第2章プロローグ
・・・そこは酷く冷たく恐ろしい世界だった。
「・・・あれ?お母さんって誰だっけ?お父さんって何だっけ?」
それは、度重なる虐待のような『訓練』によって私の心までも凍り付かせてしまった。
私は何も無い、いや正確にはトイレと粗末な机とベッドだけが置いてある部屋に1人いた・・・まるで監獄である。
初めの頃は毎日が辛く、『ここは地獄だ』『死にたい』とすら思っていた。だが、いい意味でも悪い意味でも人は慣れる動物だ。
「・・・すっかり慣れちゃた」
耳を澄ませば、ここの管理と監視をしている監察官がコツコツと廊下を歩く足音が聞こえてくる。初めの頃はビクビクしながら聞いていた。しかし、今はもう慣れた。慣れてしまった。
いつかは救いが来ると願った時はあった。私を助けて下さいと祈った時はあった。だけど、そんな願いや祈りは届いた試しがなかった。
・・・故に私は心を閉ざしたのだ。
そうすれば、もう傷つかなくて済む。もう泣かなくて済むから。
「・・・まだかな。今日は遅いな」
監察官が通り過ぎてから、だいぶ時間が経った。いつもの管理スケジュールならば、そろそろ食事の時間の筈だ。
食事は部屋の配給用に空いた穴から毎日決まった時間に配給される。
材料費をケチられて作られたような不味いパンとスープだが、貴重な栄養源だ。私は生きる為に仕方なくそれらを口にするのだ。
・・・ああ、私はまだ希望に縋っているのだろう。死にたいと思っていた筈なのに、死ぬ勇気が無い。自分の意志の弱さに吐き気がする。
そして、今日も何時ものように訓練をするのだろう・・・そう、諦めていた。しかし・・・。
ーーーーギイィィィ・・・ーーーー
鍵を何重にも掛けられた重苦しい扉が開いたのだ。
「・・・え?」
いつもこの部屋を出る時は睡眠薬を飲まされたり、ガスで眠らされてからいつの間にか移動させられていた筈なのに・・・。
今日の私は意識を覚醒したままに扉が開くのを見ていた。扉から漏れる光はとても眩しかった。
・・・はたして、この光は私にとっての『希望』何でしょうか?私は呆然と扉が開かれるのを、見ていたのだった。




