洞窟より撤退
「うぷっ・・・。も、もう2度とあんたの運転するモノには乗らないからね・・・」
ここは洞窟の中。救出の対象であるゴールドクラスを前に、ブランさんは乗り物酔いをしたご様子です。ならば、これを出しますか。
「ああ、そう言う事ですか!では、どうぞです。これは【超ポーション】と言って回復から状態異状、更には酔い止めにも効果のある一品ですよ。ちなみに僕はすでに飲んでますから心配はしなくていいですよ」
「そう言うのあるなら、早く出しないよ!って言うか、自分だけ飲んでたの!?」
「・・・さあ、早くラブさんたちを助けましょう!!」
「誤魔化すなっ!!」
僕はブランさんの抗議を背にラブさんたちに近づきました。そして、彼らに巻きついていた蔓を引きちぎります。ふぅ〜、これで安心ですね。
「ラブ?ねえ、ラブっ!!生きてる!?ねぇ!」
ブランさんはラブさんに駆け寄ると安否を確認する為に懸命に話しかけました。
「生きてはいるけど、衰弱が激しいわ。どうすれば・・・」
「その【超ポーション】を与えればいいのでは?衰弱にも効果があるはずですよ」
「あ!そうか!!ほら、ラブ。飲んで・・・」
「口移しっ!口移しっ!」
「うっさい、馬鹿っ!!」
ガビーン!?ブランさんに馬鹿呼ばわりされたです。おふざけは程々にするべきでした。
「うう・・・こ、ここは・・・。っ!?ブ、ブラン!!何であなたがここにっ!?」
「何でって助けに来たのよ!!さあ、早く学園に帰りましょう!!」
【超ポーション】が効いたのか、ラブさんやその他のゴールドクラスの皆さんは全員目を覚ましました。
「誰があんたなんかとっ!!」
「何よ!心配して来てあげたのに!!」
「別に頼んでないわ!!」
激しく言い争う2人。これ、いつ終わるんですかね。早く、この気味の悪い洞窟から出たいですよ。あっ!そうだ!!
「・・・ブランさん、ブランさん」
「何よ!邪魔しないで!!・・・うぐっ!?」
「さあ!ラブさんもですよ!!」
「ブ、ブラン!?ちょっと、何を・・・うぐっ!?」
おやおや、流石は双子ですね。飲んだ反応がそっくりですよ。ちなみに今飲ませたのは【友錠剤】と言う薬です。これを飲むとあら不思議・・・。
「ブラン・・・今までゴメンね。辛くあたったりして」
「ううん。いいの、だってこうして謝ってくれたんだもの。全部、水に流すわ。仲直りしましょう」
「ぐすっ。ありがとうブラン。今まで散々酷い事をして来たのに・・・」
「いいのよ。姉妹だもの」
「「うふふふふふ・・・」」
2人は今までの事を謝り、許し合って仲直りしたようですね。無事、一件落着です。
この薬は一錠を2つに分ける事が出来ます。その片方づつを飲む事で友情が芽生えるのですよ。素晴らしいアイテムでしょう。
『・・・いいのか?こんな、力尽くで?』
「今はこう言う時と場合ですしね。ここから出たら喧嘩するなり、話すなりすればいいですよ。それに見せかけから始まる友情もあるですよ・・・多分」
『まぁ、『雨降って地固まる』って事でいいか』
「何ですか、それ?」
邪神様いわく、争い事をした後で信頼関係などが生まれると言う意味の諺らしいですね。また、少し賢くなりました。
ーーーーギギギギ、マ、マテェ!貴様ラッ!!ーーーー
「な、何だありゃあ!?」
そんな時でした。爪で黒板を引っかくような、不快な金切り声が聞こえて来たのは。声の方向に目を向けると、先ほど壁にめり込んだ筈の妖精がボロボロの姿で立っていました・・・生きてたんですね。
ちなみに声を上げたのはゴールドクラスの男子生徒ですよ。
「何ですか?僕たちは帰りますから引きとめないで下さいです!!」
「人ヲ跳ネ飛バシテオイテ、言ウコトガソレカッ!?タダデ帰ス訳ガナイダロウッ!!」
おお、妖精さん無茶苦茶怒っているですよ。鬼の形相と言うのをしています。
『怒るのは、当たり前だろう』
「あの変形パーツを作った邪神様には言われたくないですよ!?」
「何ヲゴチャゴチャ言ッテイルカッ!コノ間抜ケ顔メッ!ブチ殺シテヤル!!」
「何ですとっ!?誰が間抜け顔ですかっ!!愛嬌の欠片も無いお前よりはマシです!!」
こちらでも始まった醜い言い争い。しかし、ブランさんとラブさんと違いこいつとは敵同士。こいつはあっさりと暴力と言う手段に出やがりましたです。
「死ネーーーーッ!!」
「くっ!喰らうかです!!バルムンク!!」
僕はバルムンクを呼び出しました。バルムンクは近くにあるならば、呼べば来るですよ。妖精の声で洞窟に生えていた蔓が一斉に襲いかかって来たのです。
間一髪セーフです。車形態のバルムンクのバリヤにより、蔓の攻撃をしのぎました。今度はこっちの番です!
「もう一度、轢いてやるですよっ!!喰らえっ!!」
「誰ガ2度モ喰ラウカッ!!」
「あっ!狡いですっ!!」
あろう事か、妖精さんは空を飛んでバルムンクの攻撃を回避しました。何という事でしょうか・・・車形態では突撃しか出来ないので、空にいるこいつを攻撃する事が出来ませんです。
「チッ!オカシナ乗リ物ニ乗リヤガッテ・・・。コウナッタラ仕方ガ無イ。切リ札ヲ使ウカ・・・」
「なあっ!?」
突然、妖精さんの身体が禍々しい魔力を放ち出しました。するとそれに呼応するかのように、洞窟が崩れ出したのです。
ーーーーゴゴゴゴゴ・・・ーーーー
くっ!こいつ!洞窟ごと崩すつもりですかっ!?ならば、バルムンクで脱出を・・・ああ!しまったです!!
「・・・何て、事ですか」
「どうしたの?モツ」
「定員オーバーです。8人も乗れないですよ」
「「「「「「「なっ!何ですって〜〜!!」」」」」」」
全員の声が洞窟に響きます。その振動か更にガラガラと崩れていく洞窟。
「安心して下さい!僕には転移機能を持ったマジックアイテムがありますから!!これでアイアン寮の僕の部屋に転移出来ます!!」
そう、いつかの異世界からでさえ帰還したマジックアイテムです。
丸いガラス玉のようなそれは地面に叩きつけて割ると一瞬で魔法陣を形成して転移が可能になるですよ。そして、魔法の言葉を唱えれば、あら不思議。あっと言う間に転移します。
「行くです!!」
ーーーーパリン!!ーーーー
転移玉が割れて魔法陣が形成されました。さあ、後は飛び込むだけですよ!!
「さあ!早く、飛び込むです!!そして、魔法の言葉を言うです!【リバース】っと!!」
「よし!【リバース】!!」
「もう、懲り懲りよ!こんな場所は!!【リバース】!!」
次々に魔法陣に飛び込むゴールドクラスの面々。しかし、このままスムーズに逃げられるかと思いきや・・・そうは行きませんでした。
「きゃあっ!?」
何とラブさんが蔦に絡まってしまったのです。こんな事をするのは奴しかいないです!!
「ギギギギ!逃スモノカト、言ッタダロウ!!」
「うぐっ!?痛い、な、に・・・これ、身体の自由が・・・」
あの妖精さんが蔓を操り、ラブさんを捕獲したようです。更に毒のトゲがラブさんの身体の自由を奪います。これでは自力で逃げる事が出来ません。
「ラブっ!!このっ!離しなさいよ!!」
「ブッ、ブランさん!?」
「ブラン!?」
ブランさんは蔓を簡単に引きちぎりました。ブランさん・・・怪力なんですね。あ、いえ、どうやら力の支援魔法を自分にかけたようです。まさか、あの一瞬で魔法を発動させるとは驚きですよ。
「モツ!ラブを連れて逃げて!!お願い!!」
「そ、そんなブランさん!?ブランさんはどうなるですかっ!?」
ブランさんは僕に身動きの取れないラブさんを投げ渡しました。
しかし、数多の蔓が伸びて来ます。一本や二本は軽く引きちぎる事が出来ても、腕を押さえられてしまえば簡単に捕まってしまいます。既にブランさんの身体には無数の蔓が絡まってしまいました。
「私は大丈夫よ!!支援魔法で毒は打ち消せるわっ!!」
「でも、毒は打ち消せても、養分を吸い取られたらっ!!」
『モツ!ガードアイテムをブランに渡せ!!早くっ!!』
「じゃ、邪神様っ!!わ、分かりました!!受け取って下さい、ブランさん!!」
僕は邪神様の指示どおりにガード効果のついた指輪を投げ渡しました。これで、少しは安心でしょう。
「ブランさん!必ず!必ず助けに来ますから!!待っていて下さいです!!【リバース】!!」
転移によって消えゆく僕の身体。最後に見たのは気丈に耐えるブランさんの顔でした。覚えてろですよ、クソ妖精!!必ずブランさんを助けて、万倍にしてこの恨みを返してやるです!!




