第73話:善意で殴ってくる叔母の話
どこにでもいる、胸糞善意叔母さんの話です。
葬儀って、だいたい疲れる。
精神的にもそうだし、
何よりやることが多い。
手続き、段取り、連絡。
普通に業務。
で、そんな中。
一番上の叔母が、いた。
俺はこの人をこう定義している。
「主語が“私”の善人」
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「私が挨拶して回ってあげてるから」
いや、頼んでない。
「店もやる人いないから、私が手伝ってあげてるの」
いや、それやりたいのあんただけだろ。
「大変な妹家族を、私が支えてあげてるのよ」
いや、支え方がズレてる。
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全部に共通してるのは一つ。
主語が“私”。
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その結果どうなるかというと、
他人の人生が、
その人の物語の材料になる。
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「仕事辞めてでも店やった方がいいんじゃない?」
軽い。
軽いけど、重い。
言ってる側は“善意”だから。
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裏で聞こえてきた話も、だいたい同じ。
「私がいなかったら回らないから」
「私が動いてあげてるから成り立ってるの」
うん。
じゃあやめたらいいんじゃない?
とは誰も言わない。
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で、一番ゾワっとしたのは別件。
昔の話らしい。
赤ちゃんが危ない状況で、
近くにいたのに、助けなかったらしい。
理由は単純。
自分の身内じゃなかったから。
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ああ、なるほど。
この人の世界はこうだ。
身内 → 大事
それ以外 → どうでもいい
でもその“身内”ですら、
“私の物語の中の登場人物”
なんだろうな、と思った。
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だから、
何を話してても最終的にこうなる。
「うちの子がね」
「うちの孫がね」
「私がね」
ループ。
無限ループ。
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俺は思った。
ああ、この人。
悪人じゃない。
でもたぶん、
一番関わると疲れるタイプの人間だ。
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で、どうするかって話なんだけど。
結論は簡単。
距離を取る。
これに尽きる。
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正面から殴り合うと、
向こうは“善意”だから折れない。
むしろこっちが悪者になる。
理不尽RPG。
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だから俺は、こうする。
「そうなんですねー」
これだけ言って、離れる。
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削るけど、壊さない。
これが社会人の最適解だ。
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なお、俺の嫁は
この人に対して長文を送りつけていた。
たぶん、限界だったんだと思う。
気持ちは、わかる。
めちゃくちゃ、わかる。
善意が必ずしも正しいという訳ではない。
世界はそんなに単純じゃない。
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