第69話:実家に帰省したら、お節介叔母さんにタスクを振られた件
前回:お局ジジイ
今回:お節介叔母さん
マジクソ
俺は、実家に来ていた。
理由は単純だ。
休むためである。
連休である。
実家である。
飯が出る。
布団がある。
理論上は、勝ち確定イベントのはずだった。
だが、現実はそう甘くない。
リビングに入った瞬間、俺は見た。
そこにいたのは、叔母だった。
俺の脳内で、警報が鳴った。
――エンカウントしました。
分類:親戚型お節介モンスター。
特性:善意の押し付け。
攻撃方法:家族自慢。
追加効果:罪悪感付与。
俺は、そっと目を逸らした。
しかし、もう遅かった。
「せっかく実家に来たんだから、お母さんの仕事、少しは手伝ってあげなさいよ」
出た。
開始三秒で業務命令である。
いや、俺は休みに来たんだが。
だが口には出さない。
なぜなら、こういう相手に反論すると、会話が始まるからだ。
会話が始まる。
つまり、負けである。
「まあ、必要ならやるよ」
俺は、最小限の返答をした。
しかし叔母は止まらない。
「うちの子なんてね、この前もちゃんと手伝ってくれてね」
知らん。
「やっぱり家族って助け合いだから」
知らん。
「あなたももう大人なんだから」
知らん。
俺の脳内に、社内チャットの通知音が鳴った。
皮肉屋SE:
「それ、親戚じゃなくて要件定義してこない顧客ですね」
限界ヲタクSL:
「しかもヒアリングしてないのにタスクだけ振ってくるタイプです」
クール後輩:
「善意を根拠にした依頼は、断りづらいので一番厄介です」
俺は、心の中で深く頷いた。
そう。
これは依頼ではない。
善意の顔をした、作業指示である。
しかも厄介なのは、相手に悪意がないことだ。
悪意がない。
だからタチが悪い。
悪意があれば、まだ戦える。
攻撃として処理できる。
だが善意は違う。
善意は、盾を構えて殴ってくる。
「あなたのためを思って」
「お母さんのためを思って」
「家族なんだから」
全部、盾である。
そしてその盾の裏から、タスクが飛んでくる。
俺は思った。
会社かよ。
いや、会社より悪い。
会社ならまだ、チケットが切られる。
納期もある。
担当者もいる。
最悪、エスカレーションできる。
だが親戚には、チケットがない。
あるのは空気だけだ。
空気で要求され、空気で断れず、空気で悪者にされる。
最悪の管理ツールである。
俺は、湯呑みを持ったまま、遠い目をした。
帰りたい。
実家に来て三十分。
俺は、もう帰りたくなっていた。
職場にも親戚にもいる。
「善意」や「経験」を盾にして、人の領域へ勝手に入ってくる人間。
俺くんは今日も、会話を最小化して生き延びる。
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