モツ、王都へ行く
ーーーーガタガタガターーーー
皆さんこんにちは。僕はキュートで学園の人気者でもある魔物、モツです。
僕は現在、学園の校門前にある馬車乗り場にいます。これから、馬車に乗り王都へ向かうのですよ。
「意外と暇ですね〜」
「まぁね。待ち時間なんてそんなものよ。私たちが予約した馬車が来るのはあと10分後くらいかしら」
僕の主人(?)であるブランさんが通うレッドランド冒険者学園と王都の距離は馬車で約3、40分くらいの場所にあるそうです。
学園の関係者は飛び込みで馬車に乗る事も出来なくは無いですが、基本的に予約をして乗るようですね。料金は学園関係者ならば無料みたいです。
ちなみに予約制なのは、何でも貴族などと相席なったら空気が悪くなる事があるからだとか。それを防ぐ為の処置らしいです。
学園内では身分の乱用などは禁止されていますが、ここはもう学園の外ですからね。身分の差と言うものがあるようです。
「それと絶対に私から離れないでよ、モツ。従魔の証を付けているとは言っても、あなたは魔物なんですから。余計な危険避ける為にもね」
「・・・・・・了解です!」
「今の間は何よ?何か信用出来ないわね」
「気の所為ですよ」
全く、ブランさんは勘繰りをし過ぎですよ。僕1人(1匹)で王都を見てみたいなどとは考えていないですよ。王様の住むお城に行ってみたいなどとは考えてませんからね・・・本当ですよ。
「まぁ、夕方には帰るから平気だとは思うけどね。今回の目的はちょっと魔法道具を買いに行くだけなんだし」
ブランさんは僕と契約し【テイマー】と言う職になり、支援魔法を本格的に学んでいます。その事で専用の本や道具を買いに行くのです。
学園にも購買部はありますが、基本的な道具以外は注文制で手に入るには時間とお金がかかるとか。貴族なのにお金があまりないブランさんは予算をケチる為に学園で注文せずに王都に買いに行く事にしたようです。
そう言えば、今はブランさんが入学して約一ヶ月くらいです。ちょうどGWの時期にあたりますか、異世界にもGWがあるのには驚きましたよ。
「ブランさん。買い物をするなら、これを使って見ますか?」
「何よ、それ・・・眼鏡?」
僕が取り出したのは何処にでもありそうな普通の眼鏡・・・ではありません。
「これは例によって邪神様から貰ったマジックアイテムで【鑑定眼鏡】と言う物ですよ。これをかけて物や人を見ると眼鏡が対象を分析して、簡単な説明文を出してくれるです。とても、便利ですよ」
「・・・それ、便利どころか国宝級のマジックアイテムじゃないかしら、本当ならだけど」
ブランさんは怪しい物を見る目で鑑定眼鏡を見ています。そして、眼鏡をかけて僕を見ました。今、眼鏡には『鑑定中』の文字が出ているのてわしょう。
「ちょっと、恥ずかしいですよ!僕を見ないで下さいです!!」
「・・・・・・ぷっ」
「何か笑われたです!一体、何が書かれてあったですか!?」
僕を見るなり吹き出したブランさん。失礼ですよ!!
ちなみに後で聞いたらこんな感じだったらしいです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
名前:M2(愛称:モツ)
種族:不明
性別:不明
年齢:3週間くらい
性格:かなり能天気
戦闘力:雑魚そのもの(ただし生身)
属性:あえて言うなら『無』・・・未覚醒
説明:自由奔放、いい加減、お調子者の小型モンスター。すぐに調子に乗り、空気を読む事が無いので取り扱いには要注意。好きな物は甘い物。好物を与えて餌付けするのが良し。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・・・何ですか、この悪意を隠そうとしない説明文は?どうやら、鑑定眼鏡は邪神様が説明している風になるようですね。
「・・・まぁ、それはそれとしましょうか。馬車が来たみたいね。乗るわよ、モツ」
「ちょっと、スルーですか!?鑑定結果を教えて下さいです!!」
「馬車の中でね。ええっと、予約席は・・・」
こうして、僕は馬車に乗りました。始めての王都、沢山の人々が暮らす街。そこには一体、何が待っているのでしょうか?楽しみで仕方ありませんです。
「空が青いですね〜。そう言えば、空は異世界も青かったですよ」
いつかの異世界。邪神様がいる世界でみた空も青かったです。僕は、ふと邪神様を思い出して空を見上げたのでした。今頃、何をしているのでしょうか。
〜〜〜〜〜〜〜現代世界にて・・・〜〜〜〜〜〜
「・・・やっちまった」
ガヤガヤと喧騒の音が聞こえる町の中。俺は青い空の下、手に装備したグローブを見て、ポツリと呟いた。
俺はモツから『邪神様』などと呼ばれているが、ただのプログラミングが趣味の高校生だ。たまたまに俺が作った育成モンスターが異世界に落ちて、モツの未知なる世界での活躍を眺めているのだ。
モツにはプログラムしたアイテムを実体化して送る事が出来る。もっとも、それは異世界での話でこちらの世界には無意味で関係の無い事の筈だった。この前までは・・・。
先日に、まさかのモツがこの世界にまでやってきたのである。
そして、クラスメートと異世界へ消えて、その時に渡されたマジックアイテムだけが残された・・・うん、自分で言っといて何だが訳がわからないな。
モツの持つ道具はこの世界でも使用可能であった。俺の考えたデータ上にしか存在しないモンスターだけでなく、道具までも実体化をしたのだ。驚きを禁じえない。
まぁ、それはさて置き。『魔が差す』と言う言葉がある。つい、悪い誘惑に負けて悪事をしてしまう事の喩えだ。
今の俺の状況を説明するにはぴったりの言葉である。何故なら、俺の手にはそのマジックアイテム・・・グローブとある物が握られていた。
それは町で老人相手に暴力を振るっていた態度の悪い怖いお兄さんから掠めとった財布である。いや、何かすげぇムカついたら、衝動的にやってしまった。
そう、例え悪人だとしても盗みは盗みだ。
モツのマジックアイテム。それは人を欲に走らせたり、狂わせたりする力を持っていた。これを使えば、容易く人生勝ち組になれるし、悪意を持って使えば完全犯罪を可能になってしまうのだ。
それ故に、気軽に使用など出来ない・・・出来ない筈だった。いや、俺は耐えようとしたんだ!誘惑に負けまいとしたんだ!!だけど・・・。
「・・・意思、弱いな俺。ダメ人間だ」
・・・皆様に謝罪を申し上げます。この度は深くご迷惑をお掛けし申し訳ございませんでした。
「・・・おお。意外と入っているな」
そして、俺はスゴスゴと隠れるように帰路へとつくのだった。




