vs猛禽のジョー
「・・・そうか、それは残念だ。では力づくで連れて行ってやろう」
「そっちこそ、見た事も無いような世界に連れてってやるぜ!!」
こうして、俺とジョーはついに衝突した。ちなみに俺の言った『見た事もないような世界』とは、当然モツのいる世界だ。こいつも異世界に捨ててやるぜ。
「先手必勝だ!喰らえ!!エアパンチ!!」
相変わらずのグローブで空気を固めて不可視の拳で殴りつける。しかし・・・。
「ぬっ!?これはっ!?ふんんんぬっ!!」
「げっ!?ありえねぇだろ!?」
何と猛禽のジョーは真正面からエアパンチを受止めたのだ。かなり強めに放った筈なのだが平然としている。
「中々の攻撃であった。しかし、我の鋼の筋肉には効かん!!」
「何が鋼の筋肉だ!お前、今風を防御に使っただろ!!吹かしこくんじゃねえ!!」
「・・・少年よ、それは言わないお約束だぞ?」
そんなお約束など知ったことか!それよりも、エアグローブのパンチが効かないとは予想外だ。
実はモツ・・・いや、新城と関わってから身体を鍛える必要性を感じて、筋トレやジョギングで身体を鍛えていたのだ。しかし、まだまだ鍛錬不足だ。
まぁ、こいつら異能力者と比べれば無駄な事かも知れないが無いよりはマシくらいな気持ちでだ。ちなみにトレーニングの内容は速力上昇が主だ。何故、速力かって?もちろん、いち早く逃げるために決まってんだろ。よって、持久戦となったら不味いのだ。
「それにしてもレアだな。認識阻害に加えて、私と同じような風・・・いや、空気を操る力か。二つの能力。ますます連れて行きたくなったぞ!少年よ!!ハッハッハッ!!」
「気持ち悪いから、にじり寄るなっ!!」
この親父、行動がいちいちキモい。ニタニタと笑いながらにじり寄る姿は本能的な嫌悪感を感じせざる得ない。
「今度はこっちの番だ!ウー、ハアァァァッ!!猛禽ダァァァイブッ!!」
「キショ!!」
猛禽のジョーは風を纏い頭から突っ込んで来た。俺は横に転がるようにして逃げた。俺の身体は猛禽のジョーの起こした風圧で僅かに吹き飛んだ。そして、猛禽のジョーはと言うと、先ほどまで俺がいた場所に突っ込んだのだが・・・。
ーーーーメキメキッ!!ーーーー
それは凄惨な光景だった。俺が先ほどまでいた場所は地面がクレーターのように沈み、その後ろにあった木々までも折れている。
「・・・何て威力だよ」
思わず口から恐怖の言葉が溢れる。陥没の中心にいた猛禽のジョーは再び立ち上がり、俺に顔を向けた。
「・・・さて、準備運動はこれくらいにしておこうかな?降参するなら今のうちだぞ?」
なんか、バトル漫画みたいな台詞を言い出した。何故、準備運動でいきなりダイブをかますのがよく分からない。そして、それに対する俺の答えはこうだ。
「降参?ふん、馬鹿を言うな。勝てる勝負を捨てる阿呆が何処にいる?」
「ほう?まだ、そんな余裕があるとはな。その勢いは良し!!ならば、貴様の本気を・・・見せて見ろ!!」
もちろんハッタリである。俺は今、大金を手に入れて乗りに乗っているのだ。訳のわからない組織などに入れられたら、道具ともども全て没収されるだろう。これからの事やモツの事を考えて、その選択はない。
それにこいつは俺を連れて行くのが目的なのだ。だったら、殺される事はまず無いだろう。ならば、できる限り戦うべきだ・・・あくまで出来る限りだがな。そう、降参などいつでも出来る。
しかし、どうするか。こいつに真正面からエアグローブをぶつけても効かないのは実証済みだ。周りに仕掛けた罠もあの風の鎧の前では無意味だろう。
改めて、猛禽のジョーの能力を考えてみると接近戦においてかなり強力な能力だと分かる。あの風の鎧には銃弾さえも弾くだろう。地中から攻撃しようとしても、空を飛べるのではただの下方攻撃だ。
まさに、攻防一体。接近戦に特化した能力だな死角が無い。ん?死角?しかく・・・視覚?そうだ!!この手があった。俺とした事が・・・卑怯の代名詞を忘れていた。
「くくく、行くぞ!喰らえ!!」
「な、何っ!?」
ーーーーピカッ!!ーーーー
閃光が俺たちを包み込む。そう、俺が使ったのは閃光弾だ。閃光弾による光による目潰し・・・これだ!!目潰しは卑怯攻撃の基本中の基本。そして、光ならば風でも防げない。
「おのれぇ!卑怯なぁぁぁっ!!って言うか、何処から出したのだ!?」
まぁ、アイテムボックスなんて、この世界じゃ俺くらいしか持ってないだろうしな。さらに閃光弾は速攻で使えるようにピンを抜いた状態でアイテムボックスに入れたのだ。アイテムボックスに入れた物は時間の経過が止まる。アイテムボックスの魔法のなせる技だ。
それと、以前に新城が刀を取り出していたが、あれはただ認識を誤魔化す道具で隠していたらしいのだ。そういう魔札と呼ばれるアイテムがあるらしい。ちなみに、この魔札で隠していても異能力者は感知出来るので異能力者には無意味だとか。
そして、さらに俺の卑怯攻撃は終わらない。
「喰らえ!!金的!!」
「€<〒○7%6〜|^☆<×¥♪=*→%^!?」
視覚を奪われて、僅かに歪んだ風の亀裂を俺は見逃さなかった。その僅かな隙間から不可視の手を潜りこませて金的を狙い撃った。
流石の筋肉親父・・・猛禽のジョーもここだけは鍛えて無かったようだ。不可視の拳が股間にクリティカルヒットした。
「今だ!死ねぇぇぇぇっ!!」
金的の痛みで風の鎧どころでは無くなったようだ。猛禽のジョーを包んでいた風の鎧が消えた。狙うは今だ。今ならば、エアグローブでダメージを与えられる。
「おのれぇぇ!この卑怯者があぁぁぁぁっ!!」
「ありがとう!最高の褒め言葉だ!!」
俺は猛禽のジョーを畳み掛けようとした・・・しかし。
「ぐっ!!こうなればっ!!」
「なっ!?逃げるのか!卑怯者!!」
「貴様にだけは言われたく無いわ!!それにこれは戦略的撤退だ!!俺は再び貴様の前に現れる!それまで首を洗って待っているがいい!!フハハハハハハッ!!」
そんな捨て台詞を吐いて空を飛んで逃げる猛禽のジョー。あっと言う間に空の彼方に消えてしまった。まぁ、俺の勝ちと言う事だろう?しかし、目潰しなど何度も通じはしないだろうな。次会う時までに対策を考えておこう。
・・・そんなこんなで疲れた身体を引きずり帰路についたのだった。




