邪神の逃走劇
「畜生、まだいやがるな・・・はぁ〜」
俺は学校の校門を見て溜め息を吐いた。
そう、俺が校舎から覗く視線の先。そこには昨日の金髪美少女ツインテールが他の学生たちの視線を集めていたのだ。
どうやら、俺の制服からこの学校を見つけたらしい。
朝の登校時刻と帰宅時刻を狙って俺を見つけようとしているのだ。朝に遅刻していなかったら、危うく見つかる所だったぜ。
「さて、どうするか・・・」
裏口から出るか・・・とも思ったが、遠くから裏口を見てみたらそちらでも、見覚えが無い美少女が佇んでいた。確信は無いが、おそらくはあの少女の仲間だと思われる。と言うか同じ制服を着ているから仲間だろう。
・・・うん、危ない橋は渡るべきじゃ無いな。
正門も駄目、裏口も駄目ではどうするか。ならば、横を狙うか?即ち、塀を乗り越えて逃げるのだ。
よし!善(?)は急げだ!!俺は塀を乗り越える事が出来るスポットに向かおうとする。しかし・・・。
「お〜い、◯◯!!よかった。まだ残ってたんだな。一緒に仕事をしようぜ」
しかし、クラスメートでもあり、数少ない友人から声をかけられたのだ。太っちょでメガネをかけた友人。こいつの名は・・・いや、どうでもいいな。『M・M』とでも覚えていてくれ。
「仕事?一体、何だよそれ?」
「ああ、校門の美少女から頼まれたんだよ。もし、学校から不正に外へ出ようとしている奴がいたら教えてくれと。もし、見つけたらご褒美をくれるんだと」
「お前はそれを引き受けたのか!?どう考えても怪しいだろうが!?」
「でもさ。恥ずかしがり屋な顔をしてお願いして来るんだぜ?拙者、一発KOで御座るよ」
「ええい!いつも二次元嫁の話しかしない男が・・・いつも言ってたあの子はどうした!?浮気だぞ!!」
「うぐっ!そ、それを言われると・・・じゃあ、またなで御座る〜〜」
「それと、次に会う時までにキャラを安定させておけよ!!絡み辛いぞ!!」
俺の忠告を背にして『M・M』は去って行った。しかし、どうするか。この分じゃ、塀を乗り越えるどころか、抜け道まで駄目そうだ。
俺はつい、懐に忍ばせているグローブに目をやる。
(殺るか・・・冗談だけどさ。だが、いきなり奇襲されれば何とかな・・・いや、どんな犯罪思考だよ!?)
・・・やばいな。グローブを得てから、思考がドンドン犯罪者みたいになっていく。これが力を得た者の咎か・・・などとふざけている場合では無い。真面目にどうするか考えなければ。
「おい!まだいたのか!?さっさと帰れ!!この帰宅部がっ!!」
そんな時に、又しても声がかけられた。そいつはいつも嫌味を放つ野太い声の筋肉教師の奥田・・・通称『オーク』だ。覚えなくても良いどうせ、これきりの登場だ。
オークは罵詈雑言を周囲の生徒に放っている。そして、俺はオークの背を見ていて名案を思いついたのだ。
(・・・悪いなオーク。俺の為に犠牲になってくれ)
俺は心の中で平謝りをすると、何のためらいも無くグローブをはめた。
このグローブの名は【エアハンド・グローブ】と言う。その効果はグローブをはめた者を中心に30m程の範囲に見えない手を作り出せるのだ。それはイメージにより大きくする事も可能で重い物でも持ち上げる事が出来るのだ。
(安心しろ!殺しはしない!!)
そして、俺は積年の恨みを込めてグローブで手を作り・・・オークをぶん殴ったのだった。
ーーーーぶひいぃぃぃぃっ!?ーーーー
オークは豚みたいな声を出して倒れたのだった。それも当然、俺の全力の一撃が後頭部にクリティカルヒットしたのだから・・・一応、言っておくが死んではいないぞ。
その犯行は衆人観衆もと堂々と行われた。しかし、人々の目には突然に倒れたとしか写っていないだろう。よって、俺が罪に問われることは無い・・・まさに完全犯罪である。
「救急車を呼べーーっ!!奥田先生が倒れたぞーー!!」
俺は叫んだのだ。学校は救急車を呼び、騒然となった。そして、その中には歓声の声が入っていたのだった。
ーーーーピーポーピーポー!!ーーーー
救急車のサイレンの音が聞こえる。そして、オークに注目が集まる中で、こっそりと学校を抜け出したのだった・・・完璧だ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「・・・ふ〜。ここまで逃げれば大丈夫だろう」
悠々に学校から逃げ出した俺は人気の無い神社で一息をついた。
「・・・実に懐かしいな」
子供の頃、誰しも秘密基地を作った記憶はあるだろう(多分)。ここは昔、俺が秘密基地と呼んでいた場所だった。よく親に叱られたらここに来たもんだ。
・・・そんな子供の時の事を感慨深く感じていた時の事だった。
ーーーーげふっう!?ですぅぅ!?ーーーー
「・・・ほげらばっ!?」
何かが俺の頭に落ちて来たのだった。いや、この感じ・・・なんか、デジャビュがあるぞ!?ま、まさか!?
「じゃ、邪神さま!?また、会いましたですね!!」
「・・・やっぱり、お前かよっ!?」
そいつは俺が作った育成モンスター・・・『M2』こと『モツ』であった。




