少女の正体
「・・・で?今日はどうだった?」
時刻はすでに夕方。俺たちは出会った公園に戻って来たのだった。そして、俺は本日の感想をエルちゃんに聞いたみたのだった。
「え?それって何の感想?まぁ、楽しかったか否かは別として初めて体験だったし・・・これから二度と出来ない事だとは思ったよ」
「それは褒めているのか?」
「・・・ノーコメント」
流石のエルちゃんも一日中歩き回ってお疲れなようだ。若干、俺に呆れているように見えるが気の所為だな。
「でも、お兄ちゃんは面白かったかな?初めて会うタイプの人間だったし。てゆーか、馬鹿そのものだったし(ボソリ)」
「ん?何だ?」
「何でも無いよ。あははははは!」
「ふはははははははは!!」
取り敢えず俺も笑ってみた。俺たちの笑い声が公園に木霊したのだった。しかし、そんな時だった・・・。
「やっと、見つけたぞ!!この不良生徒が!!」
「は?」
「え?」
見るからに暑苦しそうなピチピチスーツの親父・・・即ち、猛禽のジョーが突如として出現したのだった。
「くらえ!必殺、飛び膝蹴り!!」
「って、おい!それは洒落にならんから止めろ!!」
飛び膝蹴りをかまそうとしてきた。ジョーの一撃を上手く躱した。ジョーは風の力で体制を直すと俺に言い放った。
「まさか、授業を抜け出して遊び惚けていたとはな・・・何と言う不良生徒なのだ!!大人しく、先生の鉄拳を受けるがいい!!」
「おい!を今の拳じゃ無くて膝だろ!?しかも、昨今で体罰問題が話題となってんのに、昭和あたりの勢いで体罰するのは止めろよ!?」
「ええい!貴様が黙っていれば問題は無いわ!!ふはははっ!!」
「何故に笑う!?」
相変わらず、暑苦しい男【猛禽のジョー】。あれ?教室で何て名乗ってたっけ?まぁいい。ジョーは声を荒げて俺に詰め寄って来たのだった。
「しかも、そんな年端も行かない少女を連れ回していただと!?このロリコンが!いや、ペドか!?貴様の性根は根本から叩き直す必要がありそうだな!!」
「おい、こら!!誰がロリコンにペドだ!!流石にそれは捨て置けんぞ!!もはや、教師も糞もねぇ!!ぶっ飛ばしてやる!!」
誰がロリコンだ!?誰がペドだ!?この親父め!言ってはならない事を言ったぞ!!俺も喧嘩腰になり猛禽のジョーに詰め寄ろうとした。今にも殴り合いが始まりそうであった。
「望むところだ!男と言う生き物は殴り合う事で理解深め・・・ん?お、お前は!?な、何で、こ、ここにいるのだ!?」
・・・しかし、そうはならなかった。猛禽のジョーの表情が一変したのだ。
その顔には、いつもの余裕が吹き飛んでおり、恐怖の表情とも取れそうであった。そして、その対象であろう視線の先には・・・。
「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははっ!!・・・バレちゃった」
エルちゃんは笑う。まるで何かが乗り移ったかのように。その声を聞いた瞬間に、冷たい汗が背中を流れていったのだった。
「・・・え、エルちゃん?」
「あははは・・・何?お兄ちゃん?」
昼間に遊んでいた時とエルちゃんの表情は変わりない。しかし、今のエルちゃんには得体の知れない圧迫感を身に纏っていたのだった。
「・・・君は何者なんだ?」
「私?私はねえ・・・」
俺はエルちゃんに聞いた。そして、その瞬間であった。
「正義の一撃『エア・エルボー』!!」
「なっ!?」
何と猛禽のジョーは能力を使い、エルちゃんに攻撃を仕掛けたのだった。エルちゃんはその攻撃をまともに受けたのだった。しかし・・・。
「ば、馬鹿なぁ!?」
「あははは!残念でした〜〜!!」
エルちゃんは僅かに後方へと動かされただけで、まるで無傷であった。あれを喰らって無傷とはあり得んだろっ!?
「おのれ、化け物め・・・」
「おい!猛禽のジョー!!あの子は一体何なんだよ!!」
俺は猛禽のジョーにエルちゃん・・・あの少女問いただす。ジョーは苦虫を噛み潰したように口を開いたのだった。
「・・・10年前、ある一人の異能力者の少女がいた。その少女は僅か10歳と言う年齢でありながら、無類の強さを持っていた」
ジョーはエルちゃんから視線を離さずに見据えて言葉を続けた。
「その少女の異能力は色々と特殊でな【憑依】と呼ばれる異能力で、死した者の魂を己に憑依させ、知識や能力を手に入れる事が出来る特殊過ぎる能力だった。放って置くには危険過ぎたのだ。そして、組織は少女を利用する為に訓練を施し管理下に置けないかと考えたのだ。よって、我が組織は『管理』と言う名目で少女を監禁したのだ」
【憑依】?いわゆるイタコって奴か?なるほど、死んだ奴と言う条件はあるが、違う異能力者の能力を使えると言うなら確かに最強に近い力だわな。
そして組織はそれを利用しようと、あの子を虐待したと・・・最悪だな組織。
「・・・酷いな組織。少女からしたら恨まれて当然じゃないか?」
「黙って聞けぇい!!しかし、事件が起こった。ある時、とある地に大きな空間の乱れが発生し、解決する為にその少女は解き放たれたのだ。そして、少女はその地で戦い・・・異空間そのものに取り込まれたのだ!!」
「い、異空間に取り込まれた?どう言う事だよ・・・」
異空間に取り込まれる?異空間とやら自体、俺は見た事無いがそんな事があるのか?こいつの話を聞いていると、まるで異空間が意思を持っているみたいだぞ?魔物を生み出す空間としか聞いて無かったんだがな・・・。
「そう、異空間には得体の知れない意思があるのでは・・・とそんか説がその事件以来に生まれたのだ。魔物を生み出すのは異空間と言う自己を守る為の守護者でしかなく、異空間の目的は自己を成長させる事が目的なのではとな・・・」
・・・もう、訳わからんな。話が壮大と言うか、ラノベ的と言うかな。何だ、異空間を放って置くとやがて世界が滅ぶのか?なんか、先が見えるぞ?
「そして、少女は【憑依】と言う異能力を異空間の意思に利用されたのだと。今の彼女は異空間によって逆に支配され、人間と言う力を遥かに超えて異空間を育てる為の存在に成り果てたのだ。見ろ、少女の姿を。髪が白に染まり10年前と同じ容姿をしている。10年前には私も参加したが、奴とは何度も戦った。今は、異空間の歪みが現れた地に度々姿を見せていると報告がある」
・・・なるほど。だから異空間を育てている存在と判断した訳か。異能力者って大変なんだな。よかった一般人で。ってあれ?
「ちなみに10年前の結末はどうなったんだ?」
そうだ、今の話でおかしな点がある。彼女が異空間を育てていると言うならば、成長しきった異空間があるのでは無いかと思ったのだ。10年前にも大きな歪みとやらが出来たんだろ?その結末は?
「・・・10年前は我ら異能力者を纏めてくれた一人の天才の犠牲で事なきを済んだのだ。彼には感謝してもしきれん。彼のおかげで成長しきる前に異空間を破壊出来たのだからな」
「へー、10年前に天才ね〜。ん?どっかで聞いたような・・・もしかして、それって新城の・・・」
「そうだ、私の親友であった男・・・新城日暮だ。知っているのか?あらゆる記録から、奴の事が消え去った筈なのに?」
「・・・まぁ、少しだけな」
・・・やっぱり、新城の兄ちゃんだったか。新城の記憶があるのは妹の瑠衣だけかと思っていたが、もう一人いたようだ。それにしても、地続きと言うか、何と言うか・・・ベタにも程があるな。本人は異世界で元気してるんだけどな。
「ふふふ、懐かしい話ね。そろそろいい?話が終わるまで待ってあげたんだから。感謝してよね?」
悠長に話をさせてくれたエルちゃんに感謝である。全く、気の利く子だな。だけどしたり顔はやめて欲しいな。
「そして、奴の名は『エルリア』。我ら異能力者からは【黒い霧の魔女】と指名手配されている少女だ」
・・・【黒い霧の魔女】ですか。またもや厨二なあだ名ですこと。
そして、その【黒い霧の魔女】ことエルちゃんはやる気満々。戦いは避けなさられないようだな。




