屋敷の地下
「うう、く、臭いです。な、何の匂いですか、これは?」
「・・・思考停止也」
ここは地下室の通路。通路は石作りになっており、湿った空気に何の匂いかは分かりませんが油のような匂いがしました。
隠し扉の奥、階段の下には頑丈そうな鉄で出来た扉が複数あり、どの扉もこれまた頑丈そうな錠前で簡単には開けられないようになっていましたのです。
「頑丈そうな扉ですね。一体、何を隠しているのでしょうか?」
「・・・人に見られたくない物と推察する」
「おお!成る程ですよ!!」
確かに、これだけ頑丈な扉と鍵で守られていると言う事は、それだけ大事で人に見られたくない物に違いないのです。全く、スキヤキは頭がいいですね、自慢の弟ですよ。
「もっとも、僕たちには無駄ですけどね」
「・・・諸行無常」
「それって、どう言う意味ですか?」
「・・・・・・」
・・・知らないようですね。おそらくはただカッコイイから使っただけでしょう。
ちなみに後に邪神様に聞いたところ、仏法の考え方で万物は変化し続けて、永久不変の物など無いと言う意味らしいです。ちょっと、賢くなりましたです。
まぁ、それはそれとして再び【異空間の大鍵】の出番です。全く、今回は大活躍のアイテムですよ。同じ物をスキヤキも持っているので手分けして部屋を調べます。
「ほほ〜、ここは宝物庫ですか?お金や金目の物で一杯なのです」
「・・・こっちは何かの契約書や徴収書のよう也。おそらくは脱税の証拠也」
・・・成る程、盗賊を操る黒幕だけあって相当な悪事を働いているようですね。貴族の地位を利用してやりたい放題とは許せませんね、全く。
「最後はあの部屋ですか」
「・・・慎重に進む也」
僕たちは最後に残された最奥にある扉に目を向けました。
地上や今まで見た部屋に成金貴族が居なかったと言う事は間違い無くこの部屋にいるのでしょう。一体、こんな夜遅くに地下室で何をやっているのでしょうか?やばそうな予感がバリバリですよ。ここは慎重に行くです。
ーーーー(キィィィィィ・・・)ーーーー
僕たちは忍装束を着ている上で、さらに息を殺しながら音を立て無いようにゆっくりと扉を開けました。そして、僕たちの目に飛び込んで来た光景は・・・。
「ゲロゲロゲロッ!!さあ、さっさと『アレ』の在り処を教えるゲコッ!!」
「い、嫌だ!絶対に言うもんか!!うがあぁぁぁっ!!」
何と牛ガエル(?)みたいなカエルの亜人が犬耳の子供を鞭で叩いていたのでした。何て酷い事をしているのですか!!早く、やめさせなくては!!僕は部屋に押し入ろうとしましたが・・・。
「・・・兄上、待つ也」
「何で止めるのですか!?スキヤキ!!」
スキヤキに止められたのです。スキヤキ!どう言う事ですか!?
「・・・我らには関係無き事。この所業を記録して然るべき所に出せば良い也。我らが止める必要無し」
何ですと!?それはつまり、あの子供を放っておけと言うのですか!そんなの事って・・・。
スキヤキは証拠の写真を撮って、違法契約書などをアイテムボックスに詰めました。そして、そのままに帰ろうとしています。
「・・・これであのカエル男は終わり也。後は兵士にでも任せる也」
スキヤキの提案で、この証拠品を敵対している勢力・・・つまり、領主貴族の屋敷にでも置いておけば全ての片付けは領主貴族がしてくれます。この成金貴族と領主貴族が仲が悪いのはかなり有名でゼニゲバさんに教えて貰いました。
そう、僕たちが出る必要は確かにありません。しかし、僕には・・・。
「スキヤキ・・・お前は一人で帰れです」
「・・・あ、兄上?何を?」
「・・・スキヤキよ。一つだけお前に教えてやるのです。僕たちは魔物です。だけど、人と共存するのなら、人と共に生きるのならば・・・心まで魔物になってはいけないと思うのですよ。ここで大切な事を見捨ててしまえば、僕たちは心まで魔物になってしまい人をただ傷つける存在になってしまう・・・そう思うのです」
僕はそう言うと、アイテムボックスからバルムンクを出して乗り込みました。何、ちょっとだけ寄り道をするだけですよ。
「ミサイル発射ぁぁぁぁぁぁっ!!」
「あ、兄上ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
ーーーードカアァァァァァァン!!ーーーー
鉄の扉は派手に吹き飛びました。そして、僕は中に入ると突然の事態に目を白黒させている成金貴族と犬耳の子供の間に割り込みました。
「な、な、な、な、な・・・何だお前はゲコォォォォォッ!!」
「やいやい!この悪党めっ!!事情はよく分かりませんが、多分お前が悪いのでしょう!!よって、お前を成敗するです!!」
「何か思いっきり決めつけられてるゲロッ!?」
カエル男が批難しますが無視です。僕は後ろの犬耳の子供を見ます。犬耳の子供は息も絶え絶えながら僕を見返したのでした。
「もう、安心するですよ。事情は後で聞きますが、ここから出してあげますです」
「・・・・・・あ・・・・・・」
僕がそう言うと犬耳の子供は気を失ってしまいました。相当、痛めつけられていたのでしょうね。体力に限界が来たようです。
「貴様ゲロ!このまま、ただで済ますと・・・」
「思ってるですよ?喰らえです!!」
「ゲロォォォォォォォォォォッ!?」
僕はバルムンクのパンチをカエル男の腹にお見舞いしてやりました。カエル男はまともに入ったようで伸びてしまいました。
「・・・う、臭いです。匂いの元凶はお前の油汗だったですか」
カエル男の近くに寄ると匂いがしたのですぐに分かりました。このカエル男の汗の匂いが石の通路にこびりついていたと言う訳ですね。
「・・・残念ながら、お前は僕たちの事を忘れるのですよ。よって、仕返しなど出来ないのです」
僕は邪神様仕様の忘却剤をドップリとカエル男に飲ませてやりました。これで、数日どころか数年分の記憶を失ったでしょう。
「さあ、行くですよ」
僕はバルムンクに犬耳の子供を背負って地下室を出ました。すると、そこには・・・。
「・・・遅い也、兄上」
スキヤキが愛機のスキヤキに乗っていたのです。そして、スキヤキの周りには警備兵が倒れていました。
「・・・兄上は騒ぎ過ぎなのだ。警備兵が集まって来ていた」
「おお〜!相手をしていてくれたのですか〜?ありがとうですよ、スキヤキ〜〜!!」
「・・・馬鹿な兄上を持つと苦労する也」
「えぇ!?ひ、酷いですよ!スキヤキ〜〜!!」
「敵地で我の名前を連呼するな也!早く逃げる也!!」
「はいです!!」
まぁ、隠密作戦は失敗しましたが結果オーライと言うことにしましょう。悪は滅んだのですからね。そして、僕たちは犬耳の子供を連れて闇へと消えたのでした。




