事態は悪化した
「そっちに行ったぞ!!」
「姐御の命令だ!生け捕りにしろ!!」
「捕まえろ!!腕の二、三本目は折っても大丈夫だ!!」
・・・大丈夫じゃねぇよ馬鹿野郎。現在、俺は学校の全ての人間から追いかけ回されていた。
そう、奴らの言ってる『姐御』とはエルちゃんの事である。今やこの学校にいる人間たちはエルちゃんによって支配されたのだった。
あれは学校が始まり午前の授業中だっただろうか。突如として学校が黒い霧に包まれたのだ。『黒い霧』のワードだけで、間違い無くエルちゃんの仕業であると直感した俺だった・・・と言うか考えるまでもないか。
そして、それだけではない。黒い霧は学校の生徒や教師たちに纏わり付いたのだった。纏わり付かれた者たちは破壊衝動が剥き出しになったかのように凶暴になり、公園の魔物のように赤い眼光をしていた。
あっと言う間に学校の人間はエルちゃんの下僕へと早変わり、そんでもって俺を探し始めたのだ。
どうやら、エルちゃんの【憑依】の力が加わり人間までも操れるようになったようだ(格下限定で)。人に取り憑く事である程度の思考能力を得たのだろう、徒党を組んで襲ってくる。
「ちっ!行き止まりか!!」
俺は学校を逃げ回るが、何せ学校中の人間が俺を探しているのだ、すぐに見つかってしまう。ちなみに学校から外には黒い霧に阻まれて外に出れない。転移玉を使えば出れるだろうが、今度は街中とかで、これをやられたら意味が無い。
ならば、どうするかと言うと、俺だって無策で学校に来た訳じゃない。準備は既に整った。何の準備かって?もちろん、反撃のだよ。
「何だ、男子だけか。だったら半殺しでも問題無いな。死ねぇい!!エア・パンチ乱れ打ち!!」
「「「「「ぶげらばぁっ、ぶっちょばだっ!?」」」」」
それはともかく、俺は何とか逃げつつも、男子生徒と男教師だけを迎撃してエルちゃんを探し回っているのだ。エア・パンチの乱れ打ちで男どもを血祭りにあげる俺だった。女には手は上げん、何たって紳士(自称)だからな。
「「「「「見つけたわよぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」」
終わり無く続く増援部隊。今度は柔道部や空手部と言った武道系女子の皆さんだ。彼女たちの身体は女とは思えないほど不細・・・うん、今度も手加減はしなくていいな。
「エア・パンチ乱れ打ち!!」
「「「「「ぽげらばっ、ほんだばげぶっちゃ!?」」」」」
安心するがいい、武士の情けで顔はやめてやったぞ。もっとも、殴ったとしても変わり無いがな。そう、俺は男女平等主義なのだ。さっきと言っている事が違う?・・・気にするなよ。
「「「「「見つけたわよ!!」」」」」
またまたの増援。もう、いい加減にして欲しい。今度は女子の皆さんだ。さて、どうする?今度は殴れないな・・・ならば!!
「スカート捲りハリケーン!!」
不可視の手が奇跡を起こす。瞬時に女子たちのスカートが捲り上がった。この素晴らしい光景を俺は生涯忘れはしない・・・思春期ですから。
「「「「「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」」」」
その隙に俺はスタコラと逃げるのだった。これは全校女子のコンプリートも可能かと思ったそんな時だった。
ーーーーお兄ちゃんって、清々しいほど変態な上にクズだよねーーーー
・・・などと聞き覚えのある声が聞こえたのだった。この声は間違い無くエルちゃんだ。
「エルちゃんか!もう、こんなひどい事は止めるんだ!!見ろ、死にかけているじゃないか!!」
ーーーーやったのはお兄ちゃんでしょう!?私の所為にしないでよ!!ーーーー
エルちゃんは心外だとばかりに返してきた。くう、もう俺の言葉は届かないと言うのか?
ーーーーまぁ、いいや。それよりも、そろそろ屋上に来てよ。待ってるからさーーーー
どうやら、エルちゃんは屋上にいるらしい。ベタと言えばベタだな。散々探したが、逃げ場の無い屋上に本能的に向かわなかった俺が憎い。
「・・・いいだろう。決着を付けてやるぜ!!」
そして、俺は屋上に向かう。ガチャリと屋上のドアを開けて入るとそこに待ち人はいたのだった。
「へぇ〜・・・お兄ちゃんにしては逃げずによく来たね?てっきり、また逃げるのかと思ったよ」
「逃げたいのは山々だが、そうなったら俺を何処までも追うだろ?次は街中になるだけさ。ならば、ここで決着を付けてやるさ」
「へぇ?あれを見てもそんな台詞が言えるかな?お兄ちゃんの為にちょっとハッスルしちゃったよ」
エルちゃんはとあるモノに指を指した。
「・・・おっさん、何て酷い。あの時、おっさんが俺の背を押して囮になってくれなければ、今の俺は無かった。ありがとう、おっさん。いや、猛禽のジョー。あんたの仇は必ず取る・・・成仏してくれよ」
「・・・本当にクズだよね。そんな事してなかったでしょうに。よく、そんな事が言えるよね」
そう、それはボロボロに成り果てた猛禽のジョーだった。ビクビク痙攣しているので生きてはいるようだ。それになんか磔にされているのが気持ち悪い。まあ、生きているならいいや。昨日、異空間に取り残されたジョーは結局、エルちゃんに敗れたのだろう・・・いい気味だ。
「分かったよ。じゃあ本音で・・・けっ!使えねぇ、おっさんだぜ!!傷の一つも負わせられないで負けやがって!!」
「さ、最低過ぎるよっ!?もっと、本音を隠そうよ!?」
・・・どうすればいいんだよ。まぁ、いい。それよりも、今はエルちゃんだ。
「・・・ところでエルちゃん。降参する気は無いか?今なら、まだお尻ペンペンくらいで許してやる。昨日のあの頃みたいに戻れないか?」
「はあ?お兄ちゃん、本当に馬鹿なんだね。あんなの演技だよ。近寄ったのは不思議な力に興味があっただけだから。もう、力づくで聞くよ。それと何で上から目線なのさ?この状況も分からない?本物の馬鹿なの?死ぬの?本当にイラつくなぁ・・・」
グサリ!!・・・と俺の心に鞭を打つエルちゃんのお言葉。これが本当のエルちゃんなのか?俺の天使は死んだのだった。
「・・・そうか。だったら仕方がない。俺も切り札を使うまでだ」
「また、昨日みたいな事を言って。でも、分かってる?昨日みたいなのは無しだよ?また逃げたら、学校の皆・・・ミナゴロシだよ?」
威圧を込めながら、黒い霧から魔物を作り出すエルちゃん。この魔物たちで学校の皆をエサにすると言うことだろうな。
「それは、俺を逃さない為の挑発か?安心しろよ、今度は逃げないさ。俺が勝つからな・・・いや、『俺たち』か?」
「へ?それって、どう言う・・・」
俺は不敵に笑う。さらに、アイテムボックスから取って置きのマジックアイテムを取り出したのだった。
「来い!出番だぜ!!」
それを空に投げると眩ゆい光の奔流が魔法陣を形成し広がっていく。そして、奴らがやって来る。
「ジャジャーーーーン!!・・・です」
そう、やって来たのはモツであった。しかし、それだけでは無かった。
「とうっ・・・だわさ!!」
「・・・我、推参」
「真打ちの登場だぜ!!」
モツの他にも落ちて来るモツとは違う色合いの毛玉たち。これが俺のの余裕の正体だ・・・さあ、始めようか。エルちゃんへのお仕置きをな!!




