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【合本版】乙女ゲームの冷徹生徒会長に転生した元開発者、バグレベルに溺愛されてヒロインのフラグが1本も立ちません  作者: 高天原ヒロ
第五章 恋するエグゼクティブ3『乙女ゲームに転生した冷静生徒会副会長のヒロイン観察日記』

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『恋エグ3』第二十二話 年明け〜初詣と願いの行方

一月三日。

新年を迎えた街は、どこか晴れやかで、凛とした冷気に包まれていた。

有名な大神社へ続く参道は、初詣に訪れた大勢の参拝客でごった返している。


「あ、みんなー! こっちこっち!」

赤い大きな鳥居の前で、ヒマリは手を振った。


まず現れたのは、羽織袴をびしっと着こなした良樹だった。

「よっちゃん、袴!? 気合入ってるね!」

「ふふっ、新年のご挨拶だからね。ヒマちゃんこそ、そのピンクの振袖、すごく似合ってる! お姫様みたいだ!」


その時、シックな着物風の羽織を粋に着流した環季と、上品な濃紺の着物を完璧に着こなした斗真が姿を現した。

「おめでとさん〜。正月早々、着物で集まるのもなかなかオツなもんやなぁ。」

「あけましておめでとう。ヒマリちゃん、その桃色の振袖素敵だね。」

「ほんまや! ヒマリ、めっちゃ似合っとるで。写真撮って待ち受けにしてええ?」

斗真と環季がにこやかに笑う。


「皆さん、お待たせしました。」

その後ろから現れたのは、黒のシンプルなコート姿の凌と、淡い藤色の着物を着たソノ。

「凌くんもちゃんと来たんだね?」

「……うるせーよ。ソノに『会長が来ないと締まりません』って引っ張られてきただけだ。」


「みなさん、あけましておめでとうございます!」

全員が揃ったところで、ヒマリが元気に挨拶をした。

視線がヒマリに集まる。


「ヒマリさん、その振袖素敵ですね。」

「ありがとうございます! ソノ先輩も、すっごく綺麗です!」

ヒマリとソノが微笑み合う。

その隣で、凌は明後日の方向を向いたまま、耳まで真っ赤に染めていた。

「まあ……悪くねーんじゃねーの?」

「ぶっきらぼうすぎやろ、凌!」

環季が突っ込む。

「心の中では『天使か!?』って叫んどるくせに!」

「叫んでねーよ!!」


二人のやり取りに笑い声が上がる。

そんな中、ヒマリだけは顔を赤らめ俯いた。

心臓がトクンと音を立てた。


◇


境内に入り、まずは拝殿でお参り。

「「「「「「……。」」」」」」

六人が一列に並び、二礼二拍手一礼。


「よし! お願い完了!」

良樹が爽やかに振り返ると、環季が尋ねた。

「良樹、お前何お願いしたん?」

「『今年こそ、ヒマちゃんに思いが届きますように』です!」

「お前……それを堂々と言うんだな。尊敬するわ……。」

良樹の直球に、凌が即座に反応する。


「ちなみに僕は、『卒業しても、ヒマリちゃんとずっと一緒に過ごせますように』ってお願いしたよ。」

斗真が穏やかに微笑む。

「斗真、お前も……だんだん隠さなくなってきたな……?」


「俺のも知りたい? 俺は『ヒマリと一緒に美味しいもん食べて、楽しい思い出いっぱい作れますように』や。実利重視!」

「今やってることと変わんねーじゃねーか!」

呆れる凌に、ヒマリが尋ねた。


「凌会長は……何をお願いしたんですか?」

凌は一瞬だけヒマリを見つめ、すぐに目を逸らした。

「……別に。『今年も生徒会が平和でありますように』……それだけだ。」

「嘘ですね……。」

ぽつりとソノが隣で小さく呟いたのを、ヒマリは見逃さなかった。


「ヒマリは? なんてお願いしたん?」

環季がヒマリに尋ねると、ヒマリは少し考えてからふふっと笑った。

「それは……ナイショです!」


◇


続いて、正月の名物「おみくじ」コーナーへ。

「よし、今年の運勢勝負や!」

5人が一斉におみくじを引く。


「俺は大吉! 恋愛欄……『押しに押しまくれ。勝機あり』! よっしゃー!!」

環季がガッツポーズ。


「僕も大吉です! 恋愛欄……『情熱が実を結ぶ。諦めるな』! 神様も僕を応援してくれてます!」

良樹が拳を握りしめる。


「僕は吉だな。恋愛欄は……『急がず焦らず、包み込む優しさが吉』。ふふ、僕らしいかな。」

斗真が静かに微笑む。


「私は中吉です。『思い続けることで、奇跡は起こる』。……悪くないですね。」

ソノがふっと口元を緩ます。


「私は大大吉です! 『どの道を選んでも、最後には幸せが訪れる。自分の選択を信じるべし!』」

ヒマリは満面の笑顔で、隣の凌を覗き込む。

「……凌会長はどうでしたか?」


凌の開いたおみくじには、ドカンと『凶』の文字。

全員「「「「……あっ。」」」」

恋愛欄『素直にならねば全てを失う。ツンデレは禁物』。

「誰がツンデレだっ!!」

凌がおみくじをグシャッと握りつぶそうとするのを、ソノが静かに制止した。

「会長、神様のお言葉です。結んで帰りましょう。」


◇


境内の露店エリアは、参拝客で混雑を極めていた。

焼き鳥やたこ焼きの匂いが漂う中、振袖姿のヒマリは歩きにくそうに人波を進む。

「ヒマリちゃん、大丈夫?」

斗真が気遣うが、後ろから押された参拝客の波に、ヒマリの身体がグラリと傾いた。

「わっ……!」

草履が滑り、倒れそうになるヒマリ。


「危ない……!」

ガシッ。

強い力で、手首を掴まれた。

そのまま引き寄せられ、ヒマリの身体はドサッと固い胸の中に収まる。

見上げると、すぐ目の前に凌の顔があった。

アイスブルーの瞳が、至近距離でヒマリを射抜いている。

「凌会長……っ。」

「転びそうになったら、すぐ掴まれ。俺が見ててやるから。」


クリスマスと同じ。

逃げ場のない、まっすぐな瞳。

ヒマリの頭の中が真っ白になり、顔が一気に沸騰する。


「……おい凌。」

氷点下の声が響いた。

振り返ると、斗真、環季、良樹の三人が、般若のような笑顔で立っていた。

「どさくさに紛れて抱きしめてんのは、どこのどいつや?」

環季の手が凌の肩にめり込む。

「クリスマスに続いて初詣でも……抜け駆けは許さへんで?」


良樹がヒマリと凌の間に強引に割り込む。

「ヒマちゃんに気安く触らないでくださいよ!」

「って、お前ら! 転びそうになったから助けただけだろ!?」

凌が怒鳴り返すが、その顔はヒマリ以上に真っ赤だった。


「凌くん。もうヒマリちゃんへの気持ちが隠せてないよね?」

斗真が小さく呟くと、その横でソノがうんうんと頷くのだった。


◇


境内の端にあるベンチで、温かい甘酒を飲んで休憩をすることになった。

「ふぅ……温まりますね。」


ヒマリがフーフーと息を吹きかけながら甘酒を口に含むと、男子陣の争いもようやく静まった。


「……でも、こうやってみんなで初詣に来られて、本当に良かったです。」

ヒマリがポツリと言った。

「去年は色んなことがありましたけど……生徒会のみんなと出会えて……私、すごく毎日が楽しいです。」

ヒマリは抱え込んだ甘酒のカップを見つめ、笑顔を浮かべる。

「白紙だった『おやゆび姫』の台本みたいに……今年も、みんなで素敵な思い出をいっぱい作っていきたいですね!」


その真っ直ぐで温かい言葉に、男たちは一瞬言葉を失った。

「……ほんま、ヒマリには勝てへんなぁ。」

環季が降参するように笑う。


「そうだね。僕たちも、ヒマリちゃんと過ごす時間が一番好きだよ。」

斗真が優しく目を細める。


「うん。今年も全力でヒマちゃんを守るから!」

良樹が胸を張る。


「……フン。白紙の台本なら、まだまだ続きがあるんだろ?」

凌がそっぽを向きながら、ボソッと呟いた。

「え?」

「なんでもねーよ。」


◇


少し離れたベンチで、ソノは温かい甘酒を片手に、静かに手帳を開いていた。


『観察記録:年明け初詣編』

凌会長、凶のおみくじ「ツンデレ禁物」の教えを無視しつつも、人混みにて男を見せる。

他3名によるガードはより強固に。

主人公ヒマリさんは、依然として胸のトキメキの正体に戸惑い中。

しかし、確実にその視線は特定の人物を追い始めている。


ソノはペンを止め、賑やかに揉み合う5人を見つめた。

「……さて。」

ソノは手帳を閉じ、ふっと小さな微笑みを浮かべた。

「次は……試練のバレンタインデー、ですね。今からチョコの買い出し計画を立てておくとしましょう。」


冬の澄み渡る空の下、初詣の鐘の音が優しく響き渡っていた。

新しい一年のページが今、賑やかにめくられようとしている――。

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