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俺の上司が凄すぎて自称天才エンジニアの俺がポンコツに見える件  作者: 慧梓
第6章結城家帰省編

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第75話:縦書き葉書一枚に社会の面倒くささが詰まっていた件

楽をしようとした結果

かえって面倒な事になる

手書きは別に楽ではなくビジネスマナーの一貫ですがね。

ところではがき文化っていつなくなるんでしょうね?

 母から頼まれた。


「葉書、五通だけ書いてくれない?」


 俺は思った。


 五通か。


 五通なら、プリンターを使うより手書きの方が早い。


 弟のパソコンがどこにあるか分からない。  

 プリンターがどこにあるか分からない。

 パスワードも分からない。

 筆まめソフトなど開いた瞬間に負けが確定する。


 ならば手書きだ。


 俺は毛筆硬筆四段である。手書き文字には少し自身がある。


 俺は葉書を手に取り、丁寧に文字を書き始めた。


 そして数分後。


 俺は悟った。


「……入らん」


 葉書が狭い。


 人間の字は、印刷フォントより場所を食う。  

 しかも丁寧に書くと、なおさら食う。


 仕方ない。


 スマホでPDFを作ることにした。


 縦書き。

 葉書サイズ。

 弔事文。

 セブン印刷対応。


 この時点で俺は思った。


 なぜ俺は、スマホ一台で印刷所をやっているのか。


 しかも縦書きが面倒くさい。


 句読点が崩れる。

 改行位置が気になる。

 下の余白が悪目立ちする。

 PDFを直すか、作り直すか、コンビニ印刷の向きまで考え始める。


 俺はただ、葉書を五通作りたかっただけである。


 なのに気づけば、


「急逝」と「いたしました」は分けた方がいい。 「ありがとう」と「ございました」も切った方が自然。    

でも下の余白が気になる。いや、もうそこは手書きで句点を足せばいい。


 などと、謎の組版会議を一人で開催していた。


 ビジネスはクソである。


 五通の葉書に、  

 日本語組版と、

 弔事マナーと、

 コンビニ印刷と、

 家族からの無茶振りが全部詰まっている。


 俺はPDFをスマホに保存し、セブンへ向かう準備をした。


 まず一枚だけテスト印刷。

 向き確認。

 切れ確認。

 問題なければ残り四枚。


 完璧だ。


 完璧だが、面倒くさい。


 俺は深く息を吐いた。


 たかが葉書五通。


 されど葉書五通。


 そして俺は思った。


 今回の教訓。


 縦書き葉書は、社会の縮図である。


 あと、困った時にスマホ一台で何とかさせようとする家族は、

 だいたい俺を青猫だと思っている。


 なお、の◯太くんは複数いる。


 何だその地獄。



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