決闘
ーーーーザワザワーーーー
『まるで、コロッセオだな・・・』
邪神様が感想を漏らしました。
そう、辺りを見渡せば、人、人、人です。僕は今、学園にある闘技場にいるです。観客には沢山の生徒が僕たちの闘いを見に集まったのですよ。
これから僕はブランさんの姉・・・ラブさんの従魔と闘うです。
「ほぇ〜・・・。いっぱいいるですね〜〜。そんなに、僕って人気者ですかね?」
「あなた馬鹿?もちろん、私を見に集まったに決まっているじゃないの」
「・・・へ?」
ラブさんは呆れた目を僕に向けていたです。その目はブランさんの愛(?)のある目と違い、ひたすらに見下した侮蔑の目でした。
「私は期待の【ゴールド】よ。ここに来ている人々は全て私が目当てよ。夏には学園全体での武闘大会があるし、私の実力を少しでも見ておこうと集まったのよ」
「え?闘うのは従魔・・・僕らだから、ラブさんたちは関係無いのでは?」
「・・・はぁ〜。ちょっと、ブラン。こいつにルールの説明をしてやりなさい」
僕はブランさんから【従魔決闘】のルールを聞きました。
ふむふむ、闘う従魔は試合のルールによりますが、今回は一体まで。従魔が戦闘不能になるか、ギブアップするまで闘うですか(ギブアップを宣言するのは主人)。そして、主人は従魔にサポート魔法などを使用して良いらしいですね。主人にも大きな役割があるみたいです。
「大体はこんな感じよ。でも、モツ。ごめんなさい。私はサポート魔法があまり使えないの。それに、こんな闘いに巻き込んでしまって・・・」
「何を言ってるんですか。初めて会った時に言っていたじゃないですか・・・僕が必要だって。まだ、詳しい事情はわからないですけど・・・僕は今、ブランさんの従魔ですから。少しでも、力になるですよ」
「モツ・・・ありがとう」
「良いってことですよ」
・・・と僕は闘技場の中心に進みました。そして、ラブさんに向かって声を張り上げたのです。
「ラブさん!少しいいですかっ!!」
「・・・何よ?」
「何で、そんな冷たい目で家族を・・・妹を見れるですか!?僕には分からないです!家族なんだからもっと仲良くしたらどうですかっ!!」
・・・ずっと言いたかったのです。この人はブランさんに冷たい目を向けていました。家族ならば、あんな目は向けてはいけないですよ。
「ふん。何を言うかと思えば・・・あなたみたいな魔物には分からないでしょうけど、私たちは貴族なのよ。民を守るには力が必要なのよ。弱者は必要無い・・・それがこの国の在り方であり、この国の貴族と言うものよ」
「そんなの虚しすぎます!力が全て?ならば、力が無くなれば、何も残らないって事じゃ無いですかっ!!少なくとも、僕はそんな人に従いたくは無いです!力が無くなれば、追い出される・・・とてもとても、怖い事です!僕はそんなの嫌です!それに、ブランさんには良いところが沢山、沢山あるですよ!オヤツもくれるし、たまに遊んでくれます!!その優しさには、それで救われる人もいるですよ!なぜ、それが分からないですかっ!!」
「・・・モ・・・ツ?」
気が付けば、ブランさんは泣いていました。ごめんです。でも、この胸の奥にあるイライラを解消する為にはどうしても言いたかったですよ。
「・・・御託はもういいわ。来なさい、【グリフォン】!!」
ーーーーGUEEEEEEEEEッ!!(くっ、またか!このアマっ!!)ーーーー
ラブさんの指輪が輝き、獅子の身体に鳥の羽が生えた魔物が現れたのです。どうやら、高価な指輪には従魔の召喚も出来るみたいですね。
それに、とても強そうな魔物です。おそらくは金の力で手に入れたのでしょう。ちなみに言葉が分かるのは翻訳玉の効果によるものですよ。
「僕だって、今回だけは負けないですよっ!!来るです!【バルムンク】っ!!」
「「っ!?」」
そして、アイテムボックスから【バルムンク】を取り出して乗り込みました。【バルムンク】を始めて見る人たちは騒めきを上げました。
「準備完了です!さあ、何時でもかかってくるですよっ!!」
「そんなこけ脅し・・・やっておしまい!【グリフォン】!!」
ーーーーKUEEEEEEッ!!(く、くそがっ!何で俺がっ!!)ーーーー
ううう、少し可哀相ですね。グリフォンが大地を・・・空気を蹴って、低空飛行で僕に向かって来たです。は、速いし、怖いです。でも、僕は今回だけは逃げないと決めたです。こうなったら、破れかぶれです!自重無しで思い切りいくですよ!!
「喰らうです!ミサイル発射っ!!」
ポチッとミサイル発射のスイッチを押しました。数発のミサイルがバルムンクの胴体から発射されて、グリフォンを迎撃したです。
ーーーーKUEEEEEEEッ!?(なっ、何いっ!?)ーーーー
未知なる武器に流石のグリフォンも驚いたようです。空中で緊急停止し、当たる前に闘技場の空へと上昇しました。
ーーーードカァァァァン!!ーーーー
・・・と目標を失ったミサイルが、闘技場の地面で爆発しました。その威力に地面は捲れ、観客たちは静かになりました。グリフォンも怯えたように、空の上で立ち竦んでいるようです。
「何をしているの、あいつを倒しなさい!!」
ーーーーGUEEEEEEッ!?(ぐわあぁ、い、いてぇよぉぉっ!?)ーーーー
ラブさんの指輪が輝きました。その輝きと呼応するかのように、グリフォンは苦しむような声を上げたです。
『どうやら、あの指輪で無理矢理に闘わせてるようだな』
「ひ、酷いです!まるで奴隷ですっ!!」
『従魔自体が、奴隷のようなものだろ?』
「少なくとも、ブランさんは優しくしてくれますよっ!!あんな風に使うものじゃ無いです!!」
グリフォンは自暴自棄になったのか、僕に向かって急降下をして来たです・・・あんなの、撃てるわけ無いじゃないですかっ!?
「くそっ・・・ですっ!!」
僕はコントローラーを操作して急降下を回避します。しかし、グリフォンはすぐにUターンして来ましたです。ううう・・・このままじゃ勝てないですよ。
『この場合は、あいつを倒すんじゃなく解放する事が勝機だな』
「か、解放って、一体どうすればっ!?」
『安心しろ、今すぐ送ってやる』
「おおっ!流石は邪神様ですっ!!でも、どうしたんですか、いつに無く優しいですね?」
『いつに無くは余計だ!・・・ふっ、モツよ。さっきの啖呵は決まってたぜ。俺から言うのは一つだけだ・・・やってしまえ!!」
「あ、あいあいさーー!!」
おおお・・・邪神様、いつもこうならいいんですが、それはともかく僕は回避を続けてチャンスの時を待ちました。やがて、空間が裂けて道具が降って来たです。
「来たですか!!・・・って、大きいです!?」
落ちて来たのは大きなブロック型の謎のパーツに妙なハンマーが一つでした。
『そっちのパーツは【バルムンク】に飛行能力をつけるパーツだ。『飛行合体』と言えば、おまえの【バルムンク】と合体して空を飛ぶ事が出来る。ただし、一回きりだぞ。また、解除したらまたパーツが必要だからな。そして、そのハンマーは【ブレイク・ハンマー】。持ち主の望んだ物を破壊する事が出来る。間違えるなよ?破壊するのは当然・・・』
「あのグリフォンに掛かった【従魔契約】ですねっ!!」
『その通りだ・・・行けっ!モツ!!』
「あいあいさーー!【バルムンク】、飛行合体ですぅぅぅっ!!」
僕の声に【バルムンク】とパーツは反応し、光を帯びたです。パーツは瞬時にバラけると【バルムンク】に装着されていきました。
「『バルムンク飛行形態、完成っ!!』」
ーーーードドドーーン!!ーーーー
僕と邪神様の声が重なりました。効果音は邪神様のサービスですかね?今回だけはいい仕事と、言っておきますですよ。
「【バルムンク】・・・フライトONですっ!!」
ーーーードドドドドドド・・・ーーーー
背中に装着されたバーナーから火が噴き出ます。その火力により、【バルムンク】は宙に浮いたのでした。
ーーーーKUEEEッ!?(な、何だありゃあ!?)ーーーー
まさか、空を飛ぶとは思って無かったのでしょう。グリフォン・・・いえ、この闘いを見ている全ての人たちが口を開けていました。
ロケットは生物の飛行と比べれば、小回りこそ劣りますが直線を進む速さでは負けませんです。驚きで身体が強張っている・・・今がチャンスです!!
「喰らうですぅぅぅ!『ミラクルブレイク』!!」
ーーーーKUEEEEEEEEEEEEEEEッ!?(ぐぎゃあああぁぁぁぁぁっ!?)ーーーー
僕はハンマーを握るとグリフォンの頭に振り下ろしました。その一撃は見事直撃。手ごたえ有りです。見えない何かが破壊されたような感じがしました。
グリフォンは大地へと落下して行きます。何とか、空中で姿勢を直して無事に降り立ちましたですよ。墜落死とかにならなくて良かったです。
ーーーーKUEEEE?(つつ・・・あれ?苦しみが消えた?)ーーーー
グリフォンは、自分が解放されたことに頭を傾げているようですね。
「さあ、もう自由ですよ。グリフォンさん!早く逃げるです!!」
ーーーーKUE?KUEEE?(お前が助けてくれたのか?何故だ?)ーーーー
「お礼なら邪神様に言うですよ。このハンマーをくれたのは邪神様ですから・・・それより、早く行くですよ」
ーーーーKUEEEEEEEッ!!(おう!サンキューな、坊主!!俺は故郷に帰るが、何かあったら力になるぜ!!邪神様とやらに宜しくなっ!!ーーーー
そう言ってグリフォンは羽ばたき、空の彼方へ消えて行ったです。・・・そして、そんな時でした。
「モツ!危ない!!」
「・・・え?」
僕がブランさんの声に反応して振り向くと、そこにはラブさんが魔法を放とうとしていました。
「よくも・・・私の従魔を!!死になさい!【サンダーフレア】!!」
「モ・・・モツぅぅぅぅぅぅっ!!」
ラブさんの放った魔法は僕に直撃したのです。そして、爆発する【バルムンク】。僕は、爆発の中で何処かで見た事のある気がする光の渦を見たのでした。




