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俺の上司が凄すぎて自称天才エンジニアの俺がポンコツに見える件  作者: 慧梓
第5章 東都の日常③

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第61話:自宅スタジオ完備なのに最終的に車で録音することになった件

趣味とは自己犠牲を貫いてでも続けるものである。

当たりの曲を引いた。

こういう時だけは分かる。

あ、これAIに投げるより自分で歌った方が早いな、と。


別に俺は、歌えないからAIを使っているわけじゃない。

単純にコスパの問題だ。

毎回自分で歌って録って修正していたら、工数が重すぎる。

だから普段はAIで回す。

ただし、たまにある。

「これは自分でやった方が強いな」という当たり曲が。


当たり引いたんで、これ自分で歌おうかと思ってるんすよね


クール後輩

え、自分で歌えるんですか?


普通に歌えるよ

別に歌えないからAI使ってる訳じゃなくて、コスパ悪いからやってないだけ


限界ヲタクSL

かっけぇ……

じゃあ本気曲は自力ボーカル行けるんですね!


行けるよ

多少ズレてもDAWでどうとでもなるし

あの辺は昔から魔法だから


これは別に誇張ではない。

世の中には「音痴でもDAWで何とかなる」という雑な言い方を嫌う人もいるが、実際かなり何とかなる。

少なくとも、作品に寄せることはできる。

だから問題はそこじゃない。


本当の問題は、もっと現実的で、もっとしょうもない場所にある。


クール後輩

じゃあ最強じゃないですか

部屋で録ればいいだけですよね?


……理論上はな


限界ヲタクSL

あっ


クール後輩

何かあるんですか


あるよ

俺の部屋、マイクあるしポップガードあるし

Boseもあるし、設備だけ見たら割とちゃんとしてんのよ


クール後輩

じゃあ尚更いいじゃないですか


俺が歌い始めるだろ?


限界ヲタクSL

はい


家族に100%言われる

「うるさい」って


限界ヲタクSL

悲しすぎる……


クール後輩

設備関係なくて草


そう。

問題は、技術でも機材でもない。

家庭内運用である。


自室には機材がある。

ちゃんと使えば、それなりに戦える。

なのに現実には、その環境を起動する前に家庭内アラートが飛ぶ。

創作に必要なのは才能とか努力とか情熱とか、そういう綺麗な話だけではない。

単純に、家族に怒られない時間帯と場所が必要なのだ。


上司

で、どうするの?


スマホ持って車行きます


上司

思ったより哀愁が強いな


自室にちゃんとしたマイクあるのに

最終的にスマホ片手にトボトボと駐車場向かうんすよ

意味分かんないでしょ


我ながら意味は分からない。

機材はある。

環境もある。

だが俺が手にしているのはスマホ一本。

この時点で、だいぶ悲しい。


さらに悲しいのは、車内が妙に優秀なことである。


限界ヲタクSL

でも車の中って、意外と静かじゃないですか?


そこがまた最悪なんだよ

無駄に防音性能高いんだよあいつ


クール後輩

車、有能で草


草じゃねぇんだよ

移動手段のくせに簡易防音ブースみたいな顔しやがって


上司

じゃあ録音環境としては正解なんだ


そうなんすよ

ギャグみたいな見た目してるのに

やってることは割と合理的なんすよ


これが一番悲しい。

ただのネタならまだ救いがある。

しかし車録音は、見た目こそ間抜けでも、実務的にはかなり正しい。

狭い。

多少静か。

一人になれる。

エンジンを切れば余計な騒音も減る。

つまり下手な部屋より、案外録音に向いている。


だから否定しづらい。

否定しづらいから余計に悲しい。


限界ヲタクSL

悲しい合理性だ……


高性能マイク持ってる男が

最終的にエンジン切った車でスマホ録音ですよ?


クール後輩

敗因、何ですか?


技術不足じゃない

家庭内騒音制御です


たぶん創作の現場というのは、もっと華やかなものとして語られるべきなんだと思う。

愛用機材。

こだわりの録音環境。

作品に懸ける魂。

そういうキラキラした言葉で飾られるべきなんだろう。


でも現実は違う。


高性能マイクを持つ男が、

家族に怒られないためだけにスマホを握り、

エンジンのかかっていない車へトボトボ歩いていく。


敗因は技術不足ではない。

家庭内騒音制御である。


そしてその解決策として車が普通に優秀なのが、

何より悲しかった。

そんなわけあるかい!普通に悲しいわ。

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