一途幼馴染】

「同じ学年」という最大の強みを活かし、校内での密着度はナンバーワン。

先輩陣の圧力を跳ね返すパワーは依然として脅威。


ヒマリ(一年・ヒロイン):【主人公 / 無自覚愛され選択保留型】

白紙の台本を経て、自分の意思で選択することの大切さを知った彼女。

卒業した斗真、新体制を引っ張る凌会長たちの熱視線を前に、彼女のハートが誰に射抜かれるのか……。


ソノは満足そうに手帳を閉じると、ペンを置いた。


(完)

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