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ヴィンセントからの誘い 2


 ヴィンセントの申し出にリーシャは驚愕する。

思いがけない事だったし、何より彼は騎士である。

女性騎士も居ない訳ではないが、男性の方が圧倒的に多い。


ヴィンセントは役職のある騎士だ。

リーシャが望む生き方に支障が出てしまうかもしれない。


「あの、それって…どんな?」


「すまない、性急だったな。俺は騎士団特務支部という部署にいる。そこは主に身内の不正が無いかチェックしたり、国同士や貴族間で反乱が無いか見る秘匿性が高い仕事だ。そこで、リーシャの力を借りたい。勿論、周りにはリーシャの心眼の事は喋らない。表向きは俺の補佐という事にする」


「私がお力になれるかどうか…」


「なる。リーシャ、鑑定のスキルは俺が居る特務支部でとても重宝される。だがリーシャの力は物を鑑定出来るだけでなく、人の詳細まで分かる。それは企みを持つ者を相手にする俺たちにとって非常に大きな助けになるんだ」


「……」


「俺は相手の真実を見抜くスキルを持ってる」


「え…」


「相手が真実を話しているか否か、分かるんだ。だから内部調査の部に居る。しかし俺だけの力では限界がある。…どうかリーシャの力を貸してはくれないだろうか」


「ぁ、え、と…」


グイ、と迫るヴィンセントにリーシャは狼狽えた。

ヴィンセントの力を知って混乱もしている。だからリーシャの話も信じてもらえたんだと思考の片隅で思う。


 リーシャは確かに仕事を探さなければならないが、表向きだが彼の補佐をする仕事とは考えてもいなかった。

何処かの店の売子か、或いはどんな事が出来るか時間を掛けて見ようと思っていたのだ。


ヴィンセントの申し出はきっと他人から見たらおいしい話なのだろう。

騎士とは即ち勤め先は王城だ。

平民の暮らしとは雲泥の差。華やかな内装、贅沢な食事、リーシャの前世でも経験した事が無い世界。

見てみたい気もするし、面倒事も多そうだなとも思う。


リーシャは自由に生きたい。


しかし力を知られたらまた利用される人生が待ってるかもしれない。

それは平民として生きていても知られる可能性が無い訳では無いが、王城に勤めたらその方がリスクが高そうだ。


きっと騎士が怪我しているのを見たら堪らず【癒しの力】も使ってしまうかも。

目の前のヴィンセントが怪我や病気をしたら、きっと。


リーシャは後先も考えず力を使うだろう。


もうヴィンセントはリーシャの心の大事な所に居る。

短い時間の中であっても、それは揺るぎない事実だった。


「……というのは全部建前で、本当は俺がリーシャと一緒に、居たい」


「ー!」


そして心の大事な所に居るのはヴィンセントも同じ。


二人はゆっくりより少し早く、しかし確実に。


どうしようもなく、惹かれあっていた。


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