猫喫茶(異世界版)
「おお!ケモ耳です!ケモ耳がいるですよ!?」
僕たちは今、王都北の大通りを歩いているのです。大通りは中央区の王城や観光庭園に向かって伸びており、中央区から全ての区に行ける街の造りらしいです。つまり、四区画すべてに王城へ向かう大通りがあると言う事でしょう。
大通りまで来ると人族だけでは無く亜人族の方々が歩いていました。
それは、身体の一部が獣になっている種族【獣人族】や、髭もじゃな【ドワーフ】、小柄な【ホビット】と呼ばれる色んな種族がいました。ちなみに【エルフ】はかなり珍しいみたいですね。
「こら!あまり騒がないの。まぁ、学園には亜人族が居なかったから、見慣れてないのはわかるよどね」
「え?学園には居ないのですか?」
ブランさんいわく、獣人族さんたちは実践派、ドワーフ族は鍛治が主なそうです。つまり、獣人族は冒険者を育てる学園には入らないでいきなりに冒険者になり、ドワーフは戦士もいますが、殆どが鍛治職人になるみたいです。
「そうね。彼らの身体は人族よりも頑丈よ、勿論精神もね。だから、厳しい戦いにも耐える気概があるのよ。それとこの国にいる亜人族は殆どが冒険者なのよ」
何でも、二百年程前は対立していたようですが、今では和解し、冒険者に所属する亜人族さんたちがこの国に滞在しているそうです。
この国は実力主義らしいですからね。その方針は悪い事ばかりでは無いのでしょう。実力があれば人族が多い中で、自らの居場所を確保できるのですから。
「じゃあ、まずはお昼御飯を食べましょうか。リンダさんもご一緒にいかがですか?」
「え?う〜ん、私は遠慮させて貰うわ。さっき食べたばかりなの。食べすぎると体重がね・・・」
「おや?動くのが仕事の冒険者さんが体重の心配ですか?・・・ひいっ!?ごめんなさいです!」
「・・・モツちゃん?そこから先は言っては駄目よ。女の子はいつでもスマートでいたいのよ」
言った途端にリンダさんに睨まれましたです。前にもありましたね、こんな事が。僕は慌てて謝りました。目が尋常じゃ無かったですからね。ブランさんのフォローもあり、何とかリンダさんを宥めてくれました。
「・・・そうですか。では、1時間後にここで待ち合わせしましょうか」
「ええ、それでいいわ。店までは護衛をするわ。私はその辺で暇を潰しているから。1時間後に会いましょう」
「はい」
「はいです!」
僕たちはブランさんがあらかじめ決めていた店に行きました。その場所とは・・・。
「「「「いらっしゃいませニャ〜〜!!」」」」
可愛い猫さんたちが沢山いる喫茶店でしたです。
猫さんたちは猫がそのまま二本足で歩ている感じでした。何とか言うか、某狩りゲーのオトモな猫さんを想像するといいですよ。
猫さんたちは猫の亜人では無く、僕と同じ魔物・・・猫妖精と呼ばれる妖精種だそうです。
ちょこちょこと愛嬌がある仕草が可愛いと今、王都で大人気の喫茶店らしいですよ。ブランさんも女の子。前から興味があったみたいですね。
でも、ブランさん!僕と言う従魔がいながら・・・きいぃぃぃっ!!
「ご注文は何ですかニャ〜?」
「牛丼を頼むです!勿論、汁だくですよ!!」
「・・・はニャ〜?」
「こら!モツっ!!」
僕は不機嫌を微塵も隠さずに、嫌がらせで汁だく牛丼を注文しました。くくく、さあ?どうしますか?汁だく牛丼など知らないでしょう?さあ!困るが良いのですよ!!
「・・・どうしましたかニャ?」
「ニャ〜?店長〜、このお客様がニャ〜〜・・・」
困っている猫店員。すると、奥からこの店の店長と呼ばれる猫さんが現れたのです。
「お客様ニャ?一体、どうしたのですかニャ?」
「どうしたもこうしたも無いです!僕は今、牛丼が食べたいので・・・はうぅぅぅです!?」
ーーーードキン!!ーーーー
・・・次の瞬間、僕の胸は大きく高鳴ったのですよ。
「ニャ?お客様?どうしましたか、ニャ?」
アーモンド型の可愛い瞳が僕を写しているです。滑らかでいて艶のある銀色の毛並み、鈴のような美しい声。長く伸びたしなやかな尻尾。その可憐な姿に僕の心は鷲掴みになりましたのですよ。
ーーーードキン!ドキン!ドキン!ーーーー
僕の胸は今、猛烈にな勢いでビートを打ち続けているのです!!あああ、止まれ!静まるですよ、僕の心臓!?でも、あああ、止まらないですぅぅぅ!!
「・・・ぼ・・・」
「ぼ・・・ニャ?」
僕の言葉をおうむ返しする彼女。ああ、そんな仕草も・・・。
「僕と結婚して下さいですっ!!」
「・・・ぶっ!?(ブランさんが水を吹き出す)」
「・・・・・・・・・・・はい?・・・ニャ?ニャ〜〜!?」
僕はアイテムボックスから花を取り出すと彼女の前に差し出しました。
「一目惚れしましたです!僕と付き合って、いえ!結婚して欲しいです!持てる限りの力を使い幸せにするですよ!!」
僕の一世一代の告白が静まった店内に響き渡ったです。店内にいた他のお客さんもその他の店員さんも・・・皆、唖然としていたのです。
「・・・絶対とは言わないのね。って、そうじゃない!モツあなた!?どうしたのよ!?正気に戻りなさい!!」
そして、正気に戻ったブランさん。ブランさん、僕は正気ですよ。その上で告白をしているのです。
「あと、あの・・・「邪魔するぜ!!猫どもっ!!」・・・ニャア!?こんな時に次から次に何ニャ!?」
しかし、彼女の返事は聴けなかったです。
何故なら彼女は困った表情をして口を開けようとしたその瞬間、野太い声によって遮られたのです。誰ですか!空気の読めない馬鹿は!!
「おうおう、店長猫さんよ。借金を返して貰いに来たぜ?金貨1500枚(日本円にして約1500万)、耳を揃えてだしな」
声の持ち主は筋肉ムキムキのスキンヘッド男でした。なんと言うか、小者臭が凄いです。まさに、チンピラと言う感じでした。おまけに手下が2人いるのですよ。
そして、やり取りからこのハゲは借金取りのようですね。この場の空気を無視して僕のマイハニー・・・店長猫さんの前に図々しくよって来ました。
「で、でもですニャ。支払いはまだ期間があった筈ですのニャ〜?」
「うるせぇ!気が変わったんだよ!!それと、借用書に書いてある筈だ。返却日は概ね変更される事があるってな!!」
「あ、あ、あ、そんなの詐欺ですニャ〜!?」
・・・何と言う杜撰な契約なのでしょうか?初めから詐欺を行う気満々な借用書じゃないですか。一体、どうしてそんな契約を・・・。
「ゲラゲラゲラ、俺を恨むなよ。魔物相手に金を貸してやったんだからな。普通なら魔物なんかに金貸しなんざしねぇんだぜ?もっと感謝して欲しいくらいだ」
・・・どうやら、何処も猫妖精さんにはお金を貸さなかったようですね。この悪党以外には、それで仕方なくお金をかけ借りた訳ですか。
「でも、お店がやって軌道に乗り始めたのですニャ!お願いしますニャ!もう少し待って欲しいのですニャ!!」
「うるせぇ!契約は契約だ!!払えなきゃ、奴隷にでもなって貰うぞ!!猫妖精は珍しいからな、高く売れるぞ。おい!お前ら!!こいつらを連れて行け!!」
「「へい」」
「「「ニャ〜〜〜〜!?」」」
店内に響く、悲壮な猫妖精さんたちの声。猫妖精さんたちはあっと言う間に手下たちに捕まったのでした。
何と!僕のマイハニーを売る気ですか!?だったら、僕が買いま・・・って、そうじゃないです!!そんな事はさせないですよ!ここは僕の行きつけ(になる予定)なんですから!!
「待つです!お前ら!!」
「ああん!?何だお前は!!」
僕はハゲの前に立ち塞がりました。ハゲたちがガンを飛ばしますが、僕は怯みませんよ!!
「金貨1500枚?だったら僕が立て替えてやるです!!だから、彼女たちを降ろすです!!このステンレスハゲ!!」
「誰がステンレスハゲだ!!しかし、お前が立て替えるだと?面白え、じゃあ金貨1500枚をさっさとだせや!!」
「言われなくとも、出してやるです!!」
僕はアイテムボックスからお金を取り出しました。実は皆に内緒で錬金の万能窯で金貨を量産していたのですよ。邪神様が絶対に必要になる時が来ると言っていましたのです。
『・・・いいかモツよ。金があるイコール幸せではない。しかし、金があれば人の世界の大抵の事は乗り切る事が出来る。何が言いたいのかと言うと、持って置いて損は無いと言う事だ』・・・と。
そして、その時が来ました。邪神様はこの時の事を予見していたのですね!ありがとうございますですよ、邪神様っ!!
ーーーージャララララッ!!ーーーー
アイテムボックスから止めどなく流れ出る金貨の奔流。それはあっと言う間に店内を埋め尽くしたのでした・・・少し造り過ぎましたかね?
ハゲたちは勿論、ブランさんに猫妖精さんやその他のお客さんも唖然としています。
「さあ!1500枚と言わずに好きなだけ、持っていくです!!ただし!もう二度とここには来るなですよ!!」
僕の声がお店に響き渡りました。・・・これで万事解決ですね。




