霧の魔物
「あはははははっ!!来て、私のお友達!!」
「「げえぇ!?」」
俺とジョーの声が重なる。
エルちゃんが万歳をすると周囲に・・・いや、公園を包むかのように黒い霧のような物が発生して、それが生物(?)の形へと変化していく。それは鳥に犬にネズミ、はては巨人のようなモノまでいた。
「何だ、ありゃあ!?」
「お前は見るのは初めてか?これが異空間だ。たった今、この場所と我らの世界は切り離されたのだ。これでここに入れるのは異能力者のみ。そして、あれが魔物だ。奴は異空間を取り込んだ事で、異空間と守護者である魔物を自由に発生させる力を得たのだ。油断すると・・・死ぬぞ」
「確かに・・・外見からしてヤバイな」
異空間とやらは黒い霧でただ覆われた感じなので、あまり実感はない。だが、魔物とやらは動物やらの形はしているが全身が真っ黒で目だけが禍々しくも爛々と光っている。初めてあれを見て怯えるなと言う方が無理だ・・・滅茶苦茶怖いぞ?
「さあ!遊ぼうよ〜〜〜〜!!」
エルちゃんの号令で襲い掛かる魔物たち。俺はグローブを装備して迎撃を行う。
「くそ!エア・パンチ!!」
エルちゃんによって作り出された魔物たちは、皆機械的と言うか、自我を持って無いように見えた。それはダメージなど関係なく、倒さない限り攻撃し続けてくると言う事であった。しっかりと仕留めるまでは油断が出来ない。
「・・・う〜ん?やっぱり、お兄ちゃん。よく分からないや。その力に異能力を感じないよ?一緒にいた時も分からなくて、戦えば分かるかもと思ったけど駄目だね、降参だよ。ねぇ?教えてよ。私の事を聞いたでしょ?おあいこにしようよ〜〜」
・・・などと今更に歳相応な事を言う。う〜ん、外見年齢は10歳、だが実年齢は20歳か。俺より歳上だが、ババアじゃ無いからロリババアとは言えんな。いや、これは合法ロリだな。
「いや、情報源はこのおっさんだからな。お前からは何も聞いてないから、答える義理は無いな」
「ぶ〜!狡いよ〜〜!!じゃあ、教えてあげるから聞いてよ」
「・・・じゃあ、年齢の秘訣は?」
「もちろん、適度な運動と美味しい御飯だよ!!それと女の子に年齢の話をするものじゃないよ?じゃないと・・・殺サレチャウヨ?」
「怖っ!?」
「・・・貴様ら、余裕そうだな」
・・・などとエルちゃんとくだらない話をする。こうして話をしていると、災厄を起こそうとしているとは思えない。とりあえず、平和的解決を目指して話をしてみるか。
「なぁ?俺だけは助けてくれないか?このおっさんは八つ裂きにしてくれて構わないからさ」
「なっ!?貴様!!」
「え?う〜ん、どうしようかな〜?」
エルちゃんは人差し指を唇の下に持って来て考える仕草をする。そして、答えが決まったのか。満悦の笑みを浮かべた。
「いいよ。見逃してあげる。だけど、条件があるよ。そっちのおじさんを倒してよ。聞いたでしょ?以前、そのおじさんたちに虐められたんだ。ね?どう?私の代わりに戦ってよ」
「う〜〜む・・・悩むなこれは」
「悩むな!!考えるまでも無いだろうが!!相手は魔物使いだぞ!!」
「そう言う差別的発言はどうかと。あと、別におっさんに助太刀する義理も特に無いって言えば無いんだよな・・・」
「貴様!世界がどうなっても良いと言うのか!?」
そう、別に猛禽のジョーに加担する理由は無いのだ。それにジョーと戦って簡単に勝てる気はしないからな。あと魔物使いなのは俺も似たようなものだしな。
それに世界の歪み?確かに思う事はあるが、俺一人くらいサボっていても平気だろ?それ以上に、俺みたいな異能力初心者に重い責務とか背負わせんなよ。俺は個人的な理由でも無ければ動かないんだよ。だって、疲れるからな。
「くっ!もう良い!!行くぞ!エルリア!!日暮の仇だ!!『エアー・スラッシュ』!!」
ジョーは二本指を立てて切り裂くような仕草をしたのだった。すると纏っていた風が指の先端の動きに合わせて刃状のカマイタチを作り出したのだ。やはり、俺との戦いでは本気を出していなかったようだな。
それはそれとして、エルちゃんはカマイタチを躱したが掠ったのか服が破れたのだった。
「きゃあああああっ!?へ、変態!!私を切り刻んで、私を裸にするつもりね!!このエロ筋肉男!!」
「おい!P◯Aに言いつけるぞ!!このロリコン教師!!」
「だから!貴様はどっちの味方だ!!」
俺とエルちゃんからのブーイングにジョーは怒鳴る。おい、ジョー。油断してはいけないのではなかったのか?
「もう、許さないんだから!!皆、合体だよ!!」
「「何ぃ!?」」
数多にいた魔物たちは霧に戻ると一つに集まったのだった。そして、大きな一体の魔物へと変わったのだった。
それはあの魔物たちと同じ真っ黒な体色に犬の背から巨人の胴体が生えており、さらに巨人の背中に羽が生えていると言う奇形と言うか、キメラのような姿であった・・・滅茶苦茶強そうだ。
ーーーーオオオォォォォォォォォ!!ーーーー
キメラは腕を振り上げて大地に叩きつけた。地震のような衝撃が空間を揺らす。狙いはジョーだったようだが、ジョーは上手く躱した。そんでもって、俺にも岩が飛んで来た・・・危ねえな!!
「おのれ!しかし、これしき!!」
「おい!まだ答えを出してないんだぞ!!俺も死ぬぞ!!」
「あ〜・・・そうだったね。でも、もういいや。よく考えたら、情報を聞き出すならお兄ちゃんを殺して憑依させればいいんだよ。そうすれば、知識も吸収されるからね」
「げっ!?そう来たか!?」
そうか、エルちゃんと一つになるんだな。何かエロい・・・じゃなくて、ヤバイ!このままじゃ殺されるぞ!!・・・仕方ないアレを使うか。
「どうやら、本気を出すしか無いようだな。エルちゃん。俺を本気にさせた事・・・後悔するなよ?」
「へえ?何にか見せてくれるの?わくわく」
エルちゃんは無邪気な顔で笑う。いいだろう!見て驚くがいい!!
「猛禽のジョー、エルちゃん・・・さらばだ。リバース!!」
「・・・・・・へ?」
俺はアイテムボックスから転移玉を取り出した。そう、モツの使っている転移玉も既に貰っていたのだ。俺は転移玉を地面に叩きつけて魔法の言葉を唱える。
俺の見ていた光景が切り替わった。
「・・・無事、逃亡成功だな。ジョー、後は任せた」
目を開けると俺は神社にいた。ここまで来れば大丈夫な筈だ。
そして、猛禽のジョー。異空間とやらに一人取り残された猛禽のジョー・・・君の事は忘れない。お前は俺の心で永遠に生き続けるのだ。
まぁ、それは冗談だがな。あのおっさんなら逃げるくらいは出来るだろ。そんな訳で俺は帰路についたのだった。しかし、この事態がさらに悪くなって行くことを俺はまだ知らなかった。




