ウーラカの村
「ええと、ウーラカの村・・・ですか」
僕は村に打たれてあった村の名前が書かれた立て札を読み上げました。
僕たちナベシキーズは、設定を決めた後に村へと向かいましたのです。全く、設定を決めるのに思ったより時間が掛かりました。
もちろん、認識阻害バッチを付けているので村人から見たら只の子供に見える筈ですよ。具体的に言うなら、旅装束を来た子供にでしょうか。顔は兄弟と言う設定なので似せてあり、違うのは女の子であるチャンコとシンボルカラーの髪色だけです。名前は紛らわしいので、そのままで行く事にしました。
「何だ、お前らは?子供だけで来たのか?」
村に入ろうとすると村人であろうおっさんに話かけられましたです。簡素な服に農具を持った、これぞ村人って感じの人でした。
「そうですよ。僕たち四人で旅をしているのです。あ、宿屋の場所とかを教えて頂けると嬉しいのですが・・・」
「・・・訳ありか?それと後ろのデカイのは何だ?」
僕たちを見回すおっさん。おっさんは僕たちの後ろに控えていたある物に目を向けたのです。
「こいつの名は【ロンギヌス】です。僕たちの家に代々伝わるゴーレムのAFで凄く強いのですよ。こいつが僕たちの護衛なのです」
「へ〜、こいつがAFか初めて見たぜ。確かに強そうだな」
そのある物とは邪神様が今回の旅用に作ってくれた完全自動型万能機人【ロンギヌス】です。
【ロンギヌス】は3メートル近くある巨体に銀のボディをしています。バルムンクたちの新たな兄弟機であるこいつは戦闘力も有りながら、僕たちの言う事だけを聞いてくれる万能型のマシンなのです。戦闘から料理、お掃除まで熟せるのですよ。
おっさんはロンギヌスを見上げて感嘆の声を出しました。
「なるほどな。こいつを見たら盗賊たちも襲うのを躊躇うか。お前ら、運が良かったな」
「え?どうかしたのだわさ?」
チャンコが首を傾げておっさんに聞きました。
「ああ、実は数時間前にこの村によく来ていた行商人が盗賊に身包みを剥がされてな。全裸で命からがら、この村に来たんだ。しかも、あまりの事に頭をやられたのか『宇宙人が現れた』とか口走ってたのさ・・・」
「宇宙人?そんなのいるのだわさ?」
「・・・世界は謎に満ちている」
「いっぺん戦ってみてぇな」
それって、僕が森に降りた時にいた人では?それを知らないチャンコたちは宇宙人と言う言葉に驚いています。って、言うか異世界にも『宇宙人』と言う概念があるんですね。
「まぁ、どうせ何かの見間違いだろうがな。それよりも、今言った通りこの辺じゃあ最近盗賊が出るんだ。子供だけで旅するもんじゃねぇぜ。悪い事は言わん、旅なんか辞めてうちに帰った方がいい」
このおっさんは善意で言ってくれてるのでしょう。まぁ、こう言う類いの事を言われるのは想定内です。僕たちは予め決めていた設定をおっさんに言いましたです。
「でも、僕たちにはもう帰る家が無いのですよ」
「大商人だった家が没落したのだわさ」
「・・・父上と母上は蒸発」
「だから、父ちゃんと母ちゃんを探す旅に出たんだぜ」
「お、お前ら、苦労してんだな・・・」
それを聞いたおっさんは涙ぐんでいます。おっさんの涙など気持ち悪いだけですよ。あまり見たくないですね。
「あ、大事な事を聞いて無かったの。これが私たちのお父さんとお母さんだわさ。若い時の写真だけど・・・見た事無いだわさ?」
チャンコは2枚の写真をおっさんに見せました。もちろん、設定の為に用意した奴ですよ。邪神様が適当に送ってくれたのです。
「・・・随分とハッチャケてるんだな」
ちなみに写真の内容はヤンキーがメンチを切っている写真とアイドルが歌いながら踊っている写真です。適当過ぎるですよ、邪神様。ちなみに写真はこの世界にはありません。ロンギヌスの機能で昔に撮ったと言う設定です。ロンギヌスには撮影機能があるのですよ。これで各所の撮影と記念撮影がいつでも出来ます。
「悪いが見た事ねぇな。こんな奴らを見たら間違いなく忘れねぇと思うぞ」
「そうですか、残念だわさ・・・」
「・・・残念無念」
「何処にいるんだ・・・父ちゃん!母ちゃん!!」
「お、お前ら・・・くぅ!親探しの旅か、泣かせるじゃねぇか!!」
・・・この設定に意外と皆ノリノリでした。
確かに家族とかの話は、あまり触れるのを拒まれますからね。重い話なら尚更ですよ。中々、いい考えだと思うです。
「あ、それで宿屋の場所を教えて貰ってもいいですか?」
「ぐすり・・・ああ、宿屋ならあっちだ。向こうに進むと比較的にデカイ家がある。看板も出てるから分かるはずだ」
「ありがとうです〜」
「「「ありがとう、おじさん!!」」」
「おう!父ちゃんと母ちゃんに会えるといいな!!」
僕たちはおっさんに宿屋の場所を教えて貰い、宿屋に向かいました。
今日は宿屋で休んで明日は街とやらに向かいましょう。ちなみに宿屋では一応の部屋は借りますが、部屋にはロンギヌスの映写型転移魔法陣を敷きます。これでいつでも僕たちの家と行き来が出来るのですよ。ロンギヌスを軸にして旅をするのです。
「たのむ!何でもいいから買ってくれ!!」
「いやいやいや、ゼニゲバさん!商品を全部なんてうちが買えるわけねぇだろ!?」
そして、宿屋に向かう途中に道具屋の前を通りかかった時でした。
「そこをなんとか!もう、商人なんてこりごりだ!!俺は街に帰って農業でもして暮らすんだ!!」
パンツ一枚のおっさんが道具屋の親父に商品を売ろうとしていました。ああ、確かに見覚えがあります。着地点に居たのは、確かにこの人でした。
どうやら、この商人さんは旅をするのを諦めたようですね。だから、商品をお金に換えて街に帰るみたいです。現実とは厳しいのですね。
「だから、この馬車も買ってくれ!!もう使わないからな!!」
「だから、金がねぇってんだろ!!」
ほう?馬車ですか?ううむ、馬車に揺られての旅もいいかも知れません。旅とは楽しむ物ですからね。お金は沢山ありますし・・・買っちゃいましょう。それに馬車はロンギヌスに引かせればいいのです。
「おっさん。ちょっといいですか?」
「何だ、お前は?今大事な話の最中なんだ!邪魔をするな!!」
「いえいえ、実は僕たちは馬車が欲しいのですよ。良かったら買わせてくれませんかです」
そう言うと商人・・・ゼニゲバさんでしたか?は僕たちをジロジロと見回したのです。
「お前たちみたいなガキがか?金はあるのか?」
「もちろんですよ。はい」
僕は懐から金貨が詰まった財布袋を取り出しました。
「よし!売った!!金貨10枚だ!!」
まぁ、この金額が適正かどうかは分かりませんが、この財布袋は金貨が無限に出てくる財布袋ですからね。別に端金など渡しても構わないですよ。そんな訳でお金を渡して馬車の所有権を貰ったのでした。
ついでに道具屋が買えなかった道具も買いましたですよ。何かの役に立つかも知れませんからね。持っていて損は無いでしょう。
「後は、どうやって街に帰るかだな」
「おや?ゼニゲバさんも街に行くのですか?僕たちも、明日は街に行くのですよ」
「何?それと気になってたんだが、後ろのデカイのは何だ?」
ゼニゲバさんはロンギヌスを見て言いました。僕はゴーレム型のAFだと説明すると、ゼニゲバさんは僕たちに街までの同行を頼み込んで来ました。
「そうか!それは運がいい!!良かったら一緒に行かせて貰えないか!!」
「ええ、いいですよ」
こうして、明日はゼニゲバさんを連れて街に行く事にしましたです。
まぁ、商人と言う情報源はあった方がいいでしょうし、基本的に街に入るには、身分証が必要ですからね。これで街に入れるでしょう。『旅は道連れ』とはよく言ったものですよ。




